お店もハケて(終わって)、従業員がイスをかたづけ始めていた。
店のステージの片すみで、リンちゃんは機材を片づけている。

うしろで「リンちゃん」と声がした。
振り向くと、そこにいたのは神戸ミキ(こうど・みき)さんだった。
「あ、ミキさん!」

お客が、軽い食事をとりながら、ライブを見られる店「ボイス・カフェ part2」。
きょうは、リンちゃんのバンド“シグナル”と、
ミキさんのバンド“Vocca”が、順番に出演した。


●こないだ、レンから聞いたよ!

リンちゃんの“シグナル”は、ガールズ・ロック。ミキさんの“Vocca”は、男女2人組のボーカル・ユニット。
音楽性は少し違うけれど、こんな風に一緒の店で順番に出る...「対バン」をすることが、多い。

顔を合わせることが多いので、2人は仲が良かった。

「きょうは、お疲れさま」
リンちゃんは、笑って挨拶する。

「お疲れさま!ところで、リンちゃん、“イースト・トーキョー”って知ってる?」
彼女は聞かれて、目を丸くした。
「うん!ミキさんも知ってるの?こないだ、レンから聞いたよ」

「そうなの。近々、このあたりでやるイベントよね」
「うん。私、それに出ないかって、言われてるの」
「あれ!リンちゃんも!」
ミキさんも、目を丸くした。
「ワタシも、誘われてるの。主催の人から」


●コワイんだよ...

「それでどうするの?ミキさんは」
聞かれて、彼女は小首をかしげた。
「...なんかさ、よくわかんないんだ。そのイベント」

ミキさんは続けた。
「そこに出るバンドで、“カンテイダン”っていうのがあるんだ」
「鑑定団?」
「うん、カタカナでね。それがさ、ちょっと“変な”音楽なのよ」
「へー」
リンちゃんは興味深そうに聞いた。
「どんなふうに?」

「なんか、ヨーロッパの“魔術”っぽいイメージで。ボーカルのサルタコヨミっていう男の子が、個性があるんだけど...」
ミキさんは、眉をひそめて言った。
「何となくコワいのよ」


●そのイベントに出てみてよ

「ね!リンちゃん!そのイベント、面白そうよ」

急に横から、大きい声がしたので、リンちゃんは飛び上がった。
ちょうど、さっきのライブ・ステージのアクションのようだ。

横を見ると、ミクさんが立っていた。
彼女は、お客さんとして、さっきのステージを観てくれていたのだ。

「あ~、ミクさん、びっくりしたー」
リンちゃんはホッとして、言った。

ミクさんは、隣りのミキさんに会釈をして、言った。
「リンちゃん。いま話してた“カンテイダン”っていうグループだけど。歌の歌詞で、“ミク・ドール”のこと、茶化してるらしいの」

「ミク・ドール?ああ、テトさんたちが作ってるやつ?」
「うん、そうよ。なんか、気になったんで、バンドのライブを観てみたいの。リンちゃんも出るなら、よけい面白そうだし」

ミクさんは、アゴに手を当てて続けた。
「何かさ、コワイのよね!そのグループや、そのイベント」

はたで聞いていたミキさんは思った。
「ふぅん、チェック、厳しい...。このお姉さんも、なにげにコワイなぁ」( ̄ω ̄;)

(次回に続く)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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玩具屋カイくんの販売日誌 (122) ゆくりさんの、音楽アート・フェス (Part2)

なんだか、ミクさんが小姑みたいになってますが、商品を愛するゆえのチェックの厳しさです(笑)。

閲覧数:86

投稿日:2011/10/01 16:17:49

文字数:1,324文字

カテゴリ:小説

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