「・・・・・・美紅、変わったね」
瑠加は湯気の立つコーヒーを掻き混ぜながら、そう唐突に口にした。
「そうですか?あぁ、そういえばですね。最近子猫を見つけたんですよ。
ここの家の畑に遊びに来てるみたいです」
なるほど、と瑠加が呟いた。
「で、その子猫が野菜を取らないように私は追い出そうとしましたが、何故か今は鬼ごっこのような形に なってきているのです。
それはそれで、追い出せればいいので構わないのですが」
「ふうん。・・・・・・意外ねえ」
意外?何故だ。
「意外って、何がです?」
コーヒーを啜りながら熱そうに顔を歪ませていた。
「そりゃあ・・・・・・・もう、この間まで、君は事務処理的な事しか話せなかったし、役割以外のものに興味 を持つなんて事も無かっただろ。
私以外の物、生物に興味を示すっていうことは、本当に、驚くべき変化なのさ」
「そういうものなんですかね」
そういうのは、自分では感じなかったのだが、傍から見たらそう取れるのだろうか。
「んー、うん。まあね。コーヒーは淹れたてがやはり一番のようだ」
「・・・・・・・話聞いていたのですか」
途中まで、しっかり聞いていると思ったのだが。
この人は何処かずれている箇所があるようだ。
呆れる私に、瑠加は笑って見せた。
「あはっ、ははは。ごめん、途中からどうでも良くなってきてた」
私は小さくため息を漏らしてから立ち上がった。
「では、朝食の用意に取り掛かります」
そう言ってその場を立ち退いた。
昼食も済ませた私は、子猫といつも追いかけっこをしている畑に足を運んだ。
子猫がいた。
今日も、野菜の手入れの前に、鬼ごっこが始まりそうだ。
今考えると、何故私は子猫と追いかけっこをしているのだろうか。
何故私は子猫に興味を持ったのだろうか。
何時の間にか、子猫に対する私の何かが変わっていったようだ。
「こういうとき、どうやって言えばいいの?」
そう呟いているとき、ちょっとしたことに気付いた。
「ん?」
子猫が忙しそうに自分の体をかきまくっているのだ。
いつもならそんなことはなく、飄々と私の先を駆けて行っていたのだが。
私は子猫を抱え上げた。
子猫はまだ痒そうに体を掻きまくっている。
「博士に聞いて見れば分かるかな・・・・・・・・」
子猫は小さく鳴き、私を見上げた。
「只今戻りました」
瑠加は私に気がつくと、座っている回転椅子に加速をかけて私に向けた。
「おぃーす、おかえり。ん?・・・・・・その子猫、は例のかい?」
私は首を縦に動かした。
「博士、先ほどからこの子猫、ずっと自分の体を掻いているのです。
原因を教えてください」
そういうと、瑠加はきょとんとしてしまった。
「こりゃ・・・・・・・・普通に体を洗えば治ると思うけど」
「じゃ。博士、子猫を洗ってください」
私は抱いていた子猫を瑠加の目の前に差し出したが、逆に突き返された。
「え、ちょ、なっ・・・・・・」
「拾ってきた人が洗うもんでしょ」
子猫は、自分の足で自分の耳を掻いている。
「・・・・・・ちっ」
聞こえないであろう程度に、舌打ちをした。
「わかりました、洗ってきます」
「今の舌打ちの原因を教えてくれるかしら?」
瑠加はどうやら地獄耳だったようだ。
しっかり聞き取られてしまったらしい。
「い、言ってませんよ。あ、ほら、じゃあ行こうか。おいで」
瑠加の逆鱗に触れる前に移動しないと、面倒なことになる。
そう思い、私は、子猫と一緒にそそくさと風呂場に向かった。
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