家族の形

投稿日:2010/10/09 11:11:22 | 文字数:4,572文字 | 閲覧数:207 | カテゴリ:小説

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テトマスなお話し。久々に、長いのを書いた気がする…。

テトさんがどうしても、可愛くなってくれないorz

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少しばかり広い部屋に、時を刻む時計の音だけが鳴り響く。
時刻は深夜の一時前、日付が変わってもうすぐ一時間が経とうとしている。
そんな時間にテトは何をするでもなく、ただ帰り人を待っていた。

すると外から小さな足音が聞こえきて、それが段々と近付いてくる。
それがドアの前で止み、鍵を解く音が響いた。
そして開かれたドアの向こうには、テトが帰りを待っていた人物がいた。


「お帰りなさい、マスター」

「ただいま、テトさん」


出迎えられた人物は笑顔で返事をして、後ろ手でドアに鍵をかけた。


「先に寝ててもよかったのに」


そう言いながら片手でネクタイを緩めて、それを脱いだスーツと一緒に無造作にソファーに投げる。
そのままテトの隣に座り込んで足元に鞄を置き、溜め息を大きく吐いた。


「お疲れの様ですね」

「でもまあ…流石に慣れたよ」


その言葉は肯定か否定かは分からなかったが、発せられる声には疲れの色が見えた。
テトはマスターを見ながら、静かに呟く。


「…何で、ですか?」

「?」

「何で、全てを受け入れようとするんですか?辛いのも、今の現状も…」


テトの言葉に頬を指でかきながら、苦笑した顔を向けてマスターは答える。


「目を背けて否定しても、物事は良くならないから」

「受け入れて肯定しても、事態は良くなりませんよ」


言葉を即座に返され、マスターはたじろぐしかなかった。
テトは怒るでも呆れるでもなく、淡々と続ける。


「リンちゃんとレンくんも、心配してましたよ」

「そっか…。最近は、ろくに話しもしてなかったね」


ここ数日のマスターの帰宅する時間は、日付が変わってからが続いていた。
帰って来た後にはリンとレンが寝ていて、朝は二人が起きる前に出勤。
そんなのが続いている為、会話どころか顔もろくに合わせていない。


「マスター、アナタの許容範囲は大きすぎるんです」

テトは腕を伸ばして、マスターの頬に両手を添えた。
マスターは何も言わず、黙ってその手に自分の手を重ねる。


「苦しい時には苦しいと言って下さい、悲しい時には悲しいと泣いて下さい。…今のマスターは、見てて辛いですよ」

「…ごめん、テトさん」


寂しそうで、悲しそうにするテトの顔を見るのが辛くて、テトの胸に顔を落とす。
テトはそれを受け入れて、マスターを優しく抱き止めた。


「夕飯は、どうしますか?」

「…今日はいいや。暫く、このままで居させて」


それをテトは抱き締める手の力を少し強め、黙って了承の意を示した。
マスターはテトから感じられる体温の心地よさに、目を閉じて身を任せる。


「マスター…、私達に心配されるのは嫌ですか?」

「…嫌じゃないよ。ただ、心配を掛けなくないだけ」


屁理屈を返すマスターに、テトは何も言わなかった。
どんな言葉も全てはぐらかされる、それが分かっていたから。


(私には、何もしてあげられない。だけど…)


力になりたくて
支えになりたくて
助けになりたくて


(どんな時もマスターの側に居たいと、願わせてください…)


心の中で祈るように、テトもマスターからの温もりを感じた。











*











ふと目が覚めて視界に入ったのは、見慣れた白い天井。
身体を起こして窓を見て、まだ陽の光が射してない事で大体の時間を把握する。
一度だけ大きく伸びをして、ベッドから立ち上がって部屋を後にした。


階段を降りると、ほのかに甘い香りが漂ってくる。
キッチンを覗けば、テトが慣れた手つきでホットケーキを焼いていた。


「…あ、おはようございますマスター。もう少しで出来ますから、顔でも洗ってて下さい」

「いつもありがとう。…でも、わざわざこっちの時間に合わせなくていいよ?朝飯くらい、自分で準備できるし」


申し訳なさそうなマスターの言葉に、テトは呆れた様子で答えた。


「何を今更、私がやりたくてやってるんです」

「でも…」

「それに、一人分作るのも四人分作るのも似たようなもんですよ」

「…四人?」


そう呟いた矢先、マスターは後ろの気配に気付く。
振り返ってみれば、眠たそうに目を擦るリンとレンがいた。


「「おはよぅ、マスター…」」

「あ、おはよう。って、何で二人とも起きてるの?」

声を揃える双子につい挨拶を返すが、マスターは驚きを隠せないでいた。
目の前にいる二人は、普段ならまだ寝ている筈の時間。
今こうやって起きてるのは、とても珍しい事だった。

「だって、マスターとお話したかったんだもん…」

「え?」

「リンが昨日、早起きしてマスターと話するって言ったんだよ。僕はそれに付き合わされたってわけ…」


そう言って、揃って欠伸をする二人。
そんな双子を見ていたマスターは、二人を強く抱きしめた。


「ふにゃ…?」

「ちょっ…!マスター、苦しいよ」


リンは寝ぼけてて状況の把握が出来ておらず、レンは突然の事に戸惑ってた。
マスターは何も言わずに、ただ嬉しそうな顔で二人を抱きしめ続ける。


「幸せに浸るのもいいですけど、そろそろ準備しないと遅刻しちゃいますよ?全員、顔洗ってきてください」


テトは一言だけ言い放って、フライパンを上げてホットケーキをひっくり返した。















朝陽が僅かに射し込む時間帯、その日のその時間はいつもより賑やかだった。

リンがまだ眠気が抜けきってない様子で朝ごはんを食べ、レンはマスターのコーヒーに口を付け苦さから顔をしかめる。
それを見ておかしそうに笑うマスターにテトは呆れたように、だが何処か嬉しそうな顔を向ける。

それはいつもよりささやかではあったが、楽しく、幸せな時間だった。


「…テトさん、いつもありがとう」

「何ですか突然…」


マスターの言葉に、テトは疑問の色を浮かべる。
マスターは優しく笑いながら、静かに言葉を続けた。

「テトさんが支えてくれるから、また頑張ろうって思えるからさ。テトさんには、感謝してるんだ」


「リンとレンも、いつもありがとう」と二人にも感謝の言葉を掛ける。
レンが「どうせ僕達はついでだよ」と軽く流し、リンは眠たそうな顔で笑顔を返してくれた。


「…ホント、見透かしたように言いますね。アナタは………」

「ん?テトさん、今何て言ったの?」

「いいえ、なんでもありませんよ。それより、時間は大丈夫ですか?」


テトはマスターの気をそらすように、時計を指差した。
時間は7時10分頃を指していて、それを見てマスターは立ち上がる。


「それじゃ、そろそろ行ってくるね」


マスター少しだけ屈んで、リンとレンの頭を優しく撫でてやる。
そして玄関に向かおうとしたが、それをテトに呼び止められた。


「マスター、襟が曲がってますよ。ネクタイもほら…」


テトは立ち上がってマスターの胸元に手をやり、乱れた部分を直す。
マスターはそれが気恥ずかしくて、戸惑いながら視線を泳がせる。
それを見ていたリンが、未だに寝たそうな声で呟いた。


「テトさんとマスター、何だか奥さんと旦那さんみたい」

「「…え?」」


間の抜けた声を上げる二人を、リンはにこにこ笑いながら目を向ける。
レンは一人静かに、ストローをくわえてバナナジュースを飲む。


「それで私とレンが子供で、皆で家族だね」

「やっぱり、僕も含まれてるんだね…」


嬉しそうな顔をするリンに、呆れたように溜め息を吐くレン。
呆けていたテトは顔を僅かに染めて、少し慌てた様子で口を開く。


「へ、変なこと言ってないで、早く食べなさい!ほら、マスターも遅刻しますよ!」

「ち、ちょっとテトさん!そんな押さないで…」


無理矢理テトに玄関に押しやられるマスターは、転ばないように歩いて行く。
リンは不思議そうな顔をしてそれを見送りも、レンは「行ってらっしゃい」と一言だけ呟いた。


「ねぇ、テトさん」

「…何ですか」


玄関で靴を履いたマスターは、どこか疲れた様子のテトに話しかけた。


「今度の日曜日に、皆で隣駅の遊園地に行こうか」

「それは…構いませんが、休み取れるんですか?」


今のマスターの仕事の状況は多忙で、休日出勤もざらだった。
マスターはそれを考えた上で、テトに言葉を続ける。


「分からない。だから、リン達には内緒にしててくれる?ぬか喜びは、させたくないからさ」

「…わかりました。でも、無理だけはしないで下さいね?」

「うん、分かってる」


マスターはドアノブに手を掛け開こうとしたが、何かを思い付いたようでその手を離した。
疑問を浮かべるテトに、マスターは言った。


「『行ってらっしゃい』のキスとか、あったりしない?」

「…マスター、寝言は寝てから言ってくださいよ?」


明らかなまでの怒りを見せるテトに、マスターは苦笑するしかなかった。


「い、いってきます…」


マスターがドアを開いて、外に足を一歩踏み出す。
テトは少しばかり考え、意を決したように口を開いた。


「マスター」

「ん?どうした…」


呼ばれたマスターが振り返ろうとした瞬間、身体を強く引き寄せられる。
それに気付いたと同時に、頬に柔らかい感触を感じた。

その後すぐに引き離されたマスターは、驚いた様子でテトに目を向ける。
目の前の彼女は、顔を真っ赤にして目線を横にそらしていた。


「今回、…だけですからね」


テトはマスターを睨むように、静かに言った。
そんなテトの仕草に、マスターはつい本音を漏らす。

「もう一回、してくれない?」

「調子に乗らないでくださいよ?」

「すみません行ってきます!」


再び怒りを露にするテトを見て、マスターは慌てるように家を出た。
その時のマスターの顔は残念そうな、だけどとても幸せそうに笑っていた。


「全く、あの人は…」


呆れたように言うテトだったが、その顔にはほのかに笑顔が浮かんでいた。
部屋に戻った彼女は、食事を続けるリンとレンに言う。


「食器洗っちゃうから、さっさと食べちゃってね」

「「は~い」」


双子の返事を聞いてテトも自分の食事を済まそうと、座って残りを口に運ぶ。
レンはそんなテトを見て、静かに言い放った。


「…テトさんって、意外に大胆なんだね」

「っ!?」


急な発言に、テトは苦しそうに咳き込む。
コーヒーで喉につかえた物を流し込み、荒くなった息を落ち着けてテトは尋ねた。


「…き、聞こえてたの?レンくん」

「聞こえてたと言うか、見えてたと言うか…」


そのレンの言葉にテトは何も言えずに、顔を真っ赤にして俯く事しか出来なかった。
レンは窓に目をやり、すっかり朝日が昇った景色を眺める。


(今日も、平和だなぁ…)


そう考えながら、少年は残りのホットケーキを口に放り込んだ。

















(キミ達がいてくれるから、頑張る事ができる)




文をメインに、色々と創作中。
基本テトさんと鏡音が大好きです^^*(もちろんボカロ全般好きです)

よく色々な作品を巡り歩きしてます。一行詩に出没しているので気軽に絡んでくれると嬉しいです♪

最近は絵師さんのイラストから文を書いてみたいと思っていたり…。
また、僕の書いた文からイラストを書いて頂けたら嬉しいなと思ってます←


ツイッター始めて見ましたが、使い方がよく分からないww
よければお立ち寄りください♪
http://twitter.com/Defectiveprodu

pixivでも作品を投稿し始めました、良ければご覧ください^^
http://www.pixiv.net/member.php?id=2245288

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