「ほんとにこんな山奥にいるのか? キド」
『そんなめんどくさいことでいちいち通信するな。“ヤツラ”にバレてしまうだろう』
「そんなこと言っても、バレないさ。きっと、ところで本当にこんな山奥に家なんてあるんだろうな?」
『なかったときは私が責任をとろう』
「……体で?」
『〇すぞてめえ』
「すいません許してくださいリーダー」
『最初からそう言ってればよかったんだ。んで、家は見つかったか?』
「……ああ、あれか」
少年は立ち止まった。
そして、そこにあったのは――
マリーの住む家だった。
「ここか……」
少年の呟きを聞き取ったマリーは、
「!!」
驚いて飲みかけのハーブティーを机中に撒き散らした。もし、鳥がいたら驚いて逃げてマリーがここにいるのがわかってしまったのかもしれない。だが、疑問点が浮かぶ。なぜ少年(マリーにはどんな存在かはわかっていない)がここに来ているのか、マリーには不思議でならなかった。
「どうしよう……」
とりあえずマリーは下に降りて、ドアの向こう――きっと、その声の元がいる――を見つめた。対策なんて、考える暇すらない。
「目を合わせると、石になってしまう」
ふと、マリーは母親から聞いたことを思い出す。
「私たちの目は成長すると赤くなる。
その赤は見るものを凍りつかせて、石にさせてしまうの」
マリーの目もそうなっているらしく、時折鏡を見つめていると、写っているのは、赤い目。普通の人間とは違う、真紅の目。
だから物語の中じゃマリーのような存在は、怖がられる役ばかり、「仲良くしてくれるなんてないんだ」ってことはマリー自身理解していて、それで怖がっていたのかもしれない。
トントン、とノックがドアのむこうから響いた。そんなのは初めてで、緊張なんてもんじゃ足りないくらいだった。なんだろう、マリーの目には『恐怖』すら浮かんでいたのかもしれない。
想像していた突飛な世界はマリーが思ったよりも、実に、実に簡単にドアを開けてしまうものだった。
*
人間が嫌いだった。
母親が、死んだ訳を私は目の前で見たから。
私が数年前、人間に虐げられた。恐らく……珍しい存在と思われたから。
そしてそれに気づいた母親が私を守ろうと“力”を使って――死んでしまった。
だから、私はずっと一人。ずっと、ひとり。
*
扉は唐突に開かれて、誰かが入ってきた。マリーはただ、目を塞ぎ蹲っていた。
その人は驚いていた。だから、マリーは言った。
「目を見ると、石になってしまうんだ」って。
その人が、微笑んだのを、覚えている。
「僕だってさ、石になってしまう、と怯えて暮らしてたんだ。
だけどさ、世界は案外怯えなくていいんだよ?」
その人はそう言ってマリーに服を着せた。なんだろう、この服は? とマリーがつぶやこうとして。
「これはパーカーっていうんだ。
君も、メカクシするんだろう?
これはそういう人にいい服だよ」
「……ありがとう」
「うん。お礼はいらないよ。
そうだ。君って世界がわからないんでしょう?
教えてあげるよ。うーんと、ちょっと待ってね」
そう言ってその人は薄い栞に近い何かを取り出した。
「これは、iPodだね。
いろんなことがわかるんだ……。
ほら、これを耳に当てて……」
その人は、紐みたいなものをマリーに差し出す。彼女は言われるがままにつける。
そして。耳に音が響いた。
世界は、やっぱり想像よりも素晴らしかった。
心の奥に溢れていた想像は、世界に少し鳴り出していた。
突飛な未来を教えてくれたあなたが、もしまた迷ったときは、私がここで待っているからね?
彼女はそんなことを思うのだった。
*
外を出て、少年。
「ああ。キド。確かにメデューサはいたな」
『だろう? 私の調査通りってわけだ』
「キド。それじゃこれでいよいよ……」
『ああ』
キドと言われた少女はうっすらと笑みを浮かべて。
『――救いに行くぞ。“彼”をな』
カゲロウプロジェクト 04話【自己解釈】
「目を合わせる話」後編。次は「目を隠す話」のところに入ると思います。おそらく。
―この小説について―
この小説は以下の曲を原作としています。
カゲロウプロジェクト……http://www.nicovideo.jp/mylist/30497131
原作:じん(自然の敵P)様
『人造エネミー』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm13628080
『メカクシコード』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm14595248
『カゲロウデイズ』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm15751190
『ヘッドフォンアクター』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16429826
『想像フォレスト』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16846374
『コノハの世界事情』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17397763
『エネの電脳紀行』
『透明アンサー』
ほか
――
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