「リン! リン!」

リンをたたき起こす僕
大変なことになってしまった


「……んー?」

ゴロゴロとベッドの上を転がるリン
何で,そんなに暢気なんだ!!














それは,浅い意識の中
遠い意識の中で,ジリリリリとうるさい音がしていたのは知っていた
でも,何か気分がのらなかった
その音に反応したくなかった
だから……


そのときから事件は始まっていたとも知らず




僕がその事件に気づいたのは今から10分程前
体をガバッと起き上げて時計を見る


?

時計の角度は90°


あれー
おかしいなー

目をこする

時計の角度は270°


はは
僕ったら,目がまだ寝てるみたい……




ヤバい!!!!!


現在の時刻は9:00
学校の登校時間は当に過ぎている


寝坊だ




普段,こんなこはないのに……


きっと昨日,ゲームしすぎたせいだ
それで睡眠時間が……

って,今はそんなことどうでもいいんだ




階段を飛ばし飛ばしに,駆け下りる
まずは,朝食!
どんなことがあってもこれは抜けない

パンを温めている間に,顔を洗い,服を着替える



そんなことをしている間にパンが焼けた
ミルクで口に流し込む

……火傷した…………






と,このとき思い浮かんだのは姉の顔

さぁ,リンをどうしようか




選択肢1
 これから10分間かけてリンを起こし,
 朝の準備をし,ただでさえかなりの遅刻なのに,更に時間をロスして学校へ向かう


選択肢2
 リンは無視
 一人で少しでも急いで学校へ向かう



さぁ
どっちにしようかな……















「リン! 早く起きてって!!」

「んー? ……何でぇ?」

「9時だよ,9時!!
 大幅遅刻だよ!!!」

「うー
 ……今日は,土曜日だけど?」

「何,言ってるのさ!」

「……テレビ,見てみたら分かると思うけどぉ?」



リンの部屋のテレビをつける


『おはようございます
 本日・土曜日は洗濯日和となりまして……』


ピッ

『俺の,この魂の叫びが聞こえないのかぁぁぁぁあ!!
 くらえっ! 必殺! サイクロンファイヤーキーックゥゥゥゥ!!!!』


ピッ

『みーんなぁ
 きょうは,おにいさん・おねえさんといっしょに,このダンスをおどろぉう!』

ピッ




何故だ!?
この番組たちは,本来土曜日に放送するはずのものなのに……
おかしい!
今日は金曜日のはずで……


「何で,金曜日だと思うわけ?」

「昨日やった日付イベントがあるゲームで,木曜日だったから……」

「時間設定変えたんじゃないの?」

「…………」

「残念だねー」




やってしまったぁぁ

そうだ
一昨日,起動できなかったから設定を変更してたんだったぁぁ



「まぁ,早起きは三文の得っていうし良いんじゃないの?」


確かに,そういうけど……
……精神的に疲れた











ドタバタがあってから,しばらくしてポストを見に行くと手紙を発見した
計2通

内容は,依頼について



『私には,とてもしっかりした素晴らしい姉がいます
 姉は,同性である私から見ても可愛らしく,ついイタズラをしたくなってしまします

 そこで,お願いです
 やんちゃな探偵さんだと聞いておりますので,一緒にイタズラを手伝っては頂けませんか?』




『私には,とてもしっかりした素晴らしい妹がいます
 妹は,同性である私から見ても可愛らしく,ついイタズラをしたくなってしまします

 そこで,お願いです
 やんちゃな探偵さんだと聞いておりますので,一緒にイタズラを手伝っては頂けませんか?』





あれ?
内容,一緒?

リンは「行くー! 行くー!! 行くー!!!」
と超乗り気だが,何かおかしくないか?


住所を確認
ふむ……
一緒だ

姉妹が,イタズラをし合うってことなのか?




また,ややこしそうな依頼だ……







「リン」

「なーにー?」

「妹か姉か,どっちに行きたい?」

「うーん……妹の方!」

「分かった,じゃあ僕は姉のほうにいくね」


分担は完了




さぁ
姉妹に会いに行こう














連絡を取って,僕と依頼人(姉)の待ち合わせは1時になった
広場の噴水前ベンチで待ち合わせ

ちょっと早く来すぎたかな?
依頼人はまだ,来てないみたいだった




あれ?
日付は確か今日だったはずだけど……

30分たっても依頼人はまだ,来ない


うーん
待ち合わせ場所はココだったはずだけど……

1時間たっても依頼人はまだ,来ない



ふー
今日はゲームの発売日だったなぁ……

2時間たっても依頼人はまだ,来ない



よーし
帰ったら,思い切ってあのゲームをやってみよう!!


3時間ほどたった頃,ゼーゼー言ってる,女の人が僕の前に現れた




「す,すいません!!!」


豪快に頭を下げる女の人
そのまま,前に倒れて一回転


「だ,大丈夫ですか!?」

「は,はい!
 大丈夫です!!」


アワアワしてる女の人は,何だか落ち着きがない
本当にこの人,大丈夫なのか?


「わ,私,依頼主です!」

「あぁ,あの妹さんにイタズラするっていう……」

「は,はい!」

「あの……」

「は,はい!」

「何で,こんなに遅れたんですか?」


一番の質問だ
僕のゲームプレイ時間を割いたんだ
そう,簡単な理由では許されないぞ……


「み,道に迷ってしまいまして……」

「この広場に来るのに?」

「え,えぇ」

「こんなに広いのに?」

「え,えぇ
 私,どうにも方向音痴なものでして……
 あと,この広場に入ってから,ここに来るまでにも時間がかかりまして」

「この噴水,この公園のシンボルなんだけど?」

「私が歩いた道で見たものは,えーと……
 野ネズミと,ピエロさんと,パチンコ屋さんと……」

「どこに行ってたの!?」



まぁ,いい
分かった分かった


今回の依頼,相当大変そうだ……










「イタズラって,具体的に何をしようと思ってるんですか?」


アイスを食べながら,とりあえずそこら辺を歩く


「……」

「どうしたんですか?」

「……これって,周りから見たら,どういう風に見えるんでしょうか?」

「……」

「デートに見えませんか?」

「見えないと思うけど?」

「?」


「まず,周りから見たら,僕とあなたの年齢差が多分,実際より大きく見えてると思う」

「は,はい」

「それに……
 この,体勢はどう考えてもおかしいでしょ!!」


今,僕は依頼者の小脇に抱えられている
こうすると,落ち着くんだとか……

僕は全く落ち着かないんだけど!?


「え,えぇ!?
 妹は,これが良いって言ってますけど……」

「妹さん大丈夫なんですか!?」

「迷子になる心配が無いと……」

「あなたが,操縦者だったら絶対迷子になると思いますけど!?」

「ふふ,面白い人ですね」


話が噛み合わない……


「まぁ,いいです
 あなたら,それで落ち着くのなら……

 で,どうなんです?
 具体例はあるんですか?」

「え,えーとですねぇ……」


ふむふむ?


「パイとか……」


あぁ,あれか
顔にぐちゃって押し付けるやつ……


「いいんじゃないですか?」

「や,やったぁ」

「じゃあ,早速作りましょうか!」

「は,はい!」


僕と依頼者は二人で,僕の家に向かった
きっと,リンはいないだろうから,僕の家のキッチンを使えば良いだろう……



っていうか,今思い出したんだけど,リンが担当した妹さんの手紙に書いてあった『素晴らしい姉』
あれは,どういう意味なんだろう?
僕が見ている限りでは,そんな風には見えないんだけど……?















「よーし!」

「な,何とか完成ですね!」



彼女の言う通り,【何とか】完成


道のりは険しかった

小麦粉を出せばキッチンを粉まみれにしるし,卵なんて,何個無駄になったことか……

それと,『どうしてもりんごパイにしたい』というので,林檎も提供したんだけど……
可哀想な林檎たち
皮を剥くときに,中の果実もかなり削ぎとられ……
本来なら,りんごパイ一つに必要な林檎は3つほど
なのに,このりんごパイの為に処刑された林檎は軽く10を超えた
あぁ,貴重な食料が…………



でも,完成だ
普段料理をしない人が料理をすると,こんなことになるのかな?
リンには,キッチン立ち入り禁止令を出さなくては……




「じゃあ,妹さんのところに行こう!」

「は,はい!」

「どこにいるか分かるよね?」

「は,はい
 家にいるはずです!!」


彼女は優しい笑みを浮かべ,首を少し傾げた
あ,気付いてなかったけど,結構な美人さんだ……

って,こんなこと考えてたら後でリンに殺される!


「それじゃあ,行きましょうか」

「は,はい!」












彼女の家につくと(移動は小脇に抱えられたまま……),僕は仰天してしまった

家は確かに大きかったけど,そんなに驚くほどの大きさでもない
驚いたのは,その家が建っている場所


広場のすぐ目の前




何で,迷うんだ!!
迷う方が大変だと思うけど!?







「ただいまー」

「お邪魔しまーす」


小声で,挨拶
あんまり,大きな声を出して妹さんに気付かれてしまっては失敗だ


「妹の部屋は二階にあるから,階段を上るわよ!」



……階段


僕の今までの経験から推理すると,この人は階段ですっ転ぶ
で,僕の上に降ってくる
で,大きな音をたててしまい,妹に見つかる
ついでにいうと,手に持ってるりんごパイは僕の顔に……

とか


ありそうだ
てか,きっとそうなる


「ぼ,僕が,前に行っていい?」

「構いませんが……?」


心底不思議そうな顔をする依頼者

僕は,階段で怪我をしたくないんです!










僕の推理はなぜかはずれ,無事に妹さんの部屋の前にたどり着く


「よーく,狙ってくださいね」

「分かってますよ」


ドアを勢いよく開け放ち,片手にはりんごパイを持って, 依頼者は妹さんの部屋に突入

しかし,すっ転んだ!
豪快に
でも,何とかりんごパイは死守
そして,もう一度立ち上がり目の前にいる人の顔にぐしゃ,っと押し付けた……



「…………お姉ちゃん?」

「あ,あら?」


依頼者がりんごパイをぶつけたのは,妹さん……

ではなく,僕の姉
リンだった





「…………」

「…………」


「…………」

「…………」



一同沈黙



「あ,間違えちゃったわ
 それっ!」


間違いに気付き,りんごパイの手を,妹にぶつける依頼者
しかし,その手に残っているのは皿のみ


「リ,リン……?」

「……」

「こ,これは,僕が悪いんじゃないんだよ!?」

「……」

「これは,僕の依頼者が……」



「…………これ,美味いわね……」

「ほ,本当ですかぁ!?」


依頼者感激
僕呆然


「うん
 優しい味がする……」

「へ,へへ……」

「お姉ちゃん……?」

「今日はあなたの誕生日でしょ?」

「お姉ちゃん!」

「ふふ
 お姉ちゃん,頑張ったのよ?」




「お姉ちゃん!
 誕生日は来月だよ!」




「…………あっちゃー」


「誕生日でもないのにプレゼントをくれた優しいお姉ちゃん
 そんな,お姉ちゃんに私からもプレゼント!」


それっ
と言って,豪快に振りかぶる妹さん

そっちもパイなんですか!?


ぐしゃっ

そのパイはお姉さんの顔面に……
入ることはなかった




あれぇ?
目の前が真っ暗だぁ
でも,甘いからいっか!



























帰り道,パイをくらった双子は……
まぁ何というか,複雑な心境で歩いていた


「美味かったのは美味かったよ」

「うん
 それは,僕も同感」

「でもさ,普通に食べたかったなぁ」

「はい,超同感です!!」




確かに【素晴らしい姉】という考え方は間違ってはいなかったのかもしれない
妹思いのとっても優しいお姉さんみたいだし

でも,でも……


「もうちょっと,失敗の数を減らしてもらわないとねぇ……」

「レンも,曜日間違えちゃダメだよ?」

「はい……」







今日は,パイを丸々一つ食べたからお腹いっぱいだ
しかも,りんごパイを作ってるときにも結構味見したからなぁ……

よし!
今日は晩ご飯抜きで,ゲームをやりまくるぞ!!











「レーンー!
 台所がすんごいことになってるんだけどー!?」




……ここの片付けが終わったら

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

こちら鏡音探偵所×とある姉妹

こんなところまで,読んでいただきありがとうごさいます!


どうも
一応オリジナル,代2弾です


今回は,【一応】のつくオリジナルです……
というのも,出てくる依頼人さんは『トモエ』という歌に出てくる子がモデルなもので……
あの,ルカのアンメルツPの歌です



色々と死にましたが,笑っていただけたら光栄です

感想・罵倒お待ちしております
よろしくお願い致します

閲覧数:1,208

投稿日:2011/03/26 14:18:29

文字数:5,366文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

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