ハートアリス
今回のアリスは、なかなか面白い物だった。
だけど、やっぱり物足りない。もう少し行動力があるほうがいいかもしれないな。今までは一人ずつだったけど、今度は 二人同時にこちらの世界に引き込んでみようかな。
そう、夢が思案しているうち、また別の人間たちが暗闇の中に落ちてきた。
「いったぁ…。何なの、もう!何があったの…あれ、レン?どこ?」
「リン、よけて。重い、重い」
「何だとぉ!コレでもやせてるんだからね!」
「わかった、わかったからよけてぇ!」
「わかればよろしい」
そういって大きなリボンのリンが、下敷きになったレンの上からよけ、レンの頭をぺしぺしと叩く。むくっと起き上がるなり、リンのほうを見て上目遣いで少し涙目になってみせると、レンは少し不安そうにした。
「ここ…どこだろう?」
「真っ暗だね…」
「僕ら、茶色い絵本を読んでいたんだよね。なのに、こんな場所に…」
痛そうに腰をさすりながら立ち上がり、レンは辺りを見回した。それを見て、リンも少し怖がるようにきょろきょろとあたりを見る。
暗闇の向こうからすっと現れた人影に、レンはリンを庇うように前に出、リンもレンを守ろうとしてか、ぎゅっと手を握る。
人影はゆっくりとこちらに歩いてきて、リンとレンの近くまで来るとぴたりと止まり、また、今までのアリスたちと同じように言う。
「ここは夢の国。貴方方の思い通りになります」
二人は顔を見合わせ、少しいたずらっぽく笑いあうと、人影のほうを見て、同じタイミングでいった。
「冒険がしたいっ!」
人影は満足げに頷き、マントを広げる。
マントの向こうからこぼれだす光にリンとレンが目を閉じ、それから少しして目を開いた場所は、どこかの町の中だった。そこそこ繁栄しているらしいレンガ造りの街で、すぐそこには森へと通じる道がある。
二人が呆然としていると、人影は言った。
「…おかしいな。他のアリスたちには見えたのに…」
不思議そうにリンが聞く。
「どうしたの?」
「いえね、あなた方に何か一つ、プレゼントをして差し上げようとしたのですが、何が欲しいのかわからなくて」
「そんなもの、わからなくて当然だよ。ね、リン?」
「そうそう。ねぇ、レン?」
二人がそう言って微笑みあうのを見ていた人影は、不思議そうに首をかしげてリンとレンを見ていた。
「どうしてです?」
二人はもう一度いたずらっぽく笑い合うと、人影に向かってにっと小さな八重歯が見えるように歯を見せるように笑った。
「リンがいれば」
「レンがいれば」
そこまで声を合わせていった二人はもう一度顔を見合わせ、それから、
「二人でいれば、何も怖くないからっ!」
「…それは困りますなぁ。…そうだ、コレを差し上げましょう。お城からの招待状です」
そういって人影が取り出したのは、小さな封筒。それこそキャッシュカードが一枚か二枚、はいるかどうかの真っ白な封筒である。
それをレンが受け取り、封筒の口を止めていた手鏡のシールをはがして中にはいっていたものを出すと、不思議な黄色いハートのエース。
「トランプ?エースだよ、これ?」
「2がよかったね」
「あはは、そうかもね」
そういって二人が顔を上げると、もうそこに人影はなくなっていた。
それからもう一度森の方をみると、紅い扉があって、スペードが描かれていた。二人でそのドアノブを回し、ドアの向こうへと出た。
そこにあった古めかしい監獄の中に、一人の女性が立っていた。見覚えのある女性。
「…メイコ先輩?」
茶髪のショートボブと言えるかどうかわからないほどのショートヘアーは、たくさんの木の葉が落ちて心なしつやを失っていた。リンの声にこちらを向いたメイコの目には光がなく、血のように真っ赤な瞳に乾いた涙を持って。
「リ…ン…?そこにいるのは、リンなの?」
「はい!そうです。」
「…リン、ここを離れなさい」
「どうしてですか?」
「危ないのよ!私が貴方を殺してしまうかもしれない!だから、どこかへ消えてよ!」
足元に落ちた剣に手を置き、メイコはリンに背を向けて何かをこらえるように肩を震わせ、怒鳴った。
その声に驚いて、リンはレンの手を引き、走り出した。
その先に見えてきたのは青い扉。ダイヤのマークが描かれている。ドアノブをまわすと、その先にあるのは薔薇園だった。色とりどりの薔薇が咲き乱れ、大きさや形・香りまでもがそれぞれに違いが見られ、美しい薔薇園だった。
そういえば、青い薔薇や黒い薔薇なんていうのもあったな、などとレンが思いながら歩いていると、塀の向こうからキレイな歌が響いてきた。こちらも聞き覚えのある音だ。
「塀の向こうからだね。行ってみようか」
「でも、塀ばっかりで、門が見つからないよ」
「待って」
そういって、リンが塀の上に飛び乗り、レンに向けて細く白い手を差し出すと、にっこりと微笑んだ。その手につかまり、レンが塀の上に引き上げられると、二人で塀の向こう側へ降り立った。
向こう側にはステージがあって、そちら側から歌が聞こえてくる。人だかりができていて、その人々もその音楽を聴いているようだった。しかし、ステージには誰もおらず、あるのは血のように真っ赤な薔薇が地を這うように広がっているだけだった。その薔薇はよく見ると人の形をしていて、どうも気味の悪いものだ。
「…リン、何だか、気持ちが悪いよ」
「…そうだね。戻る?」
「…そうしよう」
そう言って二人が塀の内側に戻ると、そこには紅茶のセットが置かれたテーブルと椅子が2脚。それを見つけたリンは早速そこにすわり、紅茶を口に運ぶ。おろおろしながらもティーカップに添えられたメモに『お好きに召し上がりください』と書かれているのを見て、レンも紅茶に手を伸ばす。
砂糖が多くはいっているのか、とても甘い。
それから添えられていたクッキーを食べると、こちらは少し苦い。まるで味がでたらめだ。
「行こうか?」
「そうだね。次のドアは、何かなぁ?」
「わからないけど、このあたりにあるとおもうよ。探してみよう」
「本当に冒険だね!」
そういう二人は楽しそうに走り出した。まるで子犬のようである。パタパタと尻尾を振っているのだろう。しばらくいくと、今度は緑色のドアが見えてきて、こんどはくろーバーのマークが描かれたドアだった。今度も二人でドアノブを回した。その先にあったのは、巨大な城。
そこに立っている男に招待状を見せるよういわれ、トランプを見せると、城内へと通された。
『凄い。行動力も、好奇心も、体力も知力も完璧だ。これこそ、私の求めていたアリスだ…。しかし、アリスは二人といらない』
通された部屋にいたのは、美しいというよりは可愛らしいという印象を受ける、ついテールの少女だった。片目は美しく透き通ったグリーンであったが、もう片方の目は腐ってしまったかのように歪な色をしていた。
「…貴方が、女王様?」
「そう。貴方達が、四人目のアリスね。いいわ、とても若々しい」
「…女王様、その目、どうされたんですか?」
「なんでもないのよ。ちょっと、こちらへきてくれるかしら」
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ご意見・ご感想
リオン
ご意見・ご感想
こんばんは、みずさん!
夢は気まぐれでいいんです。
諦めというか、次のおもちゃを探すような感覚だと思いますね。
そこですよね、問題は。どちらかが抜けると、完全なアリスじゃなくなってしまうんでしょうね。
二人はもういやってくらい一緒にいればいいと思いますよ(笑)
わ、わかりますかっ!?
どっちかにしろ、とはどうもジョークが通じませんね…。ちょっと…ねえ?(何
では、今日の投稿は少し早いと思いますが、なにとぞ…。
2009/11/01 17:50:52
リオン
ご意見・ご感想
こんばんは♪
月影ルンナさんですね、覚えました!(?)
ぜ、全部読んだんですか?たしか、投稿数はコレまで130は越えてるはずなんですけど…。
凄いやる気ですよ!
面白いですか!ありがとうございます!
気に入っていてだけて光栄です♪
あ、ルンナさんも中学生なのですか!ちょっとルンナさんの小説ものぞいてみましたが、
面白かったですよ!私の小説で出てくるキャラクターとはまた違う性格とか口調とか!
凄いだなんて、そんなそんな…。
勝手じゃないですよ、いいんですよ♪
続き、頑張りますね!コメント、ありがとうございました!
2009/11/01 17:45:33