!!!Attention!!!
この度、ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、コラボ(二人)で書くことになりました。
自分が書く「青犬編」とつんばるさんの書く「紅猫編」に分かれております。
原作者様には全く関係なく、そして勝手な解釈もいいところで、捏造だろうと思われる部分もあると思います。
そういった解釈が苦手な方はブラウザバック推奨。
なお、カイメイ要素を含みますので、その点にもご注意ください。

大丈夫だよ!寧ろバッチ来い!の方はスクロールで本編へどうぞ。








【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#23】





「私・・・」
 先を言いよどむようにめいこの口がまた同じ言葉を口にする。その視線は男に向けられたままで、俺とめいこを見ているその男の表情だけが、俺の不安を煽っていた。温和な表情は何も変わらない。それでもそこに滲み出ているのは絶対的な自信・・・余裕。俺の中にある不安だけを助長するその表情。端正な顔がそう見せるのか、それとも年齢がそう見せるのか、そこまではわからないが。
 静まった辺りに、めいこの息を吸い込む音が・・・小さいはずのその音が、俺の鼓膜を確かに揺らす。
 出てくる言葉は予測できた。だが、だからこそそうであってほしくないと祈るように目を閉じる。
 心音がうるさくて喧騒は聞こえないというのに、何故かめいこの口から漏れる音ははっきりと聞こえていた。このまま狂ってしまいそうな気さえする。もしも、俺とめいこが望んでいない嘘の答えを彼女の口が吐き出すのなら、いっそこのまま狂ってしまえたらいいと・・・そこまで考えた時――

「お嬢様! 私どものことなど、心配する必要はありません!」

 めいこの声よりも先に響いた声に、俺ばかりでなくめいこも男も、その声がした方向へと視線を向けた。そこには、少し苦しそうに息を乱している女中さんと・・・その後ろからゆったりと歩いてくる女性・・・るかさんの姿。
 直接その視線を向けられているわけでもないというのに、はじめて見る射抜くようなるかさんの視線に、俺は思わず身震いする。ふと射抜くような視線が和らぎ、俺とめいこに視線が合わされた。それは、俺のよく知る優しいるかさんの笑顔。俺に今まで向けられてきたものと相違ない。さっきまでの射抜くような視線が幻だったようにすら思えてきた。
「さあ、ここは任せて行ってくださいな。もうあまり時間がありませんわ」
 俺はその声に、反射的にめいこの手を取る。だが、いくらその手を引いてみても、足が前へ出なかった。めいこがその場を動こうとしなかったからだ。
 どうやら、現れた二人に視線を向けたまま、状況の把握ができずに戸惑っているらしい。そんな風に事態を冷静に受け止めようとしている俺でさえ、この事態は予測していなかったのだから仕方がない。最悪の事態は予測していたが、それは自分たちで乗り越えなければならないことだと思っていた。だからこそ、まさかこの状況で助けが入るなんてことは予測の範疇ではなく、こうして考えるほどには理解しているはずの頭も、上手く身体に命令を発信できず、思うように動いてはくれない。めいこも俺と同じような感覚なのだろうか。
 じゃり、と状況を完璧には把握できていない俺たちに構わず、るかさんが歩くたびに踏みしめられた地面が音を立てる。
 ふと足を進めていたるかさんは、俺たちと男の間に入り、男の一歩手前で立ち止まった。ちょうど俺たちに背を向けた格好で、その表情をうかがい知ることはできない。
「――久しぶりですわね、神威の方?」
 るかさんの、いつもと変わらぬ穏やかな声。だが、今まで余裕に満ちていた男の表情が、ここにきて初めて苦虫を噛み潰してしまったかのように歪んだ。
「お前・・・巡音の・・・!」
 言葉を詰まらせた男の顔には、明らかに切羽詰ったような何かが感じられる。雰囲気が、異常だった。あくまでるかさんの声は穏やかだったが、二人の間に何かただならぬ空気が漂っている。俺はそんな険悪な雰囲気を感じ取り、思わず生唾を飲んだ。
 どういった理由にしろ、俺と同じように動けないままのめいこに、女中さんが駆け寄ってくる。いや、俺たちにと言うべきか。
 るかさんと打ち合わせでもしていたのか、彼女だけはこの空気を物ともしていないらしい。
「今のうちに行ってください、お嬢様。本当に私どもは大丈夫ですから」
「そ、そんなこと、できるわけっ・・・そんなこと、咲音の家の者として、できるわけないじゃない・・・!」
 我に返ったように下唇を噛むめいこは、今頃俺が手を握っていたことに気付いたようで、それを解いた。その動作が意味する答えを信じられずにめいこにもう一度手を伸ばす・・・が、それは「めいこ」という優しい呼び声で止まる。視線を向けて見るが、振り返っていると思ったるかさんは、まだ男の方を見たままだった。背中越しにその声が俺たちへと届いていたらしい。
「彼女の言うとおり、全て何の問題もなく進んでいますの」
 男と真正面で視線を合わせて、俺たちの話など聞いていなかったように見えたるかさんは、どうやらそれでもちゃんとこっちの話も聞いていたらしく、優しい声で続けた。
 めいことその男の婚姻の裏にあったもの。それは、どろどろと濁った水のようだ。それを飲まなければならなかっためいこを、るかさんはまた助けてくれたという。咲音の方に話を通して。
「――ですから、お家のことは心配しないで、そこの彼に養ってもらいなさい」
 穏やかな声に身体が温かくなる。
 彼女の話し振りからして、俺の知っているところばかりでなく、知らないところでまで俺たちのために動いてくれていたということがわかった。相手がどう動くか全てを計算して、興業団に俺を鍛えるよう話をつけ、家の方にも・・・詳しくはわからないが、めいこが気兼ねなく行けるように話をつけ・・・そうまですることに、彼女には何の利益もないだろうに。利益どころか、寧ろ損失の方が多いのではないか。それなのに、彼女は助けてくれた。
 今更そんなことを考えても仕方ないというのに、自分の無知さが悔やまれる。本当なら、俺一人で何とかしなければいけない問題だったに違いない・・・それなのに・・・。
 後悔の念に押し潰されてしまいそうになったその時、るかさんが振り返った。その優しい表情に、心の中がすっきり元の穏やかな状態へ戻っていく。優しい風が、荒立った砂地を均すように。
「めいこ、それから濡れ鼠さん・・・落ち着いてからで構いませんから、お手紙くださいね」
 にこりと微笑んだるかさんに、俺は「ありがとうございます!」と深く頭を下げ、めいこの手をもう一度取る。もう、後悔など綺麗さっぱり消え去っていたし、めいこも俺の手を解こうとはしなかった。
 めいこの両の目には涙が溜まっているようだったが、見なかったことにしてその手を引く。もうこの手は離さないと、心の中でその温もりに誓った。
「行こう、めいこ!」
「っ・・・」
 声にならない声と頷きで肯定を示すめいこの手を、しっかり握り締めて走り出す。乾いた風が後ろから吹きつけ、俺たちの背中を押してくれているように感じられた。
「ありがとう、ほんとにありがとうっ・・・!」
 涙を堪えるようなめいこの声が響くが、それはるかさんの耳に届いただろうか・・・きっと、届いているだろう。めいこの、心からの言葉だから。
 背後から追ってくる男の声は、不自然に途切れて消える。るかさんたちが時間を稼いでくれているのだと思うと、言い表せないほどの感謝で心がいっぱいになった。
 舞う砂埃の中を、ただ駆ける。こんな時だというのに俺は・・・幼い頃、手を繋いで青く晴れ渡った空の下、二人笑顔で駆けた日々を思い出していた。

 
 めーちゃん、めーちゃん。
 なあにかいとくん。
 ぼくね、めーちゃんのことだいすき!
 ふふふ、あたしもかいとくんがだいすき!
 ねえ、めーちゃん。おおきくなったら、けっこんしようね。
 うん、やくそくよ。ずうっといっしょよ。
 うん、やくそく。

 じゃあ、ゆびきりしよう! めーちゃん、こゆび、だして! ……ゆーび、
 あ、だめよ、かいとくん、まって。せーのでいっしょにいわないとだめなのよ。
 そうなの?
 だって、やくそくはひとりでするものじゃないから、って、かあさまがおっしゃっていたわ。
 そうなんだ。
 せーのでいい?
 うん。
 せーの、

 ゆーびきーりげーんまん、うーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーます!


 何も知らずに大人になることなんてできないから、随分と遠回りをしてしまったような気もするが・・・結果的に俺たちの前にあった壁は周りのいろんな人たちのおかげで全て崩れたのだし、この先に待つのはおそらく、二人で歩む幸せな未来なんだろう。まだ逃げている最中だから気を緩められないのだが。
 暫く走り続けていたが、めいこが苦しそうにしているのを見ると何とかしなければいけない気がして、追っ手が誰もいないことを確認し、速度を徐々に落として歩き始める。
 俺も全く疲れていないわけではなかったから、少し呼吸を落ち着けるぐらいの時間はあるだろう。それでも完全に止まらずに足を進めながら、深呼吸をして体の状態を元に戻そうとするめいこに目を向けた。
「・・・めいこ」
「なに・・・?」
 声をかけてしまったことに自分で驚きながら、「あー」とか「えーっと」とか、訳のわからない言葉を苦し紛れに紡いでみる。めいこに「男ならはっきりしなさいよ」と呆れた表情と共にため息を吐かれ、俺は今更自分が言おうとしていたことに少し照れながら、口元に手をやって咳払いを一つ。
 真っ直ぐにめいこに視線を向けると、何よと言わんばかりの強い瞳とかち合った。
「うん、と・・・あのさ、またあの時みたいにさ・・・その・・・指きりとか、しない?」
 歯切れの悪い、自分でもそう思うほど何とも情けない声だったが、めいこはきょとんとした後でくすくすと笑う。やっぱり言わなければ良かった、と顔に熱が上がった時、めいこが笑いをおさめて俺の袖を引っ張った。
「――いまさら、なにを約束するの?」
 思わず眉根を寄せる。
 まさかそんな風に返されるとは思ってなかった。照れ隠しも混じっているんだろうが、もう少し言い方があっただろうに。
「今更って・・・俺、本気なんだけど」
 言い返すと、「だって、ゆびきりした約束は破ってばかりだったから、もうかいとは私との約束は懲りたかなと思って」なんてつれない言葉が返ってくる。ここで下手に言い返すより素直に受け止めた方が会話になるということは、付き合いが長かったからよく理解している。だからこそ、それ以上切り返すこともなく、小さく笑みを浮かべた。
「まさか。全然足りないぐらいだよ」
 小指を差し出されて、あの時のように絡ませた。同じぐらいの大きさだった手が、今でははっきりと大きさが違う。骨ばった少し硬い手と、細く繊細でやわらかな手。
「じゃあ、俺はこれからどんなことがあってもめいこと一緒にいることを約束しようかな」
「それなら私は、二人一緒に幸せになることを」
 二人顔を見合わせて笑う。ようやく二人一緒に立ち止まり、「結局同じようなことだね」と言うと、「それなら、約束の効果は倍になるわね」とめいこが言った。
 本当にそうなることを願って、息を吸い込む。もう一度、約束をするために。合図をしたわけでもないのに、それはめいこが息を吸うのと同じ時だった。

「ゆーびきーりげーんまん、うーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーます!」

 心地よく重なる声は、やはり俺にはめいこしかいないのだと思わせるには・・・十分すぎる。
 一度手を離し、その手をもう一度差し出すと、めいこは微笑みを浮かべてその手を取ってくれた。
「よし、行こう」
「ええ、行きましょう」
 二人一緒にいるだけで、何故こんなにも落ち着くのだろう。全ての歯車が正常に動き出したような・・・ようやく俺の人生が上手く流れ出したような気がする。
 俺は何故か感じた違和感に一度振り返って、そのせいで浮上した不安をかき消すように首を振った。めいこが「どうしたの?」と尋ねてきたが、首を横へ振ってそのまま走り出す。

 どうか、もう何も起こりませんように。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#23】

策士さんたちに助けられ、新しい約束をするターン!
この恥ずかしい感じは自分が最初に書いたんだった、かな・・・?
しかし、最後になればなるほど元気になる(書きやすくなる)辺り、自分らしいというか。
相方には本当に申し訳ないと思いつつ、おいしいとこはもらってる気がした。
誘われた身なのにサーセン。
終わりが見えてきたけど、かいとくんは一体何に気付いたのでしょうか!
そして本当にがっくんはこのままおさえこまれて終わりなのか!
次回、甘い夢はもう少し先!をお届けします(謎
つまるところまだ続くらしいよってこと?(自分でもわかんねぇのか

+++

「紅猫編」を書いているコラボ主犯
つんばるさんのページはこちら → http://piapro.jp/thmbal

+++

前バージョンで何かやらかしているらしい・・・。


・・・・・・はっ! 投稿数記念すべき200だったのに今気付いた・・・!
ちょ、何もそれらしいこと考えてないよ!
100回の時はちゃんとやったのに・・・!!
とりあえず、こんな中途半端な時に200とか信じられない(そこ?
あ、この前バージョンがお祝いってことでいいか←

閲覧数:439

投稿日:2009/12/06 18:33:02

文字数:5,085文字

カテゴリ:小説

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    その他

    >>フォックス様
    こんばんは、フォックス様。お祝いのお言葉ありがとうございます。
    まさかここまで続くとは思ってなかったので、すごく驚いてます。

    フォックス様にコメントをいただいてからもうすぐ一年ということは・・・もうすぐここへ投稿するようになってからも一年経つわけですが、最初は本当にE・Bだけ投稿して退会しようと考えていたので、読んでくださってる方々に支えられてるんだなってことを痛感しました。
    投稿数200というとすごい感じがしますが、内容はそれほど濃くはないような気もします。変換ミスも多いですしね。じゃあなおせって話なんですが。
    読んでるのにメッセージ残してなくて申し訳ないです。何回この台詞言えば気が済むのか。

    ぐだぐだで申し訳ないですが、これからも頑張りたいなとは思っています。
    また気が向いたらのぞいてやってください。
    かげながらではありますが、自分も応援させていただきますね。
    たくさんの嬉しいお言葉をありがとうございました。
    コラボの方でもよろしくお願いします。それでは。

    2009/12/06 23:25:05

  • FOX2

    FOX2

    ご意見・ご感想

     こんばんは+KK様。FOX2です。

     遂にやりましたね。投稿数二百達成、おめでとうございます。
     良くぞここまで投稿された貴方を、改めて尊敬いたします。
     三桁に到達することでもすばらしいことですが、貴方はなんと二百の域へ達しました。
     その努力、そしてそれを可能にした精神。それは文を記す者に限らず、人としてすごいことなのだと思います。
     私は貴方の偉業と、この二百の達成を心から祝福いたします。
     お疲れ様でした。
     
     思えば、初めて貴方の作品を目にし、そしてコメントさせていただいたあの日から、もう一年近く経とうとしています。
     その間に、様々な出来事が、貴方や私の周りで起こったことを、ご存知ですか?
     今でさえ、誰からのメッセージも届かない私は、作品を通じて貴方と語り合うことが、何よりの糧である気がします。
     特に、貴方の方からメッセージを戴いた時は、感動の余り涙を隠すことができませんでした。
     そして早一年近く、私は貴方とこのピアプロで文を書き続けています。
     そんな長い刻を経ても、貴方はまだ、私と共にあります。
     私達と同じ志を持つ方は多くいますが、決して共に長くある、ということはありません。
     我々と次元の異なる志を持ち「完全に」ピアプロを後にされたお方も、少なからずいらっしゃいます。
     しかし、貴方は違います。このメッセージ、ご覧になっていますよね?
     ですから私も、貴方と同じく、何時までもこのピアプロにあり続け、物語を記して行きたいと、心に決めております。   
     
     行きましょう。この先へ。

    2009/12/06 22:20:47

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