※注意!
これは「trick and treat」を零奈が勝手に小説にしたものです。
二次創作の嫌いな方、原曲のイメージを壊されたくない方、ホラーの苦手な方は戻ってください。
なお、これを読む前に「trick and treat (前編)」を読むことをおすすめします。
いつからだろうか。
ミクの頭には、疑念の刃見え隠れしていた。
ミクであってミクでない声が言う。
「愛という免罪符などは存在しない」と。
言葉の意味を考えるのも億劫で、ミクは唯魔法使いに手を引かれて歩いた。
時折、思い出したように双子の笑い声が聞こえる。
段々不安になってきたミクは、自分の状況を知りたくなった。彼女は、魔法使いに引かれていないほうの手でそっと目隠しをずらす。
隙間から見える、大きなかぼちゃのランタン。その明かりが、森に双子の影を映し出す。
「!」
ミクはかろうじて悲鳴を飲み込んだ。だが身の毛がよだつのは止められない。手を引く魔法使いに悟られるかと一瞬ひやりとしたが、当の魔法使いからは何の反応もない。
森に落ちたその影は有り得ないほどに歪んでいた。足首があらぬ方を向き、左右で肩の高さが違う。本体の顔の辺りには、かぼちゃのランタンのような目と口があった。
恐怖に強張る足を動かそうとするミクに、振り向いた魔法使いが言った。
「おやおや、悪い子」
その声はまるで長年の友人に対するような、おどけた声だった。
「もうお目覚めですか?」表情も笑顔だ。だがその瞳は硝子玉のように虚ろで、一切の感情を持っていなかった。
「目隠しが解けたなら、盲目にしようか?」
振り返り、魔女が言う。
その顔もまた愛らしい笑顔だが、魔法使いと同じく感情のない瞳をしている。
「ほらほら、笑いなさい?可愛いお顔で!」
双子はにっこりと笑い、それでいて一切感情のない瞳でこちらを見据える。
魔女が囁くような声で言う。
「ネェ、頂戴?」
恐怖に身体が支配される。ミクは一歩後ずさった。
双子の虚ろな笑顔を見るのが怖くて、ミクは顔を伏せる。今にも膝が崩れそうな震えに、全身が包まれる。
「どうしたの?そんな目で、身体を震わせて」
ミクの顔を覗き込む、魔法使いの硝子玉の瞳。その表情が、なぞなぞの答えを思いついたような笑顔になった。
「わかった!温かいミルクで、もてなして欲しいんだね?」
ミクは集会場での注意を完全に思い出した。
『いいですか?もしも、“trick or treat”ではなく“trick and treat”という人がいたら、すぐにその場から離れてください。もしかしたら、それは子供を食べる森のお化けかもしれません。くれぐれもついていかないように!いいですね?』
ミクは思い出した注意が完全に手遅れだと悟った。彼らに会った時に思い出せればと後悔したが、全ては遅すぎたのだ。
魔女が、森に溶け込むようにして建つ家を指差す。
「さぁ、中にお入り?そこはとても暖かい。見返りなら、ポケットの中身でいいから」
ミクは悪魔の仮装をくまなく調べたが、ポケットの中身どころかポケットそのものがなかった。
「ポ、ポケット・・・ないんだけど・・・?」
魔女が、にぃっと笑う。家で飼ってる猫に似ているなと、ミクは場違いに思った。
「あるじゃない、ポケット―――貴女の胸に。」
冷たい風が背筋を撫でるのに似た感触。
「頂戴!早く早く、ねぇ、ほら今すぐに!あなたの胸の中にあるそれを!二者択一の原則をかなぐり捨てて!」
魔女が駄々っ子のように言う。
「頂戴!寄越せ、ほら今すぐに、」
魔法使いが言葉を切り、魔女と揃える。
「「頂戴!」」
彼らの言う「ポケットの中身」は、心臓だ。
そう理解したミクが高い悲鳴をあげた。夜の森に飛び立つ、無数の烏。
―――それ以来、ミクの姿を見た者はいない。
【勝手小説】trick and treat [route→trick]
trick and treatの後編です。気づけばこんなことになってました。
ハッピーハロウィン!
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