ロミオとシンデレラ 第五話【クオの受難】

投稿日:2011/07/28 19:51:21 | 文字数:4,043文字 | 閲覧数:1,388 | カテゴリ:小説

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(おまけ 没にした会話)
「せめてもうちょっと大人しいのにできなかったのか?」
「例えば?」
「『血の祝祭日』とか」
「血ドバドバのスプラッタ映画じゃねえかそれ! どこが大人しいんだ」
「だってあの映画、低予算な上に素人だらけだから、画面がめちゃくちゃチープだろ。それにあのなんとも言えないしょぼいBGMを聞くと、むしろ笑いがこみ上げてくるんだけど」
「そりゃそうだが……ミクにゃわからないだろうし、見たら確実にぶっ倒れる」
「じゃあ『エス』」
「見た奴が鬱になるって有名な映画だろ! 全然大人しくねえよ」
「実際の事件がベースだから説得力あるかと思ったんだけどなあ」
「ありすぎて逆に怖いんだよ! 俺も普通のホラーなら好きだけどああいうのはパス!」
「じゃ『ピアニスト』」
「それホラーじゃねえじゃん! 主人公が変態ってだけで! ミクと一緒に見たら間違いなく俺が誤解され……レン、お前、俺をからかってるだろ」
「あ……バレたか」

 最後のは見せたら、リンが確実に失神するな……。つーかどれも高校生が見る映画じゃないし、こんなの日常的に見てたらレンとクオが単なる変人になってしまう。……という理由で没にしたんですが。
 あ、『ピアニスト』は真面目な映画です。カンヌで賞貰ってますし、原作者はノーベル賞取ってるし。でも、主人公はどう見ても頭がおかしい。一応下調べして、覚悟はして見ていたんですが、自傷のシーンなんて見た時、冗談抜きで叫びたくなりました。


ところで、この話、別にクオミクにする予定はなかったんですが……なんか、クオ、ミクのことが好きとしか思えなくなってきました。どうしたものかなあ。
少なくとも、レンの方は「クオはミクが好き」と誤解しちゃったわけですね。あ、本当に好きなら誤解じゃないか。

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TEXT
 

 ミクが立てた「レンと巡音さんをくっつけよう大作戦」というのは、二人を同時にミクの家に呼び出して、話す機会を作ってあげよう、というものだった。
「そんなんでうまく行くのか?」
「絶対うまくいくわよ!」
 俺にはちっともうまくいくとは思えないんだが、協力を約束した手前、仕方が無い。
 というわけで、俺は休日に、「一緒に映画見ようぜ」とレンを呼び出した。レンは「映画なら映画館で面白そうな新作やってるからそっちに行こう」と言い出したが、俺がレンが以前から見たがっていた少し古いホラー映画のDVDを入手したと言うと、こっちに来る気になった。つーかこれ、この口実作るためにわざわざネットで買ったんだよな。買っといて正解だった。
 ……はあ、俺、何やってんだ? なんで彼女もいないのに、他人の色恋沙汰(っていうか、色恋沙汰ですらないぞ)に首を突っ込まなくちゃならないんだ。ああもう、ミクの奴!
 俺がレンを連れてホームシアタールームに入ると、ミクと巡音さんはもう来ていた。予定どおり、俺とミクはどっちがホームシアターを使うかで喧嘩を始める。レンも巡音さんも唖然としてこっちを見ていたが、仕方がない。
 話をつける、という名目で、部屋を後にする。そして俺とミクはとりあえず、ミクの部屋に移動した。ミクいわく「二人っきりにしてあげれば、何かしら話すはず!」とのことだからだ。まあ、確かに話ぐらいはするだろう。その中身までは保証しないけど。
「ところで、第一段階(二人を呼び出して、二人っきりにする)はうまくいったけど、この後はどうするんだ?」
「適当なところで部屋に戻って、四人で映画を見ましょう。何も見ないと変だと思われるし。うまくいけばこれで更に親密度がアップするはずよ」
 現実はゲームじゃないんだがなあ。映画を見ようって意見に異論はないけど。
「ミク、映画は何を見るつもりなんだ?」
「ラブコメよ。とびきりキュートな奴」
 うへえ。俺、はっきり言って恋愛映画って嫌いなんだよな。あれのどこが面白いのか教えてほしいぐらいだ。
「先に俺が選んだ奴見てもいいか?」
「何?」
「ホラー映画」
 ミクが顔をしかめた。
「わたしがホラー嫌いって知ってるでしょ?」
 知ってるよ。でも、俺だってお前の恋愛映画につきあわされるんだから、お前もこっちにつきあうぐらいのことはしろ。
「おい、ミク。お前、二人の仲を取り持ちたいんだろ。だったらホラーを見せた方がいい」
「どうして?」
「うまくいけば、巡音さんが怖がってレンに抱きつくかもしれないぞ」
 俺がそう言うと、ミクは思案する表情になった。
「うーん、でも……」
「ミク、アメリカじゃホラーはデートムービーの定番だ。きゃーっ怖いって抱きつかれたら、どんな男だって悪い気はしないっ!」
 男の方が先に抱きつくとムード激減だけど、レンの奴はホラー好きだから大丈夫だろう。
「絶対ホラーの方が盛り上がるって! 俺を信用しろ!」
「うーん、なら、いいけど……」
 よっしゃっ!
「ミク、お前も映画が始まったら俺に抱きつけ」
「なんでそうなるのよ?」
「巡音さんがお前に抱きついたら困るだろ。先にお前が俺に抱きついておけばそれを防げるじゃないか」
「…………」
 いてて。ミク、俺をつねることはないだろ。


 ホームシアターの設置してある部屋に戻ってみると、レンと巡音さんは気まずそうな表情で、無言でソファに座っていた。どう考えても計画は失敗しているとしか思えないんだが、ミクは認めないだろうなあ。
 そして、俺が持ってきたゾンビもののホラー映画を鑑賞し始めたわけだが、映画が開始してそんなに経ってないってのに、ミクがキレて俺の首を絞めたため、ホラー映画鑑賞はそこまでになってしまった。うう、首がまだ痛いぜ……ミクの奴なんであんなにバカ力なんだ。
 ミクが「もうホラーは嫌だ」と強く主張したため、残りの時間はミクお薦めのラブコメ映画とやらをひたすら見る羽目になってしまった。たく、何の苦行だよ、これは。
 映画を一本見てから昼食を持ってきてもらい、それからもう一本映画を見てお茶を飲むと、巡音さんは「門限があるから」と言って帰ってしまった。今回の結果にミクは不満そうだが、仕方がないだろ。ああ、後でどうやってなだめよう。いや、それよりもこんなバカな計画、諦めさせる方が先か。
 巡音さんが帰るのと同時にミクは部屋に引き上げてしまい、ホームシアタールームに残っているのは俺とレンだけだ。
「俺もそろそろ帰るけど、クオ、ちょっといいか?」
「なんだよ」
「今日見れなかったホラー映画、借してくれ」
「ああ、別にいいぜ。今日は悪かったな。ミクと鉢合わせしちまったせいで、お前まで恋愛映画につきあわせちまって」
 不意に、レンは俺を真面目な表情でじーっと見た。
「……なんだよ」
「訊きたいことがあるんだ。クオ、お前、俺に何か隠してないか?」
 ……げっ。いきなり何を言い出すんだこいつは。
「……な、何だよいきなり。そ、そんなことないだろ」
 俺がそう言うと、レンは大げさにため息をついた。
「お前さあ、その態度だけで『はい、俺は何か隠してます』ってバレてるよ?」
 うるさいっ!
「そもそも、昨日の時点で変だと思ったんだよ。お前、自分の家――ってか、初音さんの家か――に人呼びたがらないだろ。なのに今回に限ってはやけにしつこかったし。何がしたかったんだ」
「別に深い意図はねえよ」
 レンはもう一度俺をじーっと見て、またため息をついた。
「クオ。正直に全部喋らないと、この前の合宿でのこと、初音さんに話すぞ」
「レン、あのことは他の奴には言うなって言っただろ!」
「うん、だから、黙っててやるから、隠し事があるんならここで全部白状しろ」
 くそう……これは脅迫じゃないか。俺はどうしたらいいんだ? 例の件をミクに話されるのは絶対嫌だ。かといって、ミクと立てた「レンと巡音さんをくっつけよう大作戦」のことを話すのはレンの反応が怖い。それに、喋ったことがミクにバレたら、確実にミクが……。
 背筋を冷や汗がだらだらと流れる。なんで十七の若い身空でこんな思いしなくちゃならないんだ。……俺が一体何をしたって言うんだっ!
「で、クオ、どうするんだ?」
 ……俺は必死で、レンが納得してくれそうな言い訳を探した。
「えーっと……誰にも、特に、ミクと巡音さんには絶対に言うなよ?」
「わかったからとっとと喋れ」
「ミクと一緒にホラー映画を見たかったんだ」
「……なんだよそれ」
「最後まで聞いてくれよ。ミクはホラー映画が嫌いで、俺がホラーを鑑賞してる時は絶対よりつかない。そんなミクと一緒にホラーを見るにはどうしたらいいか!」
 こっちを見るレンの視線が俺に突き刺さる。きっと今「こいつはアホか」と思ってるに違いない。
「それで初音さんの予定を調べて、わざわざ巡音さんが来る日を選んで、俺を呼んだわけ?」
「だって一人だと逃げられるだろ。誰かいたら逃げづらいじゃないか」
 レンの視線がますます冷たい。
「うまくすれば、ミクがきゃーって叫んで俺に抱きついてくれるかもって、思ったんだよ……悪かったな」
「……良かったな、夢が叶って」
 そんな呆れた声で言うことないだろ、お前はっ!
「ホラーが嫌いという人にホラーを見せるのは、はっきり言って悪趣味だよ」
 わかってますよ。っていうか、予定なら巡音さんがお前に抱きつくはずだったのに。なんでこうなったんだ。あっちは全然怖がってなかったし。
「せめてもうちょっと大人しいのにできなかったのか?」
 大人しいホラーなんてホラーじゃねえ。
「ゾンビはホラーの王道だろ。お前だってゾンビ映画好きじゃねえか」
「ホラー苦手な人と一緒に見たいとは思わない」
 ぐっ。反論できない。
「もう二度としねえよ。さすがの俺も懲りた。たく、巡音さんぐらいミクも落ち着いててくれりゃいいのに……」
「あれは落ち着いてたんじゃなくて、初音さんが騒ぐから画面に集中できなかったんだと思う」
 さいですか。っていうか、お前、あの状況で巡音さんのことまで見てたのか。
「お前、巡音さんのことどう思う?」
「何だよ藪から棒に」
「いいから答えてくれ」
 もしレンがきっぱり「好みじゃない」って言ったら、それを口実にミクを止められるかも。
「クオは、巡音さんのことどれぐらい知ってる?」
 おい、質問したのは俺だぞ。
「あんまり知らん。ミクとは仲いいけど、俺はほとんど話したことないし」
「巡音さんの口ぶりだと、よく遊びに来てるみたいだったけど。それで全然話す機会ないわけ?」
 多少の話はしたらしい。
「だって俺あの子に用事ないし、たまに話しかけても黙り込んじゃって、結局はミクが代わりに話すし。ミクも何だか俺に冷たいし。で、お前は巡音さんのことどう思うわけ? まだ質問に答えてもらってないぞ」
「ごめんもう一つだけ教えてくれ。初音さんの方が、巡音さんの家に遊びに行くことは?」
「ねえよ」
 いつも遊びに来るのは巡音さんの方だ。
「で、お前いい加減に俺の方の質問にも答えろよ」
「何だったっけ?」
 おい。いくら温厚な俺でも怒るぞ。
「巡音さんのことどう思うのかって、さっきから何度も訊いてるだろ」
「お前は俺にそれ訊いてどうしたいわけ?」
「レン! 質問に質問で返すなよ!」
「だってお前の意図がわかんないし」
「ああもうっ!」
 基本的にはいい奴だけど、時々こういうよくわからない理屈使うんだよな。
「……お前の気持ちもわかんなくはないけど、そういうのはよくないと思うぞ」
「は?」
「じゃ、俺は帰るよ。あ、クオ。DVD」
 俺はDVDをレンに渡した。さーて、後はミクか。多分機嫌悪いだろうなあ……。つーかレン、お前結局肝心なこと返事してねえじゃねえか。

しがない文章書きです。よろしくお願いします。

作品へのコメント1

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    ご意見・感想

    クオがかわいそう・・・www
    「ピアニスト」見てみました。


    中学生の僕にはきついですね(リスカシーン)

    2011/07/30 23:57:24 From  苺ころね

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    メッセージのお返し

    納豆御飯さん、こんにちは。

    クオ、確かにちょっとかわいそうでしたね。
    ちなみに、レンが言っているクオの秘密は、クオが気にしているだけで、実際には大したことありません。

    えーと、「ピアニスト」見ちゃいましたか。ハネケ監督の作品って「鬱になる」「悪意に満ちてる」とよく言われるので、正直言うと、お薦めしたいタイプの作品ではないですね。だからオチのネタにしたんですが。

    2011/07/31 21:15:38 目白皐月

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