太陽が一番元気な時間。
マスターが帰ってくるまで、まだまだ余裕がある。
洗濯物はちゃんと干してあるし、さっき掃除機もかけた。
ベッドメイキングもした。
マスターの部屋の窓はもう少し開けておくとして…後は……えーと………。
……無い?終わった?
あ……いやでも買い物はマスターに頼まれてないし。
…やっぱり終わり、だよね?

「…終わったー……」

思わず口に出す。
毎日毎日、終わると絶対声出ちゃうんだよな。
ちゃんと終わってないとマスター怒るから気をつけないと。
でも仕事が終わった後のアイスって格別だから我慢っと。
今日は何を食べようか。
冷凍庫の扉の前で悩む。
本当は実物見ながら決めたいけど、冷凍庫開けっ放しにしてるとマスターに怒られるんだよね…。
……よし、今日はソーダのやつにしよ。
冷凍庫から取り出して袋を開ける。
バー系のアイスって袋開ける瞬間が楽しみ。
袋の中から、爽やかな色をしたソーダバーが姿を表す。
まさにソーダアイスの色。
見ただけで涼しくなれるようなこの青は夏にピッタリだね!
……今春だけど。
とりあえず、いただきまー…。

「だからソーダバーはアイスじゃないっつの」

突然背後からの声。
驚いて振り向くと制服姿のマスターが呆れたように立っていた。
ま、マスター!?なんでここに!?

「午前授業って言ったじゃん」

そ…そうでしたっけ?
朝の記憶を探る。確かにそんな気もしなくもない。
マスターは俺の手からソーダバーを引ったくってかじった。
ちょ、俺のアイス!

「ソーダバーは氷菓。ミルク成分全然ないでしょーが」

お、美味しいからいいんです。それよりも返して下さいよっ。
取り返そうと腕を伸ばすと、パシンと叩かれた。
マスターはもう一口かじったソーダバーを俺の口に突っ込む。

「朔、もう少ししたら買い物行くからね」

口の中はソーダバーでいっぱいなので、俺は頷く。
てことは早くこれ食べ切らなきゃいけないわけで。
…仕事後の楽しみが……。
人の悲しみも知らず、マスターはすたすたと自分の部屋に行ってしまった。

クロ、ゴマ。
マスターは普段俺をそう呼ぶ。
でも本当はもう一つ呼び名があって、それが「朔」。
周りに人がいるときには絶対呼ばれない名前。
マスターのお父さんやお母さんでさえ知らない。
何故かはわからない。マスターは教えてくれない。
教えてくれたのは、この名前の意味だけ。
黒ゴマアイスから生まれた俺。黒ゴマを漢字で書いた時の黒と、胡麻の胡に入ってる月で黒い月。黒い月は新月の事で、新月は朔と言う。
……だった気がする。
後、俺が生まれたのが一日で、朔はこの字でついたちという意味もあるらしい。
……確か。
一回しか聞いた事がないから曖昧だけど、それ以上にマスターはいっつも冗談めかしく言うからどこまで信じていいかわかったもんじゃないんだよな。

久しぶりに朔と呼ばれて、ぼーっとしながらソーダバーを食べる。
最後に呼ばれたのいつだっけ?
四日ぐらい前?
あんまり久しぶりじゃないかも。
マスター気まぐれだからわかんないなー。
…って、あ!
ソーダバーが……。
他の事を考えながら食べていたせいでいつの間にか食べ終わってしまっていた。
…マスターのバカ!

「殴るよ?」

だってマスターがいきなり帰ってくるか…………今の聞いてたんですか?
振り返るとやっぱりマスターがいた。
いつの間に後ろにきてたんだ?
正直マスターは気配を消す事が出来るんだと思う。
マスターは半分に割ったチューペットを食べている。残りの半分は手の中。
色的にオレンジだな。

「さっきからいたじゃん。どんだけぼーっとしてんのよあんた」

一声かけてくれればよかったのに…。
唸る俺にマスターは食べていないもう半分のチューペットを差し出してきた。
意味がわからなくて受け取らずにいるとまた口に突っ込まれた。

「半分でいいからあげる」

だったらそう言って下さい。
なんていったら没収されかねないので言わない。
全く短気なんだから。
予想通りのオレンジの味が口に広がる。
チューペットはこのシャリシャリ感がいいよな。
なんて味わう俺にマスターが告げる。
後三分で出るから。
ちょ、なんという無茶な事を。
いくら半分だからってチューペットを三分とか。無理です。
でも文句を言う暇があったら食べなきゃいけないから言えない。
って……あ、頭にきた…!
ま…マスター……三分、無理です………。
頭を抑えながら言う。
するとマスターは一瞬真面目な顔した後、吹き出した。

「あははっ、無理に決まってんじゃん!」

え、は…はい?

「それ三分とか…っ無理っしょ……っ!!」

え……えぇ!?冗談だったんですか!?
爆笑しながら、マスターは当たり前じゃんと答えた。
信じられない。
唖然とする俺。マスターはまだ笑っている。

「大体さ、ウチまだ食べてんじゃん。気づこうよ」

確かにマスターの手にはまだチューペットが残っている。
…気づかなかった。
でもそんなに笑わなくったっていいのに…。
ホントマスター意地悪だな。
絶対いつか勝ってやる。
心に決めた時、一通り笑ったマスターは気が済んだのか、俺の頭を撫でた。
でた子供扱い。マスターの虐め方の一つ。
でも。

「いつまで膨れてんの。食べ終わったら行くからね、朔」

いつもの人を馬鹿にするような表情じゃなかった。
その顔は信じていいんですか?
聞けないけど。
でも、とりあえずは信じるしかないか。
僅かに俺を見上げるマスターに頷く。
わかりました、マスター。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

KAITOの種 番外編2(亜種注意)

予定から脱線して、書こうと思ってたシーン全く入ってないけど満足。
ゴマイトとゴマイトマスターです。
二人の関係とかね……突っ込んだら負けですよ!←
名前は…かなり無理がありますねwwwなぜつけたしwwww
いや、一応理由とかあるんですけどねww
黒い月が新月の事ってのはあまり正しいとは言えない気がするので、鵜呑みにしないよーにww
調べきれなかったんです…orz



本家様宅のモモイト君とゴマイトは仲良くなれる気がします(何となく)
http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=on

閲覧数:762

投稿日:2009/04/25 06:21:22

文字数:2,311文字

カテゴリ:小説

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  • 霜降り五葉

    霜降り五葉

    ご意見・ご感想

    エメル様
    なんという戒めww自分絶対無理ですwww
    ソーダバーやチューペットは美味しければ別にいい、だがアイスと名乗るのは許せん。というのが美鈴論ですww
    区別をつけたいらしいですね。
    思い入れ…どうでしょう?
    かなり無茶な連想してるあたり、何か考えてるかも知れませんけどね。
    ゴマイトの誕生日は一日みたいですが何月かわかりませんwいつなんでしょうww
    裏というかなんというか、とりあえずまだ何かありそうですね。
    文章になる日はくるんでしょうか…(ぇ

    閲覧&コメントありがとうございました!

    2009/04/30 22:51:05

  • エメル

    エメル

    ご意見・ご感想

    こんばんわ~

    や~っと見れましたw自分の種KAITO小説が書き終わるまで見ないと決めてたもんでwww
    はう、今回はゴマイトくんと美鈴さんですか。おおお~
    「ソーダバーはアイスじゃない」ときましたか。気が合いそうですね。
    アイスクリームは認めるが氷菓系やチューペットは認めないというのが私の考えです。
    ゴマイトくんって朔という名前があるんですね。
    美鈴さんにはその名前に思い入れがあるのかな?ないのかな?わかんない(おい
    ゴマイトくんの誕生日は一日ですか。うちのショコの誕生日は3月2日です(関係ないw
    この2人にはまだまだ何かありそうですね~
    続き、楽しみにしてます

    2009/04/30 02:25:31

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