「錆び付いた歯車の隙間に君と僕を
隠してしまっては、逃げられないよ」
濤の音と室外機の裏へ

廃坑の煤竹管制塔の大影脚は拉げて何処か失ったミサンガ

走配管漏電罅割れ二車線
走主無し糸巣張った停留所
走折れた煙突と製鐵所の跡

走った誰も待たない淋の駅へ

手を握ってさあ、あと数m 逃れ！
暗い濤に浮かぶ木造の舟に
飛び乗って逃げてしまおう
向こうの島へ行ったって
〝其の先でどんな事が或ったって
在は此がいいんだ〟
なんて嘘みたいに

あれから幾年と春を経ても僕らいつだってココへ来て笑った泣いた怒った

耽った

衝突の響き喧騒と中傷革油着飾り仏に合掌改心はない
燦燦と蠢き排斥される〝悲しい〟あまりにも羞明しい島の姿

嘘煙嗚咽点滅黄色灯へ
嘘ようやく辿り着いた理想島で
嘘笑って泣いて怒って耽った
君は君は

嘘高架下照らされぬフェンス越しの
嘘料金システムに積もる灰ト
嘘悲歌慷慨懐郷数錠

もう、一艘。

僕の手離して叫ぶ「もう奴らが来た」って
暗い部屋から僕を突き飛ばした君は
もういない
向こうの島へ逝ったって
君がいなきゃ何もダメだって！
叫んでも濤に呑まれるだけで
楽しいねなんて笑ってたくて
唯、浮かんだ

ひとりで

錆び付いた鉄塔を見ずに僕は潜む
割れタイルと霧の中