憧れと、焦燥、眠気と、拒絶。
記録されていた夢。
誰もいないはずの病棟に、
白いシーツの上で眠れない貴方が笑っていた。



死の匂いがした、彼女の白い肌にキスをして、
さようならの代わりに、歌を歌った。



「私が愛した人はみんな死んでいく。

 あの日から、呪いに罹ったようで、」



彼女が泣きながら私に告げたその嘘みたいな話が、
嘘じゃないと僕は身をもって知った。



君は僕を愛した。



彼女が眠りについた途端、彼女を包む水彩が広がって、やがて僕を包み込んだ。
とても優しい世界に吸い込まれたようで、僕は幸せだった。


きっと彼女が僕を呑みこんでしまったのだと、なんとなく理解できた。




「君はまた、寂しそうな顔をして、塞ぎこんでしまうだろうか」





「君が愛した人は死んでなんかいない。

君の中で、静かに、幸せを甘受して、溺れているんだよ」



そう、手紙に書き遺した。



彼女がこの手紙を手に取って、救われることを願いながら、
僕は静かに筆を下した。


きっともうじき、溶かされてしまう。


そう感じながら、ただ、淡い水彩に溺れた。

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彼女の水槽

なんとなく……
歌詞じゃないよ……
小説でもないよ……
意味なんてないよ……

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投稿日:2017/05/17 20:31:08

文字数:492文字

カテゴリ:その他

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