#93「解決」



「ハクさん……今回の一件はあなたもわかっている通り、誰も悪くない。もちろん、あなたも……」


僕にも経験があるから……僕を捨てた親を恨んで泣いたこと……


「全て最初からわかっていたとしても、認めたくなかった。それもわかります」


僕だって……親がいないことを認めたくない時期は少なからずあった


「それでも、今回、こんなことになってしまったのは……ハクさんが一人だったからです」


僕はハクさんのもとに寄って行き、ぼーっとするハクさんの顔の前に手を差し出した


「僕も親に捨てられました。なので、少しはハクさんの気持ちがわかります。でも、僕には頼れる【家族】がいました」


そう、僕が落ち込んだ時、泣いている時、病んでいる時、いつもシスターや義兄弟たちがいてくれた



「誰にも相談できずに苦しんでいたあなたを……僕らがもっと早く気づいてあげられればよかったと、今は思います」


それが僕の本音


「人間って……変な生き物ですね……どうして、私に手を差し出すのですか?」


ハクさんはうつむいたまま、小さな声でそう言った


「人間だろうと、妖精だろうと、一人は寂しい。それだけです」

「……そう……ですか」


そういうと、ハクさんは僕の手に液体の入った小さな小瓶を渡した


「ハクさん、これは?」


僕は小瓶の中身をのぞいてみる


「それは女王様と姫様の解毒剤です……それしかないので大切にしてください。」


そして、彼女はすっと立ち上がると、出口に向かって歩き始めた


「どこへ……」


別に止めるつもりなどはなかった


「どこ……でしょう……私はもうここにはいれません。犯罪者で反逆者ですから……」


さっきまでとはうって変わって、悲しい顔……でも、どこか安堵した表情を見せるハクさん


「……そうですか……その命、大切にしてください」

「……本当、変な人ですね、あなたは」

「はは……よくいわれます」


どうやら、ハクさんが自ら命を絶つということはなさそうだ


ハクさんが出口まで到着すると、こちらを再び向いた


「カイトさん……ありがとう……あとの事を頼みました」

「はい、ハクさんもお元気で」



僕がそういうとハクさんはどこかへ行ってしまった













その後、ハクさんからもらった解毒薬を、気がついたルカさんに分量を教えてもらいながら、リンちゃんとメイコさんに注射器で打った

ルカさんの怪我はそれなりのものだったが、「人間とは体のつくりと鍛え方が違うのよ!」と怒られた

が、ここは医者権限で無理やり応急手当をした




僕は三回に分けて、リンちゃんの家に三人を運んだ

メイコさんとリンちゃんは、まだ手脚のしびれがとれていなかったし、ルカさんは体がまだ言うことをきかなかったからだ

そして、ハクさんのことは、全て三人に話した

メイコさんとリンちゃんは、後半意識朦朧としていて聞いていなかったはずだし、ルカさんは気絶していたのだから、三人とも驚いていた


そして、その三人の反応は三者三様で……

メイコさんは「ハク……私のせいで……」と落ち込んでいた

ルカさんは「あの女!次にあったら、こんどこそ投げ飛ばしてやる!」と意気込んでいた

リンちゃんは「そうだね、誰も悪くないよ!みんな助かったし、笑って許そう」と笑っていた

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

妖精の毒#93

とりあえず……解決?

勝者などいない解決
本当にこれでよかったのだろうか……


あとどれくらいで終わるのだろう……
目標は#100までかなぁ

閲覧数:447

投稿日:2012/12/06 22:10:08

文字数:1,427文字

カテゴリ:小説

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  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    あらら……もうすぐ終わっちゃうんですね……(´・ω・`)
    寂しいですが、仕方ないですねぇ……。

    2012/12/09 18:29:05

    • しるる

      しるる

      仕方ないですww

      もう
      終わってもいいよねww←

      2012/12/09 22:08:38

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