!!!Attention!!!
この度、ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、コラボ(二人)で書くことになりました。
自分が書く「青犬編」とつんばるさんの書く「紅猫編」に分かれております。
原作者様には全く関係なく、そして勝手な解釈もいいところで、捏造だろうと思われる部分もあると思います。
そういった解釈が苦手な方はブラウザバック推奨。
なお、カイメイ要素を含みますので、その点にもご注意ください。

大丈夫だよ!寧ろバッチ来い!の方はスクロールで本編へどうぞ。








【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#11】





 雨の音は、俺の中を掻き乱す雑音のように響く。そうでなくても俺の中はぐちゃぐちゃだと言うのに、その音のせいで更にぐちゃぐちゃになり、より暗い場所へと堕ちていった。
 嘘だと言ってほしい。誰でもいいから、嘘だと言ってくれ。
 涙が零れそうになった俺は、自分の涙を見たくなくて外へと足を踏み出した。水を吸い込んだ土は履物を汚す。雨が着物に染みを作り、濃く色をつけていった。
 上を見上げると、いくつもの半透明に見える線が降り注いでくる。俺の涙を隠すかのように。
 手紙を読んだ瞬間は、俺が今までやってきたことを全て否定された瞬間だった。俺が生きてきたことまで否定された。
 俺の中でめいこは、それほどまでに大きな存在だった。それぐらい前から気付いていたし、認めていた。彼女も俺がそう思っていると知っている・・・そう思っていたのに。
 空を見つめていた顔を俯かせる。ポタポタと落ちる雫に、低い呻きをのせた。
 体中が引き裂かれるような、内側から何かが体を突き破って出てきそうな・・・そんな痛み。
 今俺は、どんな顔をしているだろう。酷い顔をしているのか。それとも、嫉妬に狂いそうなのか。もしくは・・・あの頃の・・・幼い頃の俺のように一人にしないでと泣いているのか。
 ――俺は今、どんな顔をしている?
「・・・くそ・・・っ」
 何を口にしても今更のような気がして、文句すら出てこなくなってしまった。
 生きる意味を失ったら、一体どうやって生きていけばいいんだろうか。
 ふらふらとした足取りで道へ出る。歪んだ視界を、振り続ける雨が更に悪くしていた。前が見えない。
 大声を出して泣けたなら、どんなに楽なことか。幸いなのは、気味が悪いほど誰も歩いていないことだろうか。こんな夜も明けきらぬ時間帯に外に出ている人間なんて同じ仕事をしている人間ぐらいしかいないのだが。
 彼女に他に好きな人ができるというのは、考えていなかった。どんな壁が立ちはだかっていても、俺はめいこが待っていてくれるなら、めいこが拒絶しないなら、どんなに時間がかかっても会いに行くつもりだった。例え忘れられていても、会えば思い出してくれると思っていた。でも、めいこに拒絶されたら、もうそこまでだと諦めるしかない。
 それでめいこが本当に幸せになれるなら、俺はここで諦める方がいいんじゃないか。潔く諦めた方が、めいこは俺を気にせずに幸せになれるんじゃないか。彼女は優しいから、いつまでも俺が諦められなかったら気を遣ってしまうだろう。
『かいとくん』
 目を閉じると、幼い頃の彼女の笑顔が浮かんだ。あの頃から可愛かったから、さぞかしもっと可愛くなっていることだろう。いや、大人っぽくなって美人と呼んだ方がいい外見になっているかもしれない。
 やっぱり、まだ自由に俺が動けたあの時に、彼女を攫ってしまうべきだったんだろうか。
 ――今更何を考えたところで、意味もないのだが。
 手を痛いぐらいに握り締めて目を開くと、俯いている俺の視界の上の方にあった水溜りに何か動くものが映った。誰かわからないが、ずぶ濡れの俺が気になったのだろうか。それとも、こんな俺を笑いにきたのだろうか。
 こんな時間帯に一体誰が・・・そう思いながらゆっくり顔を上げる。
 思わず、目を見開いた。あまりにも予想外すぎた。そこにいたのは、ここにいるはずのない彼女。
「な、んで・・・?」
 それは、覚束ない足取りで俺の方へと歩いてくる子犬。雨に濡れた毛はぴたりと体に張り付き、その小さな体を更に小さく見せている。
 俺の姿を見つけて安心したようにくぅ、と一声鳴くと、彼女はその場に小さな体を横たえた。パシャンと水が跳ねる。
「しぐれ!」
 慌てて駆け寄ると、その頼りない体は泥水で汚れていて、息は絶え絶えだ。
 確か彼女はめいこのところにいたはずだ。話によれば怪我をしたとかで・・・。
 俺は考えることを切り上げ、しぐれをそっと抱えて家の中へと走った。履物を脱ぎ捨て、揃える間もなくバタバタと清潔な布でしぐれを包んでさする。俺自身もずぶ濡れで、振り返ると点々と水の足跡がついていたが、気にすることなくしぐれの体を温めるために布ごとさすった。
 そうしていると、考えすぎで沸騰しかけていた俺の頭が冷えてきたようで、しぐれの首元に本来結び付けてあるべきではない巾着を発見して首を捻る。どう考えても自分で付けられるわけがないから、おそらく誰かが付けたのだろう。
 めいこのところにいたというなら、めいこだろうか。いや、でも・・・あんな手紙を送ってから渡すものなどないはずだ。
「お前・・・この巾着どうした・・・?」
 ぐったりしているしぐれは、それでも呼吸は落ち着いたらしく、弱弱しい声でくぅん、と鳴いた。そして濡れないように首元で雨から守っていたらしいその巾着を咥え、少しだけ俺の方へ近づける。
 俺に中身を見てほしいということだろうか。
「開けていいのか?」
 俺のその声への返答はなかった。ただ、その目が開けてほしいと言っているようだったから、彼女の首から巾着を取り外して中身を検める。
「・・・手紙・・・?」
 それは、一度捨てられたのか、ぐしゃぐしゃに皺が付いているいつもの封筒。少し尖ったもので突付かれたような跡がついているのは、しぐれが咥えたからだろうか。その手紙は、今回届いたような酷く薄いものではなく、いつもぐらいの厚さがある。
 封筒には何一つ書かれていない。でも、これはめいこのものに違いないと言える自分がいた。
 これは、開けてもいいものなのだろうか。もしも捨てられたものなら、それは俺が見てはいけないものなのではないか。
 封もされていない封筒は、そんな俺の考えとは裏腹に動く指で、簡単に開かれて見覚えのある便箋を俺の目に焼き付ける。それを開こうと指をかけた時――そこでようやく、考えに反していた手の動きが止まった。
 指先が震え出す。その、何て情けないことか。
 しぐれは俺の震える指先を舐め、鼻でつついてくる。早く読んで、と言われているような気がして、俺は震える手から一度手紙を置き、手を握り締めて震えを止めてから手紙を開いた。

 ただ感情のない文字の羅列のはずなのに、この胸の痛みは何だろう。
 俺は、何て馬鹿なんだ。何て、馬鹿だったんだろう。

「――・・・っ」

 言葉にならない声が漏れて、俺はその手紙を抱きしめるように胸に押し付けた。
 俺はきっと、その手紙の内容を、一生忘れないだろう。
 涙の跡が残ったその手紙は、俺の中で鎮火しそうになっていた場所に再び熱い火をつけた。

 おそらくそれは、彼女にしか消せないだろうと思えるような・・・とても大きくて熱い、紅の火を。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#11】

しぐれ帰還しました!
そして、かいと復活のターン!
このかいとは本当に落ち込み半端じゃないけど戻ってくるのも早い・・・単純ってことか(笑
遠距離恋愛って女性はできるイメージありますが、男はできない気がします。
とか言ってこのかいとはできてるんですけども、この二人の場合はまた別かなぁと思いました。
他に入る隙間がないから(笑
やっぱりそれなりに自信がないと遠距離なんてうまくいかないだろうなと。
この二人はうまくいくといいな。

紅猫編には何気にお気に入り(笑)の例の人が出てますので是非!

+++

「紅猫編」を書いているコラボ主犯
つんばるさんのページはこちら → http://piapro.jp/thmbal

閲覧数:291

投稿日:2009/09/18 20:56:34

文字数:3,053文字

カテゴリ:小説

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