存在理由 (8)

投稿日:2009/05/17 23:38:22 | 文字数:2,490文字 | 閲覧数:106 | カテゴリ:小説

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【第1回】http://piapro.jp/content/lawysdu8zzj12byo

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第二章 昏き静寂(しじま)に奏でる円舞曲(ワルツ)

1.

朝食のテーブルを挟んで暫く私達は顔を見合わせていた。事実を受け止めるのに幾許(いくばく)かの時間が必要だった。
なんということだろうか。
私とマスターの思い出の場所は消えた。
そしてあの恰幅の良い作業ツナギの男性はこの世に居ない。
それが『死』だという情報は持っているが、『死』と言う概念を持たない私にはピンと来なかった。
マスターの表情はそれから終始冴えないものとなった。
午前中一杯、マスターはPCに向かって作業していたが、心が離れてしまっているかのように時折ふと窓外を見遣るのだった。

お昼を食べ終わった後、マスターがPDAを私に見せた。
『現場を見に行こうか?』
私にとってもあの場所は特別な場所だった。気にならないわけがない。もちろん私は頷いた。

食器を片付けて私はスーツに着替えた。黒いプリーツミニスカートにグレーのシャツ、そして黒のジャケットと同じく黒のサイハイソックスと言う出で立ちは、残暑厳しいこの季節には少々暑苦しいものかもしれないが、少なくともこれから赴く場所を考えたとき、故人への弔意は表すべきだろう。
マスターもやはり黒ずくめだった。

マスターと私はマンションを出た。
今日も天気が良い。気温は高いが、空を見上げればうろこ雲が見られ、蒼穹(そうきゅう)はどこまでも、どこまでも抜けるように高い。もうそこまで秋は来ているのだった。

マスターは大通りに出て、昨日とは反対側のステーションに並んだ。こちらのステーションはひと気がない。
こちらの路線は工業区へ向かっており、この時間に利用する乗客は少ないようだ。
やがてやって来たトラムにも乗客はなく、半ば貸し切り状態で目的のステーションに着いた。
そこは「ベイサイドアベニュー・ステーション」。街区と違い金属製のパイプやむき出しの鉄骨が高い塀の向こうに見える雑多な灰色の街並みが印象的だった。

音もなく黄色と黒の警戒色に彩られた作業車両が往き来しているが、その大部分は自律運行中のロボット車輌達だった。
何人かの作業服を着た人間も見られたが、今日は工業区になじまない服装の人間達が慌しく駆けて行く。
マスターが歩き始めると人間の姿は増え、マスターの行く手には人だかりが出来ていた。脚立を持ち出している者もあったが、人間達は一様にカメラを手にシャッターを切り続けている。その先にあるものは「立ち入り禁止」と書かれた黄色いテープと直立不動でこちらを睨(ね)めつけている水色の制服を身に纏った警官の姿だった。

嗅覚センサが微量の塩素系ガスを検出したが、特に生態系に影響を及ぼすほどの量ではない。恐らく大量の樹脂やゴム、化学製品が燃えて発生したものの残滓(ざんし)だろう。
ここからではよく見えないが、真っ黒に焦げた何かが散乱している様だった。黄色いテープの向こうでは消防隊員らしき男性と警官らが話している様子が見えた。

報道関係者の後ろをこの付近で働いているらしい作業員が不安そうな面持ちで通り過ぎてゆく。
マスターは静かに手を合わせ、黙祷を捧げた。
中には入れっこないのは判りきっていた筈だが、マスターはここに来ずにはいられなかったのだろう。
私も見よう見真似でマスターに倣って手を合わせた。
命を持たない私には『死を悼む』と言うメンタリティはないが、この時何故か理解できる気がした。
顔を上げたマスターの横顔からはマスターの心情を窺い知る事はできなかったが、マスターは気持ちの上で一区切りつけたようだった。
マスターは暫く現場を見つめていたが、やがてこちらをちらりと見遣って踵(きびす)を返した。私は今一度、焼け跡を振り返って記憶にとどめ、マスターの後を追った。

帰路、マスターは何かを考えているようだったが、ついにマスターは私を見ることなくマンションに帰り着いた。
マスターの胸の内を見せて欲しい、マスターの重荷を少しでも和らげたいと願うのは、ドロイドの私にとって出過ぎた真似でしょうか?
私は、最後までマスターのお力になれないのでしょうか?

時刻は夕刻と呼ぶには少々早く、陽は傾きながらも光を振り撒いて地面に色濃い影を落としていた。レンガ色のマンションのエントランスの奥は鮮烈なコントラストの中、暗黒へと続く洞穴(ほこら)のようにぽかりと口を開けているのだった。

エントランスホールに足を踏み入れると一瞬にして視界が奪われた。
輝くような陽光の下から屋内に入ってアイカメラがストップ(絞り)を調節する。
そんな中、突然私たちを呼び止める声がした。
「雑賀さん、ですか?」
声はまるでホールの影が発したかのように不気味に響いた。私は調整を終えたアイカメラを左右にパンニングして声の出所を探す。
コツリ、という硬質な音が前方から届いた。
漸(ようや)く私は前方から歩み来る二つの影を認めた。
私はその影にどこか不吉なものを感じて、マスターの腕にしがみついていた。

一つの影はマスターより遥かに大きい。
対象物がないから誤差はあろうが、190センチ±2センチとセンサは告げている。
もう一つの影は私とほぼ変わらない158センチ±2センチ。だが、私より遥かに貫禄はある。
仄暗(ほのぐら)いホールの奥から影よりなお昏い双影が跫然(きょうぜん)と靴音を響かせてやって来る。
背の高い男性は齢三十代前半といったところだろうか。くたびれスーツを肩にかけ、肘まで捲り上げたシャツの袖からは細いが鋼のような腕がズボンのポケットへと伸びている。
無精髭とボサボサの髪を見るまでもなく外観に頓着しない体であるらしいが、その落ち窪んだ眼窩(がんか)の奥で炯炯(けいけい)と鋭い光を放つ双眸(そうぼう)は獣のそれであった。
今一人の男性は四十代後半くらいだろうか。こちらは大男と対照的に律儀にジャケットを着込み、額の汗をハンカチでぬぐっている。
柔和な表情と落ち着いた物腰ではあったが、何故か私は小男の方がむしろ計り知れない瞳の色をしている気がした。

DTMと言ったら初代SC-55をMSXにつないで遊んでいた程度ですが、みくみくにされてカムバック。
で……DAWってナンデツカ?(←既に手遅れ)
りわいや? ぶいえすてぃーあい??

……サーセン、イチから勉強しなおします。il||li _| ̄|○ il||li


本職はしがないデザイナー。
でも ♪自分で描くのはダメですよ?

遅筆ゆえコラボや依頼等はお受けしてませんでしたが、こんな絵でものんびり待つよ~という奇特な方がいらっしゃるならお描きします。

また応募作品など一部特殊な投稿作品を除き、基本的に改変は自由です。(改変された場合記名は不要です)
改変のご要望もお伺いしますのでお気軽にメッセージをいただければと思います。(08年3/8追記)


作品のご利用は基本的に自由ですが、ピアプロ利用規約をご理解いただけない方、利用規約を遵守できない方のご利用は固くお断りいたします。(08年5/20追記)


クルマや単車がメーンコンテンツですがHPはこちら
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