「一人だけ」


「………」


「たった一人だけが望んでくれるなら、それが生きる理由になるよ」


「…小さい願望ですね」


「ちっぽけな人間には、相応な願いだよ」


「望んでくれるのは、誰でもいいんですか?」


「性別・年齢・国籍、人間であれば、誰でもいいよ。病気や事故で次の日に死ぬ人でも、一日を生きる理由になる」


「…私では、ダメですか?」


「…?」


「…私が望んでも、理由になりますか?」


「………」


「私が望み続ければ、マスターの生きる理由になりますか?」


「それは…ズルいよ、テトさん」


「どうしてですか?」


「だってそれじゃあ、死ぬなって言うようなもんだよ」


「私は、そう言ってるんです」


「………」


「私はマスターと出会った時に、言いましたよね?『アナタが望むなら、私はずっと側にいる』と」


「うん。それで『望むよ』って、答えたっけ」


「でも私だって、マスターの側に居たいんです。居させて欲しいんです」


「…そんな価値ないよ、こんな人間に」


「それはアナタの価値観です。私の価値観を、勝手に決めつけないでください」


「でも………」


「私は他の誰でもなく、マスターと一緒に生きていたい。この朽ちない身体でいつか孤独になるのが分かっていても、マスターと同じ時間を過ごしたいんです」


「テトさん…」


「頑張れなんて言いません、自信を持てなんて言いません。その言葉がどれだけの重荷になるか、私は知ってますから…」


「………」


「だから…お願いですからせめて、もっと自分を、大切にしてください」


「ごめん…」










(紅く染まった手首に、私は泣きながら手を添える)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

たった一つだけ ~one only~

テトさんとマスターで、久々に台詞縛り(?)で書いてみました。

ホントは、デレたテトさんを書くつもりが…どうしてこうなった(゜×゜;)

まあ、たまにはこんな暗いのも良しということで←

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投稿日:2010/08/10 19:25:36

文字数:742文字

カテゴリ:小説

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