暗く冷たい牢屋の中で。

あぁ、レン、レン。お前に会いたいあぁどうして信じてくれないんだ。レン、あの女は嘘を言っているというのにだってそうじゃないか私がそんなことするはずない。まぁ、ここでぼやいても無意味なんだがね。

「おい・・・、いつここから出られるんだ。」

「ははは、ここから出るとき?それはお前が死ぬ時さ!お嬢さん!」

看守がケタケタと笑い始める。なんて不快な笑い方。レンはこんな笑い方しない。あぁ、お前が恋しい。お前に会いたい私のレン、どうして信じてくれなかったの?

冷たい足音。コツ、コツ、コツ。

「は・・・?コイツと話したいやつがいるぅ!?まぁ、いいが・・・。」

あー、事情聴取はさっき飽きるほどやった。もう何も言うことはない。今度は誰?私に卵でも投げつける気なのか?

看守が連れてきたのは私の愛しい人、愛しい愛しいレン。やっぱり来てくれた愛しいレン可愛いレンあなただけは私を愛してくれたあぁ、レン。

「あぁ、レン!来てくれたんだな!!」

私は柵から手を伸ばし、レンに触れようとする。レンの美しい手が私の手に伸ばされる。
白魚の、指。白く、白く、とても美しい指。穢れを知らない手、今その手が私の穢れた手を掴んだ。

「リン、私と一緒に逃げない?」

あぁ、忌わしい。お前まで私からレンを奪うのか。愛しい人、憎い人お前なんて死ねばいいのに。かつて愛した我が師よ、愛しい魔女よ!またお前は私の邪魔をするのか?・・・なんてね。

私の手を掴む手が汚らわしいあの女のかと思うと気持ち悪くて、急いで振り払った。そして、汚れを落とすように手で触られたところを必死に擦った。

「嫌ですわ、だってあなた本当につまらないんですもの。それに、私最期は人間として死にたいのですよミク様。」

「・・・どうしてだ?」

「レンが私のことを魔女といったからです。ここで逃げ出したら私、本当に魔女になってしまいます。」

いつかあなたが私が人間として死んだことに気づくまで。

「・・・死ぬなり殺されるなり好きにしなさい。私は何もしないわ。」

「ありがとうございます。」

そういってレンは、いや正確に言うとミク様は暗く冷たい牢屋をあとにしようと私に背を向けた。その背中が子供に叱られた母親みたいで、なんだかそれがおかしくて私はミク様に気づかれない様クスリと笑った。

「ミク様、別に私はあなたに飽きただけで嫌いになった訳じゃないのですよ。」

この言葉は、あなたの背中に届いているだろうか。プライドだけは本当に高い、正真正銘の魔女。
死ぬ前に、昔の記憶に思いを馳せてみるか。あぁ、ジョンお前は天国で元気にやっているか?私は天国には行けそうにないからあの時の様にお前を驚かせることはもうできないがな。

もう、すぐ傍まで来てる。地獄からの使者がコツ、コツと不気味な足音を響かせ近づいてくる。

そして言うのだ。

「さぁ、時間だぞ。」

死刑宣告。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

私は魔女。人間ではなく魔女。 舞台袖

あと少し・・・少しだから・・・!!!!!!!!!!!!!

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投稿日:2012/04/07 13:03:46

文字数:1,227文字

カテゴリ:小説

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