「あら、おやつの時間だわ」


昔昔、悪逆非道の王国の頂点に君臨していた十四歳の王女、リリアンヌがいた。後に『悪の娘』と語り継がれたその美しく可憐な王女には、支えとなった少年がいた。その少年の名はアレン。リリアンヌの召使いであり、双子の兄弟でもあった。王女は彼をそれはとてもとても信頼し、信頼したからこそ、身勝手な命令まで下した。だが、彼の方もどんな命令でも従い、リリアンヌを愛し、信頼した。甘くて美味しいおやつを作ったりすれば、血だらけになって人を殺したりもする。さらにひどい時なんて、涙を流しながら従った。彼女がそれに気がついていたかは今となっては分からない。ただ、一つだけ分かる事があるとするならば、二人は強い絆で結ばれていたのだ。その絆がどんな色だろうとも、リリアンヌにとって、アレンがつくってくれたそんな時間こそが幸せそのものなのだ。だから、リリアンヌはそんな時間がずっと続けばいいとさえ思ったかもしれない。そう、彼らの幸せな時間はずっと続いた。
なんてことはない。
だってこれは、ただの昔話なのだから。

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悪ノ娘

悪ノ娘のショートストーリーとして応募させていただきます。

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投稿日:2018/08/19 20:50:14

文字数:457文字

カテゴリ:小説

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