【小説】未知との冷遇

投稿日:2016/04/17 13:34:25 | 文字数:4,122文字 | 閲覧数:79 | カテゴリ:小説

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お題企画「未知との遭遇」パロディ参加で書きました。
タイトルが日本語になってないのは某掲示板でこれに指定されたからです。。。

幼女ものです。
長くてすみません。これでも原稿用紙10枚(4,000字)に収めてます。
けっこう気に入っている作品。

2011年1月作成。

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 一

 日光浴をしに縁側に出たら庭に未確認飛行生物が来ていた。上空三メートルに立ったまま浮いているそいつは幼女に猫耳が生えて猫シッポが生えたような格好でしかも巫女服を着ていた。人外である。アンアイデンティファイド・フライング・ジンガイ。UFJだ。
 俺は枕用に持ってきた座布団を二つ折りで縁側に設置するとそれに頭を乗せる格好で横になりUFJをガン見した。パンツが見えそうで見えない。俺は舌打ちした。仕方がないので庭に出てUFJの真下近くに行く。そして「やあ」と声をかけるふりをしながら全力で袴の中を覗き込んだ。逆光で見えない。

 二

「ここの人?」とUFJが訊く。
 俺は無視して家に入ったが懐中電灯を持って戻ってくるとUFJは既に着陸していた。竹ボウキを胸に抱える姿が愛らしい。
「さっき飛んでたよね?」と俺は諦めきれずに言った。「ここの人?」かつてUFJだった猫耳巫女幼女が再度訊く。「それよりさっき飛んでたよね?」俺は食い下がった。
 幼女はにっこりと微笑んで小首を傾げた。しかしそれだけだった。どうやら黙殺されたらしい。俺は仕方なく「ここに住んでるよ」と言った。「ところでもう一回飛んでくれないかな?」
 幼女は再び破壊的な微笑を浮かべた。そして「お願いがあるんだけど」と切り出した。俺の質問はまた無視されたかもしれない。

 三

 幼女のお願いはこの家の敷地に直径十五メートルの大穴を掘らせてほしいということだった。なかなか強烈だ。地面に直径十五メートルの穴を掘られてしまったらこの家はこれから宙に浮いていなければならない。現場のこたつで現地住民と向かい合って話すにはいささかヘヴィな内容だった。
「いちおう理由を聞いていいかな」と俺は言った。
「地下に鉱山労働者が閉じ込められてるの」と幼女は言った。嘘八百もここまで来るとすごい。
「世田谷に鉱山があるなんて初めて知ったよ」と俺は控えめに言ってみた。幼女は殺人的に微笑む。もちろん返答はない。俺は麦茶をすすった。そして人権について考えた。

 四

「正月明けに麦茶を出す家って少ないんじゃないかしら」と幼女は言った。そして麦茶の氷をからんと鳴らした。
 思考を中断された俺はしばらく幼女が何を言ったのか分からなかった。基本的人権が憲法によって保障されるところまで俺の検討は進んでいたが、この幼女に日本国憲法が適用されるかどうかにはまだ議論の余地があった。
「……そう?」
 たっぷり十秒が経過して俺はようやくそれだけ言った。頭の中で麦茶の問題が大きくなっていく。俺は必死に人権についての議論を消すまいとした。なにしろ俺の人権はもう少しで救済されそうなところにあるのだ。このまま麦茶の問題で俺の人権をないがしろにするわけにはいかない。俺にだって正当に生きる権利があるのだ。でもそんな俺の努力を幼女が「麦茶って好きじゃないの」と言い出して台無しにする。

 五

「そういうことを言うもんじゃない」と俺はやさしく諭した。「君は麦茶の気持ちになって考えたことがあるか?」
「ないわ」と幼女は言った。
「でも、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの」
「いいさ。誰にでも間違いはある」
 幼女は例の破滅的微笑を浮かべた。なぜここでそうなる。俺は少し混乱した。それは俺の質問を都合よく無視するための微笑じゃないのか? それとも今ので麦茶の件を終わりにしたつもりなのか? そうはいかない。麦茶をバカにされた恨みを俺は一生忘れない。
 俺は自分の麦茶を飲んだ。そして正面から幼女を見つめて言った。
「もういちど考えてくれ。麦茶が君に何をした?」
 幼女は当然のようにその質問を流して言った。
「あなたはなぜ平日に家にいるのかしら」

 六

 俺がなぜ平日昼間に家にいるかなんて考えるまでもない。そういう職業だからに決まっている。つまり自宅警備のお仕事だ。履歴書にだってそう書ける。もっとも履歴書を出したことはない。
 俺がそう言うと、幼女は「なるほど」と言って小さなあごに手をかけた。猫耳の巫女がこたつで探偵ごっこをしている。「だから麦茶なのね」
「だからっていうと?」
「ほら、だって暖房のある部屋に引きこもっていたら暑いじゃない」
「そうかもしれない」と俺は認めた。巫女姿の幼女に引きこもりって言われた。そう思うとなぜか心がゾクゾクした。それで俺はパンツの件を思い出した。
「ねえ、ちょっとパンツ見せてもらってもいいかな」
「じゃあここはあなたの家じゃないのね?」と幼女は俺の要求を頭から無視して言った。

 七

「俺の家だよ」と俺は言った。「ただ親の持ち物だから所有権はない。借りているわけでもない。つまり――」
「居候」
「そう。そんなところだ」
「それじゃあ、あなたとは何を話しても無駄ね」と幼女は冷たく言った。確かにそうかもしれない。でもそんな言い方はないだろう。俺はいきり立った。そして席を立つ幼女にこう言った。
「親の居場所は俺しか知らない」
 幼女は怪訝な顔をした。「でも夜になれば帰ってくるでしょう?」。何も言い返せない。「それだけ?」
「お、俺と協力すれば半日も時間を節約できる」俺は必死になって言った。本気を出すならここしかない。
「……何が望みなの?」
「パンツが見たいんだ」と俺は言った。
 幼女は小さくため息をついた。そして袴の帯に手をかけた。

 八

 緋袴のパサッと落ちる音が卑猥すぎる件。あれはなぜだろうか。
「これでいいの?」
 小袖と緋袴を脱ぎ捨てた幼女は少し赤くなって言った。
 裸足の足下でしっぽがもじもじ動いている。
「全然よくない」と俺は言った。
 全然よくなかった。
 なぜ幼女が巫女服の下にそんなものを着ていたのかは分からない。だが、幼女が身に着けていたのはパンツではなくスク水だった。紺色のぴちぴちが白い肌といいコントラストをなしている。体のラインも完璧なほどにつるぺったんだ。でも俺が求めていたのはこれじゃない。俺は白とグレーの縞々とかそういうのを期待していたのだ。スク水はスク水で結構だが、今の気分はそれじゃない。
「全然よくない」と俺はもう一度言った。「それはスク水であってパンツではない」
「これがパンツじゃないの?」と幼女は驚いたように言った。「おかしいわね……」そして探偵業再開。スク水幼女探偵だ。でもおかしいというなら探偵自身のことを俺は訊きたい。パンツを知らない巫女がどこにいる?
 いや巫女かどうかは別にいいのだ。とにかくパンツを知らないなんて常識がないにもほどがある。巫女が職業的にパンツをはかないとかそういうことじゃない。
「君はどこから来たんだ?」と俺は訊く。
「火星」と幼女がすました顔で答える。でも俺は頷かない。冗談につきあう気分じゃないしそういう状況でもない。「火星」と俺は言う。
「どこでもいいわ。この星の外ってことは確かだけど」
「冗談はもういいよ」
「地球人は空を飛べるのかしら」と幼女はこたつに入りながら言う。俺は答えに詰まる。現在のところ地球人は空を飛べない。

 九

 俺がある冬の日の縁側で出会った空飛ぶ猫耳巫女幼女は本当は単なるUFJじゃなくスク水をパンツと間違えた地球外幼女で俺んちに穴を掘りに来たのだ、なんてここまでの展開を大雑把にハイライトしながら俺は考える。地球外幼女? 冗談にしては先ほどの三メートルが説明つかない。それにしっぽ。
「穴はなんのために掘るんだろう?」と俺は訊いてみる。
「侵略のため」と簡潔な回答。やっぱりか、と俺は思った。宇宙人が地球に来る用件なんて他にない。
「でも、あなたは気にしなくていいわ」と幼女は言う。「私たちが住むのは地下だし、侵略はずっと先のことだから」
「ずっとってどれくらい?」
「たぶん、一万年くらい先。今回の穴はただの地質調査ね。特に迷惑はかけないと思うけど」
 幼女はもじもじしている。しっぽの先が机のみかんと遊んでいる。俺は少し困った。
「さっきも言ったけど、家は俺の持ち物じゃないんだよ。家がなくなると困る」
「浮かせればいいじゃない」と幼女はこともなげに言う。「簡単だわ。試してみる?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」と俺は慌てて言った。この流れだと本当に浮かせかねないし、下手に落とされたら地震どころの被害じゃすまない。
「浮くのは分かった。でも、世田谷には再来年から地下鉄網ができる計画があるんだ。地下はまずい」
 もちろん嘘だ。
「地下鉄……?」
 幼女は怪訝そうに言った。こんな住宅地になんで地下鉄なんか作るの、みたいな顔だ。まったく同意できるから性質が悪い。
「そうなんだ。この家の地下にもトンネルが掘られるかもしれない」
「……ちょっと、上に確認するわ」
 そして幼女はスク水を脱いだ。

 十

 つるぺただった。
 じゃなくて、
「なんで脱ぐんだよ!」俺は慌てて後ろを向いて言った。
「だって通信するんだから仕方ないじゃない」と背後で多分すっ裸の幼女が言う。
 そりゃ仕方ないよね。通信だもんね。俺は部屋の中に鏡がなかったことに感謝した。パンツ以上はまだ早い。
「……ダメね。今は無理だって」
「そうか。残念だったね」
 俺は心からほっとして言った。なんにせよ、これで家も浮かなくてすむし地球も侵略されずにすむ。「ところで、もう前を向いていいかな」
「ええ、どうぞ」と幼女が言うので振り向くと幼女は巫女服に戻っていた。脱ぎたてのスク水があられもない裏地を晒している。そして幼女はこう言った。「これ、洗濯してもいいかしら」
「……なんだって?」
「洗濯よ。地下鉄の路線が決まるまでここに住ませてもらうわ。普段は猫の姿だけど」
 幼女はこともなげに言う。
「ねえ、勝手に決められても困るんだけど」と俺は抗議した。幼女は銀河的に微笑む。あ、これダメなパターンだ。
「今後の打ち合わせをしないと。通信を――」
「わ、わー!」
 俺は慌てて後ろを向き、そこで俺の人権に関する問題を思い出した。









 

したびーと読みます
小説・作詞制作してました(過去形)
不採用タグ付いてる詞は、他曲で使ってくださると救われます

現在UTAUカバーを勉強中
twitter → https://twitter.com/shita_b

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