甘いなんて日々の想い出を交ぜながら、かき消すように、そっと苦い黒に砂糖を溶かしていく

ミルクとコーヒーが混ざり合うように綺麗になれたらどれほどよかったか


「…苦いのは嫌いです」

「牛乳はもっと嫌いです」

嫌悪感の塊のような珈琲より苦い言葉を吐いて

君は苦笑いしながら「そっか」って言って私に砂糖を差し出した

きっと、君も苦いのは苦手だっただろうに



『こないだの子だよね』

『いつもここで、イヤホンつけて勉強してるよね』

『これ、砂糖入れるよね』


…誰だっけ。

いや、昨日の人だって。

あ、コーヒー、そうだ、昨日……

「す、すいませんでした…!」


『…何が?』

「あの、昨日、初対面なのに、、」

『ああ、大丈夫だよ。カフェテリアのおばさんに間違えて砂糖渡されちゃってたまたま持ってただけだし』

「な、ならよかったです…えっと、、、」

『俺は高等部2年神威 学。君は?』

「わ、私は高等部1年の巡音といいます…」

『ふーん、ルカちゃんかー…!』

「……!?!?」

『あ、ゴメン、名札』

『瑠華、ってすっごい綺麗な名前じゃん』



…今までそんなこと言われたことないのに。

君が嬉しそうに話すから。



「あ、ありがとうございます…」

『タメでいいよwww』

「じゃあ学さんで」

『んー、なんか堅い』

「うーん…がっくんとか?」

『それいいね』


まだピンクにうもれたままの4月に

二人、少し笑った、それだけのことがなんとなくいいなって思えて。




『ルカー、体育祭何団?』

「えーっと、確か桃団」

『やった、俺と一緒じゃん!』

「えっマジで…運動オンチを見るな」

『じゃあ思いっきり応援しちゃおうかな』

雨ばかり降る季節も

君の笑顔があれば退屈なことなんてなくて

「…逆さてるてる」

『ん?』

「逆さてるてる吊るすし」

『ガチ勢かよ』

「…あんたも手伝ってよ」

『えー俺晴れ男なんだよね』

…こいつ。

「…なら私が雨女になってやるし」

『ルカに雨は似合わないよ』

ぶにゅー、って掴まれた頬

先輩だからって生意気な。

「やめへくらはい」

『長すぎる雨はね、時に人の心を変えてしまうんだよ』

「体育祭のほうが退屈です」

『…そうかな。』

少しだけ憂いを帯びた君の声に少しの不思議を感じて。


「…コーヒーでも飲みましょう」

そんな言葉でなんとなく変な雰囲気を消したかった。








『あっついな…』

「がっくんがへばってる!珍しい」

『俺は暑さに弱いんだよ…ったく』

「体育祭のシーズンとうってかわって、太陽が元気だからねw」

…最近がっくんとあんまり合わない。

放課後のカフェテリアの窓際、そんな日常に少し隙が出来て。

「最近来ないよね、どうしたの?」

『あー、先生に放課後パシられんの、最近。俺化学係なんだけど最近実験が多いからさ、もう準備でしょっちゅう……』

「そっかー…2年になったら化学係はパスしよw」

『その前にお前は危なっかしくて先生に拒否されるだろww』

…ひきつってる。

君の顔、少し。

でも、君がそう言うならそうなのかな、って馬鹿正直な私は


「…なんか意外だなぁ」

『何が?』

「がっくん、文系じゃなかったっけ?」

『ああ、化学基礎は全員受けるんだよ。』

「そうだっけ」


違う気がしたけどなぁ。


まあ、いっか。


『そういえばこないださ、ハゲの授業で盗撮したやつがいてさ……』



カフェテリアのコーヒーの香りが少し、濃く鼻についた













「あっ、急がなきゃ」

早くしないと夏課題のレポートが締め切ってしまう

生物の先生は時間に厳しい。

しかもすぐに帰ってしまうから、チャンスなんてあったもんじゃない

「あれ……?」

近くから音が聞こえる

窓越して見えるのは、音の正体



(…がっくん?)


紫色の髪が揺れる

彼の左利きの手が、ギターを操る




…そっか、先輩だもんね。


君だって、そんなに暇じゃない。



本当は思ったより、遠いじゃん。





(知らない人みたい…)


彼のあんなに楽しそうな顔は知らないし、掻き鳴らすギターの音もなんだかまるで別人に思えて


「…まあ、それがどうしたって話なんだけどね」


相も変わらず暑いままの季節のはずなのに、無意識になぞった肌が冷たくて






…そこで、途絶えた。


『あれ、ルカ?』

「あっがっくん、久しぶり」

『俺実はさー、転校しなきゃいけなくて』

「……え?」

『いや、いろいろあってな…文化祭の後に、上京することになったんだ』

「上京………!?」

『あ、親の仕事の都合でねwww』

「そっか」

『見てこれ、実はずっと前からやってたんだけど今年も文化祭でやるんだ、バンド』

「へー…なんかかっこいいね」

『だろ?使うのは年に一度くらいなのにw』

…うそつけ。

年に一度でそんな楽しそうな音、出ないでしょ。




「私、生物の先生にレポート出さなきゃだから…」

『おっそうか、じゃなー』



…なんだよ。


平然としやがって。

急に、転校だなんて、聞いてないし。


来たのは”いつもの”カフェテリア

いつものじゃなくなるなんて、わかってる


…馬鹿。


私だってわかっている。

どんなに仲がよかった人も、結局は何らかの事情で疎遠になってしまうと。


中学のときの友達、小学校のときの幼馴染



…連絡なんて、取れるはずなくて。


今どうしてるのだろうなんて思わないように、そっと自分からアドレスを消してしまうのだ。

その人がいたこと全てが急に悲しくて。


(消すアドレスさえもないけれど)



寒すぎる冷えた部屋に、いつものコーヒー

…に砂糖。


相変わらずうまく溶けてくれなくて、下に溜まってしまう




味は覚えてないけど、いつもより苦かった




















「はぁ」

一人、君がいない学校で冬を越して。

だんだんと気温が下がるように、冷たくなるのも同じだった。

…文化祭なんて覚えてない。

最後、笑顔のあいつにカフェテリアに呼び出されたけれど、結局行ってない

結局勉強に集中できる場所がここしかなくて、今でもここは私にとって”いつもの”場所だ





…いなくなって気付いた。


私はきっと君が、自分が思った以上に好きだったんだ。


鈍感なまま進んできた私は、それに気づくことなくあの日まで



…あの日、ここにきていたら。

何か変わっただろうか。

何もなかったかな。


どちらにしろ過ぎた時間を思い返したって、変わらないこと




それなのに……


「また君がそこにいるかな、なんて」



本当はこんなこと言っていいのはもっと長い時間を過ごした、互いに想い合っている2つだけなのだろう


もしかしたら、いや、きっと、私だけだったに違いない


…だとしたら、こんなこと思ってはいけない気がして




「短い間でしたね、」


「コーヒー、美味しかったです」



…今は砂糖を入れても苦いけれど。



ふと外を見ると、梅の花が咲いていた

桜までもうすぐだ






…元気にしてるかな。



また会えたら、思いっきり馬鹿にしてやろう。




君の日常を思いっきり邪魔しよう。


そして…君のいろんな姿を知りに行こう。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【がくルカ】Recollection of the coffee

ちずさんいかないでええええええええええええええ(子供か
みなさん偉いですね…私なんかここ入ったのちょうど一年前くらいのバリバリ受験期でした←

最後のほうルカさんというか完全に私ですね。相手のこと考えすぎて自分から連絡とれなくて疎遠になります。某つぶやき共有サイトくらいしか私の場合あてになりません←

寂しいですが、一年後?2年後?

ちゃんと待ってるんで、志望校に向けて頑張ってください!!

閲覧数:235

投稿日:2014/12/07 11:38:28

文字数:3,134文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • ゆるりー

    ゆるりー

    その他

    ルカさああああああああああああん!!
    切ないです(´ ; ω ; `)


    一応…
    【古いアドレス帳(15)】
    *ボロボロのアドレス帳
    *もう連絡がとれない人のメアドが書いてあったり

    2014/12/07 14:00:15

    • ayumin

      ayumin

      最近聞いた切ない系のボカロ曲を流しながら書いてましたwww

      かいてるうちに他のみなさんがめっちゃ切ないのを上げてて最後の切なレベルが急上昇しました←

      古いアドレス帳…相手のメアド変わらないうちに連絡をとるべきですねwwありがとうございます!

      2014/12/07 16:47:50

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