鏡音レンは、花屋のカウンターの中でうとうとしていた。
「何やってるんです、馬鹿レン」
リングノートで頭をたたかれた。しかも、角で。
「いてっ」
はっとして振り返ると、姉が愛用のリングノートとペンケースを持って、仁王立ちになっていた。
「あなた、自分がほしい花を店の経費で買ってきて赤字にしようとする上、ちゃんと店番も出来ないんですか。じゃあ何のとりえがあるんです? あぁ、営業スマイルと花の知識ですかね」
「いいでしょう、別に。赤字にならないようにせっせと売ってるじゃないですか」
と、レンはとりあえず反論する。
「安い花をね」
「あまり高いと買ってくれませんよ」
「そこが腕の見せ所でしょう」
敬語同士の喧嘩は静かだが、妙な空気があり、無駄に笑顔な二人の間に火花が散っているように思えた。
「しかも客を選ぶって、どういうことです?」
「お客さんを選んだりはしてません」
ため息をついた。
「金髪の女の子が来る時間帯だけ一人で立派に店番しちゃって、なにいってんですか」
あきれたように言う姉――ルカは、半ばあきらめたというようにため息にため息で返すと、リングノートを開いた。店の支出がきれいに表になって書かれている。
「酔芙蓉(スイフヨウ)、カロライナジャスミン、忘れな草。よくもまあ仕入れに出るたびに売りもしない花を買ってきますね、まだまだありますけど、全部言います?」
「言わなくていいですよ、自分で分かってますから」
「あなたの趣味と知識はいいと思いますけど、花を買いたいなら自分のお金で買ってください」
「珍しい花もあるから、ああいうところじゃなきゃ買えないんです」
「ああいう場所で買ってもいいから、店のお金で落とさないでください」
「いいじゃありませんか、結局喜んでお世話してるくせに」
「あなたがしかないからです」
いい愛をしてみても、やはり歳の数と正論で、ルカのほうが少しばかり上手だったらしい。
ルカはリングノートをレンの前に差し出すと、
「弁償するか売るか、あるいは店のお金で買わないか。三択です」
「わかりました、自分で買いますよ…」
あきらめたようにレンは言った。普通はそれが当たり前なのだが。
ふと見ると、季節はずれのアジサイが一輪、カウンターに生けられていた。
花言葉 2
こんばんは、リオンです。
お気づきでしょうか、花屋の名前、「LL」。
これは「ルカ(Luka)・レン(Len)」の頭文字でLLなんですが。
昨日の投稿で分かった人がいたらびっくりだなぁと思っていたんですが。
ちなみに(何にちなんだのかは不明)、今回の話は鏡音に青春してもらいたくて、
青春してない私が書いたので、青春って何それおいしいの状態です。
「これのどこが青春だこのやろう!!」とか言われても、困りますよ(ぇ
つまりは学校に通って、恋愛してれば青春なんじゃないんですか?
…違うの?
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