――いまさら言ったってもう遅いよね。
僕は今更、君が幸せな灰になったあとで
君が好き、だって。
≪地球最後の告白を【自己解釈】≫
海岸。
誰もいない。居るのは僕だけ。ほんと、うざったいくらい誰もいない。
君もいない。あんなに、好きだった君だってもうここにはいない。
息を吐いた。微かに冷たい。どうしてだろう。また夕暮れには寒いのになあ。
昔のことを少しだけ思い起こすことにしてみるよ。君の――思い出の残るこの海岸で。
*
「おとなになりたくないよ」
だなんて、昔の自分は思っていた。まるで光のようにあっという間に少年の日は駆け巡るものだ。
――なんて、思っていた。
「……不老不死?」
「そう、信じられないだろ?」
「冗談じゃないのー?」
「冗談に決まってるじゃんー」
「嘘下手だよねほんと!」
――それが実は嘘じゃないんだ。それはどうやら僕に訪れた、相当タチの悪い悪戯なんだよ。
どっかのファンタジーだったらさ、「カミサマ素敵なプレゼントをありがとう!」とか言うんだろうけど、そんなのは的外れに過ぎない。幼い、記憶の中に残した、大事に隠した片思いはカミサマも察してはくれなかった。
もう、憧憬は戻れないし、戻ってもくれない。君の年齢はどんどんと重なっていくのに、僕は姿も年齢も変わらない。
いつか君と見た夕焼けはあんなに綺麗だったのに、どうしてか恋なんて呼ぶには穢れすぎてしまった。
そして……君が幸せな灰になったあとで、僕はもう戻れないのに今更君が好きだったことに気づいたんだ。
百年前の同じ日、同じ夕焼けで君のおばあちゃんは君と同じことを言ったのを覚えてる。
そして――何十年何百年と経って、君の孫のひ孫のその最期に。
僕はまた――一人になる。
*
メトロポリスは恐ろしいくらい早く移ろいで行くのに、僕は全く変われないし、そこにはついていくのに一苦労だ。その時代を彩る人間も変わっていけば、僕が生まれた頃を知る人間だなんて居なくなってしまっている。
灰が降ってきて、人々は苦しんでいく。なのに――僕は死んでいかない。挙句の果てには“バケモノ”と呼ばれ、閉じ込められていった。
でも――君は助けてくれた。
だから今ならそのことを感謝の気持ちを――。
君の名に――花束を――。
いつか二人で見た夕焼けはあんなに綺麗だったのに、恋なんて呼ぶには穢れすぎてしまった。
血が流れて、灰が世界へ降り注いで灰になった後で、僕は不意に君のことを思い出すんだ。
*
海岸をどれほど見たって船影すら見える訳のない。
かといって振り返っても、見えるのは無数の墓標。人がいる訳もない。
誰もいない――枯れた世界。
僕はやっと――ひねくれたカミサマがさずけた悪戯の意味が分かった気がした。
*
僕はとても臆病だ。
だけど今なら言える気がするんだ。
地球最後の――告白を。
*
いつか見た夕焼けはあんなに綺麗だったのに、恋なんて呼ぶにはあまりにも遠回りしすぎてしまった。
そして何もかもが手遅れの灰になった後で――。
僕はなんだか泣きたくもないのに涙がでてきて。
今更、言うんだ。
「僕は、君が好きだった」
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