・・・・・ふと、目が覚めた。窓から差し込む光が眩しく、私は目を細めた。


「おはよう・・・・。早いわね」

聞きなれた女性の声が耳に入ってきた。

上半身をゆっくりと起こして、モーターの動く音を確認する。


「あまり眠れなかったのかしら?」

その人は柔らかく微笑んだ。


「・・・いえ、よく眠れたと思います。博士、何か予定でもありませんでしたか?」

「あらら?何かあったかしら」


私は、脳内の情報を整理し、本日の予定内容の一部を読み上げた。



「大学第三講義室にて、午前九時三十五分より、瑠加博士の講義が行われる」


私が長谷と呼ぶ女性、瑠加は、少し間をおいてから言った。




「えぇと、あぁ、そうだった。ありがとう、美紅」



「予定を組み込んだのは博士です」


私は表情一つ変えずに続けた。


「お礼を言われる権利はありません、私は情報を抜き取っただけです」


私がそういうと、瑠加は片頬を少し膨らませた。


以前、人間は表情豊かな動物だと教わった。

おそらくこの方は、一般的な人間よりも”喜怒哀楽”というものが激しいのだろう。
私は他の人間をあまり見たことが無いが。


「事務処理的な返答をありがとう」

瑠加は皮肉めいた言い方をした。


「こういうとき、どこの表情筋を動かせば納得していただけるのか私には、わかりません。
 カメラから液体を出せる機能もつけていただいているのに。
 涙という水分が出てこないんです。」


カメラとは、人間でいう眼球のことで、液体は涙のことなのだ。


「どんなときに、どんな顔をすればいいのか、いい加減教えてください」


無表情のまま私が言うと、瑠加は悲しそうにした。

そして、私に言い聞かせるように言った。


「美紅、表情はね、人から教わるものじゃないのよ。
 自分の気持ちを、顔に素直に表すの」


「気持ち、ですか?それは、なんですか」



・・・あきらめたのか、瑠加は私から顔を背けてため息を漏らした。


「そのうちにわかるわよ、嫌でもね。あなたは、自分が作られた理由をしっているわよね?」





「えぇ。製造者の寿命が尽きるまで世話をし、死後あなたを埋葬します」




「そうよ」彼女は頷き、続けた。



「・・・・・・・でもね、それだけじゃないのよ」


思考が追いつかず、私は首をかしげた。

なれないことを考えているせいらしい。


「どういうことですか?」


ふふ、と彼女は笑った。



「教えたらあなたのためにならないわ」


瑠加は椅子から立ち上がり、上着を羽織った。



「さて!私はもうそろそろいかないと大変だから。留守はしっかりと、よろしくね」


しっかりとウインクも受け取ってしまった。


「・・・・・はい。いってらっしゃいませ」





私は三十度の角度で上半身を前に傾けた。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

科学者と機械と子猫 1

なーんか気まぐれに思いついたので書き留めておきますー^^←

続くので宜しくお願いしますねっ♪(おい

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投稿日:2011/03/02 19:12:44

文字数:1,217文字

カテゴリ:小説

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