ここは、とある国の協会。
その協会には、ある‘話’が言い伝えられていた。

ある日、この協会で働く双子は、協会の外に子供を集めた。



「さあさぁ子供たち。
　今日のお話は、途中で眠たくなってしまうような、つまらない話ではないよ？」



そう言ったのは双子の一人、黄色い髪をした少女だ。
その言葉を聴いた子供たちは、次々と呟く。



「えー嘘だー」
「このあいだのお話だって、つまんなかったじゃん」
「おなかすいたぁ」
「お姉ちゃんの好きなもの何ー？」



だんだん騒がしくなってくる。
不満の声に混じって、なぜか関係ない言葉も混じってきたが。



「違うよ？今回のお話は、この協会に伝わる、とても悲しいお話さ。
　さぁ、ハンカチの用意を忘れずに！」



それを聞いて子供たちは興味を持ったのか、静かになった。
そして少女の隣に居た、顔のそっくりな少年も口を開く。



「それじゃあ始まるよ！
　むかーしむかし、あるところに…」














<<魔女【自己解釈】>>















あるところに、魔女が居た。
その魔女の名は、ルカ。

この時代は、魔女や魔女の疑いがある者は処刑するというきまりがあった。
ルカは魔女でありながら、魔法を使わなかった。

それは捕まるからではなく、魔法を使うこと自体を嫌がっていたからだ。
それと、もう一つ。



（なぜ私は、魔女なんて罪深き種族に生まれたのだろう）



ルカは、自分が魔女であることに、コンプレックスを抱いていたのだ。
それにはいろいろな理由がある。


（そもそも魔女は、人間や動物たちから嫌われる。私は、もっと皆と触れ合いたいのに）
（魔女は不老不死だと決め付けられる。そんなわけないのに）
（そもそも不老不死なんて力を得ても、その先にあるのは孤独だけ）


どんな理由があれど、ルカは自分が魔女であることが嫌だった。

そんなある日、ルカは街を歩いていた。
だが、突如強い風が吹いた。



「…！」



そして、つけていたヘッドドレスが風に飛ばされた。



「あっ…」



高価な服を身に纏った男性が、飛んできたルカのヘッドドレスを手に掴んだ。



「…大丈夫ですか？これ、あなたの物ですよね？」



そして、ルカに差し出した。



「…あ、ありがとうございます」



ルカは受け取り、男性の顔を見た。

その男性は、顔は整っていて、髪が長かった。
ルカと同等、いや、それ以上の長さの髪だ。
そして、その瞳に、優しい光を見た。


その時、ルカはその人と目が合った瞬間、鼓動が高鳴った。



「あの…あなたは…」
「あぁ、この国の王子で、神威といいます。以後、お見知りおきを」
「…」
「では、これにて。ここのところ風が強いので、気をつけてくださいね」



そう言って、神威は立ち去った。


（この国の…王子…
　もし彼が私のことを魔女だって知ったら…
　間違いなく、私は殺される）


ルカは恐怖を感じた。
だが、もう一回会いたいと思った。
彼の瞳に、今まで見た人間とは違う、優しさという温かさを感じたから。