「いらっしゃいませ」

メイド服を着た、すらりとした女性が、はずむ声で出迎えてくれた。
「あ!」とレン君は声を上げた。
「あら」と女性もまばたきをする。

新しくオープンした「カフェ・つんでれ」。
レンくんは、お得意さまをまわる道すがら、ちょっとこの店に寄ってみた。

店にいたウエイトレス…というか、メイドさんは、以前にあったことがある人だったのだ。

「あ、そうか。りりィさんのお店で、前にお会いしましたね」
レンくんは、思い出して言った。
「あら、そうでしたね。どうぞよろしく。このお店で働くことになった、綾名咲弥です」
「あ、どうも、こちらこそよろしくお願いします。加賀美 蓮です」

2人のやり取りを見て、カウンターの奥でほほえむ男の人がいた。

「えっ…と。じゃ、コーヒーください」
レンくんは、カウンターではなくテーブルの椅子に座って、咲弥さんに注文した。


●昼間は雑貨カフェ、夜は雑貨バーに

彼は、お店を見渡した。何となくのんびりして、居心地のいい感じだ。
店内の一角には、ノルウェーや北欧の手作りの、趣味のいい雑貨が並べられている。

「りりィさんのお知り合いですか?」
レンくんがコーヒーを飲んでいると、さっきカウンターにいた男の人がそばにやってきた。
コットンのシャツにラフなパンツをはいて、ちょと地味な感じの人だ。
「いちおう、この店を任されてます、吉育三です。ようこそいらっしゃいました」
ボソボソ、としゃべるが、暖かそうで好感が持てる人だ。

「いいお店ですね。あれは、テトさんの仕入れた雑貨ですね?」
レンくんは、壁の方を指さす。
「そうなんです。この店のオーナーはテトさんで、昼間は、雑貨店兼カフェです」

お店は、開店してまだ間もないが、けっこうお客さんが入ってくる。
てきぱきと仕事をこなすメイドの咲弥さんには、早くも若い男の人に人気が出ているようだ。

「昼間はカフェ…。じゃ、夜はどうなるんですか」
「夜はね、アルコールを扱います。バーのスタイルになるんですよ」
吉さんは、にこやかにいった。

「アルコールですか。じゃ、ボクは来れないな。でも、こっそり来ちゃおうかな」
レンくんは、いたずらっぽく言った。
「おやおや、ダメですよ」
吉さんはにっこりと笑って言う。


●やっぱり夜に来てみよう!

「あれえ、いつも通りの吉さんじゃん。」
店に入ってきたのは、2人連れの女の子だ。
たこるかちゃんと、ぱみゅちゃんだった。

「あ、いらっしゃいませ」
すました顔で吉さんが言う。

「そうか、昼間は普通のカフェなんだ、ここ」
たこるかちゃんは、店内を見渡して言う。

「おとといの夜来たときは、吉さん、見違えちゃたものね」
彼女は、ぱみゅちゃんと顔を見合わせてうなずく。
「あれ? そうですか」
吉さんは頭を掻く。

「黒いベストに白シャツ、黒いエプロンに黒ネクタイ。バーテンダーの格好をすると、おぬし、変身するんだな」
たこるかちゃんが、目を丸くして言う。
「最初、見たときは、どこのイケメンかと思ったぞ。でも昼はやっぱ、地味なオトコだなあ」
ずけずけ言うたこるかちゃんに、ぱみゅちゃんは笑った。

レンくんは思った。
「へえ、このお兄さんのバーテンダー姿、みてみたいなあ。やっぱ、夜に来なくちゃな。ボク未成年だけど」(⌒o⌒)b

ライセンス

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玩具屋カイくんの販売日誌(147) 「カフェ・つんでれ」のお兄さん

新しいお店のスタイルは昼はカフェ、夜はバー。どんなお客が来るのかな?

閲覧数:86

投稿日:2012/04/01 13:43:45

文字数:1,390文字

カテゴリ:小説

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