<第9話 末文より>

(自我の世界・玉座の間)

回転椅子が回転して、女の子はこちらを向いた。

ルカ:え・・・・・・・そ・・・・・・・・そ・・・・・・・そん・・・・な・・・・ことって・・・・。

女の子:私の名前は、『巡音ルカ』よ。

***

<ようこそ!、きのこ駅前商店街へ! 最終話 ルカ>

(自我の世界・玉座の間)

ルカ:な・・・なんで・・・張本人が・・・ワタシ・・・・なの・・・。
メイコ:“驚かない“方が難儀よね。
少女ルカ:私はあなた。これは曲げられない“事実”。ここへ“全てを知る覚悟”ができて来たんじゃないの?、あなたは。
ルカ:・・・・・・・・・・・・もう後戻りは出来ない、そうだったわね。わかった。じゃあ、教えて貰うことにするわ、全ての真実を。

遂に真相公開の時となった。

ルカ:まず、なんで私そのものじゃなくて、“子供の頃の私”なのか、それから行くわ。
少女ルカ:私は10年前に、元の世界が“地の世界と天の世界”にスプリットした時に、自我の世界側に生まれたルカだからよ。そして自我の世界では歳を取らない。だから10年前の“少女のあなた”のまま、今に至っているの。
ルカ:!!、や、やっぱり、世界をスプリットさせたのは、あなたなのね!。
少女ルカ:私の話をちゃんと聞いていたのか?。わかった、説明を詳しくしよう。世界がスプリット“した”時に出来たのが、元のルカからスプリットした”地の世界のあなた”と“自我の世界の私”だ。では確認のために私からおまえに訊く。世界をスプリットした人物は誰だ?。

ルカ:・・・・・元の世界にいた、私とあなたに『分けられる前』の10年前の少女である『巡音ルカ』・・・・。
少女ルカ:そう。そして、“分けた記憶”や“分けてやりたかった意志”を受け継いだのは“私”で、おまえは何が起こったかも解らずに普通に継続して生活していた。
ルカ:聞きかじりの知識だけど、“パラレルワールド”が発生する時の“条件”を『因果律』っていうらしいけど、この地と天の世界をそれぞれのパラレルワールドにした『因果律』が、『10年前の少女・巡音ルカ』、というわけなのね。
少女ルカ:そう。ではここで、もう1回質問をする。この因果律であり張本人である10年前のルカの“原罪”を受け継いだのは、私?、あなた?。
ルカ:・・・・・・・・・・・片方だけではないわ。記憶の有無に関わらず継承するから、私とあなた、二人が一生背負っていく“罪”だわ。
少女ルカ:少しは話が分かってきたようね。そう、分けた記憶を受け継いだ私だけではないの。あなたもその罪を被ることになる。同じ“罪人・ルカ”から生まれたからね。

ルカ:それはわかったわ。そして、あなたは“分けた記憶”と“意志”を受け継いだワケだから、“こういう天の世界”を作ったのだと思う。ここで質問。“彼女の意志”、というか“分けた理由”と“分けた後に何をする意志”があったのか、ちゃんと教えて!。

少女ルカ:そもそもの“起点”は10年前ではないの。あなたは覚えていないかもしれないけど、15年前、幼児だったルカが、この街に家族で初めて立ち寄った事が始まりなの。
ルカ:私がここへ家族で立ち寄った?。
少女ルカ:正確には、元の世界の15年前には“あった”木之子駅と、小さな商店街、つまり木之子駅前商店街に、幼児・ルカは家族旅行の途中で立ち寄ったのよ。小さいながらも活気溢れる商店街、乗降人数は少ないけど、電車も通っていた駅。幼児・ルカは子供の“無垢なる思い”で、その全てをその眼をキラキラさせて眺めていた。“素敵な街”だと。
ルカ:・・・・・・
少女ルカ:来たときの商店街は“秋祭り”の真っ最中だったの。そしてその“お祭り”が目的で立ち寄ったんだけどね。商店街のお店で、サービスで貰った“水飴”、木之子神社のテキ屋で買って貰った“リンゴ飴”や“綿飴”。彼女にとってそこは純粋に“天にも昇るほどの素敵な世界”だったのでしょう。そして祭りが終わった後に、家族は帰宅した。それっきり、家族はそこに行くことはなかったが、幼児・ルカの記憶には、その“素敵な商店街”が刻み込まれていた。そして10年前、ある事がきっかけで因果律が発生した。“「廃線」による木之子駅の解体工事と商店街の再開発工事”。
ルカ:つまり、そのことを報道したニュースを、ルカはTVで見てしまった。その時のルカはニュースの報道の意味を一応わかる年齢だった。
少女ルカ:ブルドーザーやクレーン車やショベルカーで破壊される駅舎、取り壊されるアーケード。リポーターが歩いていく光景に映し出されている“水飴を貰ったお菓子屋”の解体工事、勿論テキ屋はないが、ひっそりと人もいない状態になった荒れ果てて寂しい神社。幼児・ルカが見て記憶していた“あの世界”が、跡形もなく破壊されていた。そして起こった“世界のスプリット”が。

ルカ:『私のあの駅と駅前商店街を自分で取り戻す』、と。

少女ルカ:そう。そうして、世界は、彼女の希望を叶えるための世界“天”と、普通に生活する世界“地”に分けられた。しかしその因果律になる“対価”が存在した。希望している彼女本体をそのまま“天”の世界に持っていく事が出来なかった。対価は、“意志だけの存在”のみ、天の世界に第3者的に関与できる“自我の世界”に送ることが出来、人間の存在である、“人間・巡音ルカ”は、分離した部分を取り除かれた形で、普通に地の世界での生活を続けることになった。
ルカ:でも、あくまで第3者的にしか関与できないため、自分の手で物も人間も作っていくことが出来ない。だから天の世界と同時に作られていた、リンさんとマスターに支配世界のあのエリアで指示を送った。だが当然それでも人間を作る事は出来なかったから、地の世界からフロンティア精神を持つ人間をここへ誘導してきて、記憶操作し、商店街を作っていって貰った。
少女ルカ:天の世界と自我の世界を繋ぐ“駅舎と駅前道路”は天の世界が創世した時点で作られていた。が、ココにいる、というか、天の世界が“駅舎と駅前道路と商店街だけしかない世界”と知られるわけにはいかない。だから“商店街を出るな”、“張本人の事を詮索するな”という事も律に盛り込んだ。

ルカ:壮大な意志だけど、まさかこんな平和な世界が出来上がるとは思っていなかった。

少女ルカ:そう、だいぶ前だけど、“商店街の成長の方法”に息詰まった私は、地の世界からここに直接、人間を一人持ってきた。記憶操作も何もしないのに、その人物は私だけでは思いもつかない事を次々提案して、時には“スパイ”として、天の世界にも行ってくれた。
ルカ:ま・・・・・まさか・・・・それは・・・・

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

ようこそ!、きのこ駅前商店街へ! 最終話 ルカ

☆オリジナル作品第2弾である、「ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!」の最終回です。
☆ストーリー展開の“繋がり”の問題で、最も長いお話になりましたが、無事終える事が出来ました!。
☆これまでのお付き合い、まことに有り難う御座いました!。ではでは~!。

第1話:http://piapro.jp/content/gd0jb59ytd308t92
第2話:http://piapro.jp/content/0a4lbg5h8w17bo26
第3話:http://piapro.jp/content/tgh0ul4dkragiduz
第4話:http://piapro.jp/content/92pp7g2rnd88oid3
第5話:http://piapro.jp/content/jfzky2abv7r9bg4w
第6話:http://piapro.jp/content/7klfje2avf08g84a
第7話:http://piapro.jp/content/4ip3xev6rmkrd6dt
第8話:http://piapro.jp/content/vuz745ozuzaze0bl
第9話:http://piapro.jp/content/qkwr4zn9jizaogv1

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投稿日:2010/03/02 18:09:00

文字数:2,771文字

カテゴリ:小説

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  • tamaonion

    tamaonion

    ご意見・ご感想

    最終話まで読ませていただきました。
    思わずうなってしまいました。

    街の描写、謎、活劇、そして世界観の描写。
    いろんな角度から描かれる世界を楽しませてもらいました。

    終盤の世界観の描写に至って、ルカの存在の比重が膨れ上がってきたので、
    「おや?」と思いつつ、読み進めると、見事な展開!
    ほんと、カタルシスと満足感が味わえました。

    約10話ほどの展開で、まとめられて、まさに「お見事!」です。
    すごく面白かったです。

    個人的には終盤の世界観の謎解きの前あたり、
    ユーモアを含んだ戦いのくだりが好きなので、そういったタイプの作品を探させてもらいます。

    また読ませていただきますね!

    2012/09/02 16:07:19

    • enarin

      enarin

      tamaonion様、今晩は!

      > 街の描写、謎、活劇、そして世界観の描写

      終盤は全ての統括描写が必要でしたので、ちと説明が多くなってしまったのですが、それだけスケールも大きかったですね。最初のほのぼの描写との差が大きいのも特徴です。

      > いろんな角度から描かれる世界を楽しませてもらいました

      有り難うございます! 今回のお話は結局は子供のルカさんの世界そのものだったのですが、色々なキャラ達が絡んできて、”修正”されたというのも大きなポイントです。ルカさん=特異点でもあります。

      > 「おや?」と思いつつ、読み進めると、見事な展開!

      有り難うございます! はい、「おや?」となるような描写にしました。展開的に?になる事が多い話ですが、一応最終話付近でフラグ回収はしておきました。

      > ほんと、カタルシスと満足感が味わえました。

      このお話は私自身も思い出深い作品だったのです。ルカさんはミステリアスなイメージを持っているボカロだと思っているので、こういう作品にはピッタリの主役だと思ってます。

      > 約10話ほどの展開で、まとめられて、まさに「お見事!」です。すごく面白かったです

      本当に有り難うございます!!! 嬉しいです?! この作品は表紙とか戦闘描写の所をイラストに描いて貰ったりして、恵まれた作品でした。今でも良い思い出です。

      > ユーモアを含んだ戦いのくだりが好きなので、そういったタイプの作品を探させてもらいます

      こういう感じの描写は、これ以降のどの作品でも結構あったりしますが、頻度が違うかも知れません。マジメ路線が多いことも、ギャグ路線だらけな事も

      > また読ませていただきますね!

      有り難うございます! 宜しくお願いいたします?♪

      これまでのご閲読、コメント、まことに有り難うございました!

      2012/09/02 17:57:29

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    hata_hata様、今晩は~!

    > お疲れ様でした

    有り難う御座います!、今回もメインストーリーだけなら研究所と同じく10話構成になりました。

    > 面白かったです!

    嬉しいです~!!。実は、ルカvsルカの会話が全ての回答になるため、かなり思考+修正を行いました。

    > 先が読めたらつまらないですもんね

    これはこの小説の一貫したテーマでもあります。”え!?”っていう驚きと”実はそうだったんだ”っていう納得で進んでいくこと、これ大事ですね。

    > ルカと小さなルカの問答はちょっと鳥肌モノでした

    ここは全文中、最も大事なところだったので、かなり時間がかかりました。というか1話を作るときに一番最初に浮かんだのがココの骨子部分で、他は色々な修飾だったとも言えます

    > カタルシス

    フロイト先生曰く”代償行為によって得られる満足”というだそうですね(wikiより)。これは錬金術の原則”等価交換”にも繋がります。何かを得るためにはそれと等価のものを犠牲にする必要がある、これが今回のルカにも当てはまりますね

    > オーバーロード?

    ”君主”ですかね。ここでも等価交換の原則が働き、メイコの存在が無くなる代わりに少女のルカを10年前に戻す。実はメイコが一番”犠牲の心”を持っていたということかも。実はここも途中で浮かんだアイデアで、当初はちょっと違うメイコさんになってました。あと、この声は、本当にそのまま”世界の声”です。ちょっとファンタジーを混ぜました。如何せんここは”誰かと契約を交わす”所だったので、自我の世界その物を持ってきたのです~

    > でもこれからまた、良い関係を築き上げて行くんでしょう

    これも等価交換。戻る代わりにルカ自身が払うことは”記憶のリセット”。というか、あの4人以外はあそこの記憶がなく違う歴史を歩むためですね。でもリンさんはルカさんのいい友達になれると思います

    > 次は何を題材に持ってくるのかwktkしてます

    まだアイデアの金庫が空っぽ状態です~ (^o^)/ 。もうちょっと中身が出来て言葉を紡ぐアイデアの余裕が出来たら打ち始めます~

    > 気長にお待ち下さいね

    気長に楽しみに待ってます~!。

    これまでのご閲覧、コメント、有り難う御座いました~!!

    2009/03/07 20:25:52

  • hata_hata

    hata_hata

    ご意見・ご感想

    こんばんはー!

    とうとう最終話ですね。完走、お疲れ様でした。

    ムチャクチャ面白かったです!
    しかし、最後の最後まで先の読めない展開で、enarinさんに翻弄されっぱなしでしたw
    幸せな読者とはこういうモノでしょうね。物語の先が読めたらつまらないですもんね

    ルカと小さなルカの問答はちょっと鳥肌モノでした。
    世界をスプリットさせた要因をルカに設定したことで、
    もの凄くカタルシスが生まれましたね。このお手並みは見事でした!

    そして、最後に残ったメイコと会話する自我の世界の声。
    世界そのものに意識があるのか、もしくは・・・いわゆるオーバーロード?
    ここら辺を深く追求すると神話かファンタジーになっちゃうんで、
    SFとしては巧いぼかし具合だと感じました。
    かの石の森章太郎が、009で天使編を描いたばかりに打ち切らざる終えなく
    なっちゃいましたからね~。神やらナニやらは難しい素材ですねw

    ルカに再び会えたリンには泣けましたTT よく知っているはずの人間が、
    自分の事を知らないというのは悲しいですね。でもこれからまた、良い関係を築き上げて
    行くんでしょう。

    改めてお疲れ様でした。楽しく読ませていただきました♪
    次回作も期待してます(プレッシャー?w)次は何を題材に持ってくるのかwktkしてます。

    この話も、きのこ研究所も絵にしたいとは思っているのですが、
    なかなか描けないでいます。気長にお待ち下さいね。ではでは~ノシ

    2009/03/07 02:40:19

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    nai☆様、今晩は!

    > また、なんちゅーヴォリュームだ!w

    すんませんです~、長いから2つに分けようと思ったのですが、分けるところがなかったので、こんな長くなってしまいました~!。

    > ドッペルゲンガー?

    えっと、文中の表現なら”同一人物=ドッペルゲンガー”ではないですかね。一人のルカという人物が、各要素をそれぞれ分けて持っている、”ルカの名前をもつ、要素が違う二人”ですか。だから同じ空間に二人がいても、バック・トゥ・ザ・フューチャー”のドク博士が言っていたように、”矛盾による宇宙爆発”すら起きずに安定していたのかも。

    > 幼女なのに

    この少女ルカのモデルはいます。”ぱにぽナンタラ”っていう漫画のチビッコ先生”レベッカ宮本=ベッキー”です。

    > 心の奥底に鋭く切り込んだ、繊細なストーリー展開

    まぁ、なんというか、設定に出来るだけ矛盾が起きないように、心理学を抜き出して使っていた、のかも。だから心理学ありき、でストーリーを作っていたかというか、ちと断言できないのよね~。

    > 意表を突いてそういう展開となるのか~!!!

    はい。メイコさんは最後にあーなるために置いた”布石”です。美味しいところをサクっと頂いてしまったので、今回は”さすが姐さん”と思いました。め~こ人形も最後まで使わせていただきました。

    > 精神世界の乖離と統合、商店街のスクラップ&ビルド。ホント奥深いテーマを感じます

    有り難う御座います~!。ここら辺はちと無理があったとも言えますが、それでも”これしか真エンディングはないだろう”と思っていたのでそうしました~!。

    > 真相公開=新装OPENなんですね。

    巧いっす!。これは実はここで初めて知りました~!。ははは。

    > ホント読み応えがありました。当初の予想を裏切りwこれだけの大作になるとは、大変お疲れ様でした

    有り難う御座います!。確かに第1話を改めて読んでみると、ほんわかハートフル商店街ものになってましたね。それが深層心理ものになるとは・・・。それと今回はそういえば”ネタ”からとった”ネタ”=パロディが少なかったかな、と思います。マサカド公ネタやマルチエンディングネタはストーリー根幹だったし。

    これまでのご閲覧、コメント、まことに有り難う御座いました!。

    2009/03/06 21:20:32

ブクマつながり

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