ある日の昼下がり。
いつものメンバーは、いつもにように集まっていた。・・・待ち合わせなど全くせずに。
「今日は・・・眠いですねぇ」
そう言って、ふわぁと欠伸をするフワを、グルトは見つめる。そんなグルトに、
「何見てるにゃん」
と飛び蹴りを食らわすミン。
「いっ、いてぇよっ、なにすんだミンっ!」
「知らないにゃん。だーれかさんが、じーっと見つめてたから、つい身体がやってしまったのにゃん」
痛がるグルトを見もせず、ミンは呟く。
「だめですよ、ミンさん。暴力は反対です」
モコは少し怒ったように言った。
「なんか、平和ですね」
そのやり取りを見守っていたジミはしみじみと呟いた言葉に、
「そうだな、平和ってのはまさにこういうことだよなぁ」
「私はアカイトがいれば平和だ」
と、同じく場を静観していたアカイトとバンが返事する。
今日も、のんびりと時間が過ぎるのかと思った時・・・。


キィと、入り口のドアを開ける小さな音がした。


あれだけ騒いでいたのに、その場にいた全員が入り口を注目する。
ドアから顔を出したのは、
「こんにちはだお♪」
「・・・・・」
ピンクのツインテールが可愛い女の子と、無言で上目遣いでこっちを見つめる赤いフードをかぶった男の子だった。
「あああああっ!!お、お前・・・・・」
盛大に反応したのはアカイト。新参者の2人を見て、口をパクパクさせる。
「あっ!なんか聞き覚えがあると思ったら・・・アカイトだおねー、うわー」
感動の再会・・・という訳でも無さそうで、げんなりする女の子。
一方の男の子は無言でアカイトと女の子を交互に見つめるだけで、やはり何も言わなかった。
「・・・知ってるのか、アカイト」
「そりゃもちろん!こいつに、何度ドッキリ大成功だおと言われたか・・・・・・」
「だって、アカイトは引っかかりやすいんだお。まさに、絶好のたーげっとだお!・・・ね?レトくん」
「・・・」
話が分からないようにも見えたが、こくんと頷くレトという男の子。
「・・・それで、この女の子は誰だ?」
「あれ、お前知らないっけ?あ、そういえば、あの時はテトいなかったからな・・・知らなくて当然か」
グルトの言葉にアカイトはぶつぶつと呟いてから、
「テトと、えっと・・・レト?くん?・・・2人とも、そこにいつまでもいないで、こっちに来たらどうだ?な?みんな」
と、2人を手招きする。
「・・・おじゃましますだお」
「・・・おじゃま」
テトという女の子が言ったように、レトという男の子もそれに習うが、言葉が中途半端に切れてしまった。そんな様子に、
「可愛いですね」
「そうですね」
「そうですねぇ」
呟いたモコの言葉に、フワとジミが頷いたのだった。




「まずは、やっぱり自己紹介だな。では、どうぞ」
そう言ってバンは新しく来た2人に話を振った。
「私は重音テト。重音は、かさねと読むんだお。基本的に名前はどう呼んでもいいお。・・・それで、実は誕生日が、今日なんだお」
「えっ、えいぷりるふーるですよね?」
モコの質問に、テトは頷いた。
「そうなんだお。2年前の今日に生まれたのが私・・・重音テトなんだお」
「へぇ・・・ということはあの伝説はテトさんだったんですねぇ」
フワが意味深な言葉を口にする。
「あの伝説?」
グルトが首をひねる。
「4月の1日は嘘の日。なぜなら、この日だけは嘘をついても許されるんですよ。それで、嘘と偶然から生まれた女の子がどこかにいる・・・っていう伝説めいた噂を聞いて、ぜひ会いたいなと思いまして・・・」
そこで一旦言葉を切り、
「それが貴女・・・テトさんなんですね!会えて嬉しいですよおっ!」
そう言ってテトに抱きつくフワ。
「そうだお、嘘と偶然から生まれたんだお。・・・っていうかよくそんな伝説知ってたんだお?普通はすぐに忘れちゃうんだけど」
「それは、私は天使の一部だからです、テトさん」
「・・・!」
フワの言葉に、テトは少し驚くも、
「そうだおねー。どうりで、なんか頭に天使のわっかがある訳だお」
と、納得したかのように呟いた。
「そうなんですよ。・・・それで、そちらの男の子はどなたですかぁ?」
フワは嬉しそうにのほほんと頷いた後、先程、レトと呼ばれた男の子の方に話を振る。
「この子は、レトくんだお。・・・レトくん、皆に挨拶するんだお」
「・・・・・ぼくは、朱音レト。朱音は、あけねって読みます。・・・よろしく」
必要最低限のことしか言わないあたり、どうやら相当の無口のようだ。レトはそれだけ言うと、頭をぺこんと下げた。
「そうなんですか。よろしくお願いしますね、レトくん」
そう言ったフワの言葉に、
「・・・」
少しはにかむように笑ったレト。
「「「「か~わ~いいーーっ!!」」」」
そんなレトに、モコ、フワ、ジミはもちろん、なぜかミンまで萌えるのだった。
「・・・なんでお前まで萌えるんだよ、ミン」
アカイトはそう言うも、ミンには全く聞こえていないようだった。
「・・・」
なんだか悔しそうなグルトに、
「心配すんなって。ああ見えて、本命はグルトだから・・・・な?だから、大丈夫だって」
「そうだぞ。ほんとに愛してる人は、どんなことがあっても相手のことを本気で愛しているものだ」
と、アカイトとバンが慰める。
「・・・それで、今日はえいぷりるふーるですね。なんか嘘をつきたいのですが、思いつかなくて・・・」
ジミの言葉に、頷く女子組。
「そうだおねー、なんか嘘のネタがないだおかー」
「んーっ?あ、そうだ!これはどうですか、みなさん」
モコが提案する。
「今から、嫌いな人を言い合うってのはどうですか?」
「ほぅ、モコにゃんにしてはなかなか冴えてるんじゃにゃい?」
「そうですね、さっそくそれで・・・」
そうして、『嫌いな人を言い合う会』が始まったのだった。



「まずは、言いだしっぺのモコさんから、どうぞ」
フワが優しく進行役をする。
「・・・そうですねぇ・・・」
モコはぐるりとみんなの顔を見回した後、
「・・・・・アカイト、さんでしょうか」
「な、なんだよ、俺のこと嫌いなのか???」
困惑するアカイト。
「はい」
即答のモコに、
「にゃはは。フラれたにゃおん?いい気味だにゃははははっはははっにゃはははは」
落ち込むアカイトを見て、笑い転げるミン。
「・・・あ、でも」
ジミが何か気づいたのか、口を開く。
「今日って、えいぷりるふーるだから、なんていうか、嫌いの反対ですから・・・その」
「あーっ、そっか!嫌いの反対は好きだお?つまり、モコちゃんの嫌いな人は、好きな人ってことになるんだおねーー・・・・・・・・あれ?」
言いにくそうなジミの代わりに、何も知らないテトが言って、そこで、空気を察したようだ。
「・・・・ん?ということは、つまり・・・?」
グルトは、アカイトを見る。
「ん?・・・・え、まさか」
アカイトはモコを見る。
「・・・・モコちゃん、もしかして・・・・?」
「あ、あうっ!そ、それ以上は、言わないで下さいっ!!」
顔を真っ赤にして叫ぶモコ。
「・・・意外な展開だにゃん」
ミンは面白くもなさそうに言う。
「・・・モコにゃん、こいつは大したやつではないにゃん。こんなやつよりも、いい人はたーくさん「馬鹿にしないで下さいっ!」
ミンの言葉を遮るモコ。ミンは驚いて、口をつぐんだ。
「・・・すいません、なんていうか、・・・今のは聞かなかったことにしといて下さいお願いします」
そう静かに呟いて、モコは研究所をあとにした。

・・・ぱたん・・・

閉められたドアの音は、哀愁漂う雰囲気を作ったのだった・・・。

それからは、みんな気まずいのか、グルトとミンとジミは帰ってしまった。
「・・・ごめんな、テト。それに、みんな。・・・正直、どうしたらいいのか分からないんだ」
申し訳なさそうに呟くアカイトに、
「別に、いいんだお。こっちこそ申し訳ないお」
「・・・そんなことないよ」
テトの言葉を否定するレト。
「・・・・んー、バンさんはどうですか?」
フワはバンを見る。
「・・・・・・アカイト」
バンはフワを見た後、アカイトを見つめた。
「アカイト、自分で決めてほしい。私を選ぶか、・・・モコを選ぶか」
「・・・バン」
アカイトはバンを見る。
「・・・俺は、ただ、・・・みんなと一緒に楽しく過ごせればいいんだ」
「・・・そうか。なら、アカイトは私を選ぶということだな分かった」
バンは座っていた椅子から立ち上がった。
「・・・今、それを言おうじゃないか。そうすれば、今度会っても気まずくはないだろう?」
「・・・バン、ありがとうな」
アカイトは少し顔を赤くさせて返事したのだった。



「・・・はぁ」
モコは川の土手沿いに座っていた。その背中は夕日の淡いオレンジ色の光と相まって、見ているだけで切なくなってしまうようだ。
俺は、わざと明るい風を装い、モコに声をかける。
「おい、どうしたんだ?モコ」
「・・・アカイトさん」
モコは驚いたように目を見張る。
「そんなに身構えるなよ、モコ。・・・隣、いいか?」
そう言って、返事がないのも気にせずにモコを隣に座る。
「・・・モコ」
大事な話をする時は、少し間をあけるといいと誰かが言っていた。だから、俺もそれに習う。
「何ですか、アカイトさん」
俺を見ずに先を促すモコ。
「・・・俺のこと、好きなのか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
相当長い間黙りこくって、やっと頷くモコ。
「・・・・そうか」
俺はモコを見つめるのをやめて、夕日を見つめることにした。
「・・・なんで、夕日って綺麗なんだろうな」
「・・・・・・え?」
「なーんてな」
そう言うと、モコは少し笑みをこぼした。
こういう緊張した時は何でもいいから冗談を言って、相手を笑わせること。それも誰かが言っていたので、俺もそれに習う。
「・・・やっぱり、アカイトさんには叶いませんね」
そうすると、相手の本音が聞くことができる。俺の狙った通りだ。・・・あ、これって、計算したっていうことなのか???
「何でだ?・・・」
すぐに聞いちゃいけないことは分かっていたが、やはり口がでしゃばってしまった。
「・・・・・最初」
「うん」
「最初は、なんか自分でも分からなかったんです。アカイトさんを見ていると負けていられなくって」
「うん」
「それで、段々とそういう気持ちが強まっていって・・・気が付いたら、ずっとアカイトさんのことばかり考えていました」
「うん」
「・・・それで、現在に至るということです」
ふと横にいるモコを見ると、顔が赤くなっていることに気づく。
「・・・そっか」
俺は、なんとなくそれしか言えなくなった。
「それで、アカイトさんは・・・私とは無理ですよね・・・・」
淡い期待と絶望が漂う表情で呟くように言う。
俺は少し考えてから、
「・・・・・・そうだな、モコがあと8、9年ぐらい早かったら、付き合ってたかもな」
と、冗談めくように笑って言った。
「・・・そうですね、アカイトさんは今はやりのロリコンなんかじゃないですよね、なんか・・・安心しました」
俺の言葉につられて、モコも笑うようになったようだ。
「だから、そんなに落ち込むなって。俺なんかより、かっこいいやつは腐る程いるからさ」
「そうですね。それじゃ、私・・・一生独身で生きていきます!」
声高らかにモコが宣言した言葉に、俺は一瞬首をひねってしまった。
「・・・いっしょう・・・どくしん・・・?」
「はいっ!とはいっても、未来のことまでは、私には分からないので、とりあえずは今この瞬間の宣言なんですけど・・・」
照れたように表情を笑みに崩すモコ。
「そうか、未来か・・・」
ここで、少しだけ過去の感傷に浸りそうになったが、すぐにやめておいた。
「それでは、アカイトさん。これからも、ただの登場人物として、よろしくお願いします」
「ただの登場人物のところはスルーしておくとして、こっちこそよろしくな」
それでは、とモコはとてとてと帰り道を歩いていった。・・・正直、女の子を独りにさせるのは反対だったが、モコがどうしても一人でいいですと断られたのでそっとしておくことにした。
モコの姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた俺は、くるりとモコが歩いていった道とは反対方向に俺も、帰ることにした。
夕日の光が淡く光っている。夜が来るまで、そう遠くないような気がした。
・・・・ちなみに、帰るといってもバンの研究所なんだけど。






「あれ?バン一人?」
俺はドアを開けてまず呟いた。
バンが頷く。
「そうか」
「それで、何があったんだ?無事に、終わったのか」
俺は、待ってくれていたバンに何があったのか、さっきのやり取りを話す事にした。


「強いんだな、モコは」
話を聞き終わって、バンは言った。
「普通は、そういう状況に人は陥りやすい程に弱いものだが」
「そうなのか?」
俺は少し心当たりがあったが言わない事にした。
あの時は、グルトも絡んでいたからな。
「そうだ。・・・これで、全て終わったな。今度会う時は、若干ぎくしゃくするものだが、気にすることはない。じきに、慣れるだろう」
少し照れくさいのか、妙に早口になるバン。
「・・・ありがとな、正直そこまでバンが心配してくれるとは思わなかったよ」
「だって、アカイトは私の婚約者だからな!」
「おま・・・なんか口癖変わってんぞ」
「アカイトがいれば、いいというものだ」
「・・・そうか」
「だが、最近はちがうな」
バンは少し考えて、
「・・・みんなが楽しそうだったら、それでいいと思うようになった」
と、自分でも分からないとでもいう風に呟かれたその言葉に、俺は嬉しくなったのだった。



                一応、続く!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【コラボ】えいぷりるふーるとテトとレトとレギュラーめんばーと淡い恋愛模様の暴走と【亜種】

こんにちは、ほんとは昨日投稿するつもりだったんですが時間がなくて色々書いてたら時間切れで、やっと今日完成したことにほっとするもごもご犬ですこんばんは!
さて、なんだか前回よりも長くなっちゃいました・・・。
ほんとにどうにかしなきゃとか思うんですが、なかなかどうにもならなくて。その点は、あったかい目で辛抱強く読んでくれると嬉しいです。

今回、モコちゃんが暴走してしまいました←
正直そのシーンはカットしてなかったことにしようと思いましたが、あえて、あえて入れることにしました。次回は誰が暴走するのか楽しみでs(黙

今回も、色んなマスターに協力してもらいました!
ありがとうございます!

それでは、また次回会えるように頑張ります!

閲覧数:145

投稿日:2010/04/02 15:11:31

文字数:5,701文字

カテゴリ:小説

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  • 壱枝ころ

    壱枝ころ

    ご意見・ご感想

    こんにちは!またまた読ませていただきました~

    うちの子がかわい・・・
    いえっなんかもう本当ありがとうございます!
    こんなにいっぱい登場人物がいるのに、それぞれ個性が出せていてすごいですね!
    勝手ながらまた楽しみにさせていただきます★

    2010/04/02 22:34:42

    • もごもご犬

      もごもご犬

      >壱枝ころさん

      こんにちは!

      フワちゃんがいると場の空気が安らぐんで、なんというかありがたい存在ですww
      こちらこそ、いつもありがとうございます!
      ぶっちゃけまだ登場人物は増え続けていくと思います(笑)
      そのうち、タグに全員の名前が入りきれなくなったりして・・・。
      そうなったらどうしようとか思いますが、それでも登場人物は増える予定です←
      こんな小説ですが楽しみにして下さると、嬉しいです♪

      2010/04/03 10:18:30

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