「パワハラ、セクハラはしちゃダメですよ……。うん…私たちのメンバーなら、心配なさそうね♪」

 仲間たちに読み聞かせが終わったミクは[騎士が秩序を護るのは寮生活から Ver 2.0]を閉じた。話の内容を簡単に説明すると、騎士が集団生活において“酒”が絡むトラブルを書いたマニュアルである。

 今のパーティーメンバーだと、そこまで神経質になるような話ではないとミクは思う。しかし、リーダー以外の3人は……。

『Mさん(仮名)、おっかねえーーッ‼』と声を揃えて言っていた。

「えっ? でも、悪いのは王さまだよ。王さまが触っちゃったから、Mさん(仮名)にストII ケンさんの負け顔にされたって書いてあるわ」

「ヤングレディ…そのMさん(仮名)が、ジークレフの持ち主なんだ……」

「そうなんですか?」

 本を読み聞かせた側は、Mさん(仮名)なる人物が誰なのか理解していないようである。

「思いっきりメイさん……って書いてあったよ、ミクちゃん!。僕たちのパーティーにそのヒトが加わったら、【ばくれつけん】で【みなごろし】にされちゃうかも‼」

「そうよ! なんか酒ぐせも、ちょー悪そうだし、呪いの装備なんかつける前に全滅させられちゃうわよ!」

 リンとレンの姉弟からも、Mさん(仮名)なる人物の危険性をリーダーに力強く訴えかけていた。本に記載されている通りなら、Mさん(仮名)が“酒乱”であり、アルコールを摂取するとフィールドを修羅の国へと変えてしまう畏れがあるとだ。

「うん…でも、私はメイさんの目を見たけど暖かさを感じたよ……。なんて言うか、自分は強いけど弱いヒトを護ってくれる、そんな強さかな」

「…………」

 ミクが語るのは、ランマルコ広場で見たメイが持つ“赤銅”の色をした瞳孔のこと。あのとき、転んだ自分に差し伸べてくれた手も穏和で優しく、かつ力強さを感じていた。

「まっ、こんな話をしても…かんじんの本人がどこへやらだから、ムダよね……」

 リンのほうも、まだ仲間になっていないヒトを裏でどうこう言っても無意味であると皆に説いた。繋がりが見えてきたとはいえ現在は、ボードゲームで例えるならば【ふりだし】に戻ったようなモノである。

 メンバー4人がベッドの上で腰を掛けたまま、例えきれない虚無感に浸っていると……。

『寮内の騎士ならびに近衛兵の者たちよ! プランゾの時間だ!。 一同、食堂へ集結せよ』と部屋の外から男性の勇ましい声が木霊していた。

※Pranzo=イタリア語で昼食※

『待ってましたーーーッ♪』

 彼女たちは金欠により、朝から何も食べていなかったので昼食の言葉を聞いて歓喜していた。
 さっきまでの会話は何だったんだろう……と腹が減ってはクエストなんかできないっ!。

 そう思いながら回廊へと出ていく。

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次話
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†幻想セカイのことわざシリーズ†

腹が減ってはクエストなんかできぬ

ビッグブリッヂ叩いて渡る

モルボル現れて プレイヤー沈む

いのちたいせつに物種

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投稿日:2020/01/26 22:55:38

文字数:1,178文字

カテゴリ:小説

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