【中世風小説】Papillon 11

投稿日:2010/02/10 15:23:59 | 文字数:2,423文字 | 閲覧数:188 | カテゴリ:小説

ライセンス:

この展開のために、ルカが長女でメイコが次女だったんです。

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

流血はありませんが、人が死にますので、苦手な方はご注意ください。

-----

「せめてもう少しだけ、ここがあんたたちにとって温かな場所であり続けられれば……」

 眠りにおちる少し前、メイコ姉はあたしを抱きしめて、そう呟いた。そのときメイコ姉がどんな表情をしていたのか、あたしには見えなかった。

-----

「……綺麗だね」

 リンは俺に笑いかけた。宮廷の庭園、噴水がきらきらと輝いている。昔と同じ光景の中に、彼女が立っている。切ない微笑み。

 これが最後だという覚悟をして、二人は今、ここにいる。決して戻れない日々に、ほんの少しの間だけ、戻れるならば。
 ……でも、ここに来たことを、俺は後悔していた。絶対に泣くもんか、と思っているのに、涙がこみあげそうになる。

 リンは、どんな思いでここにいるんだろう。
 最後の思い出づくり、なんて、馬鹿げたこと。
 最後にするつもりが、俺にはあるけれど、彼女にもあるのかどうか。

「昔は、こんなに綺麗だなんて思ってなかった」

 リンは、ふと遠い目をした。
 駆けていく幻影を、彼女も追っているのだろうか。
 あの日々には戻れない、今にだって戻れなくなって、いつか全部思い出になる。大切なものがすべて過去になって、それでも生きる意味とは何だろう。
 分からない。
 分からないけれど、ただ彼女には生きていてほしい。世界が死に絶えたとしても、すべての希望がなくなったとしても、彼女だけは。

「ねぇ……」

 リンの後ろ姿を、遠く感じる。それが嫌で手を伸ばす。右手だった。何の意味もない手を、届いたところで何も出来ない手を、俺はただ引っ込めるだけ。

「レンは、これを感じられなくなってもいいの……?」

 空を駆ける風。ざわめく緑。
 ただただ、綺麗だと思う。
 そして、その中に立つ彼女が、何より綺麗だと思う。
 でも、そこに自分がいることで、世界のすべてがゆがんでしまうのかもしれない。それでは意味がない。

「ねぇ、あたし、あんたの思ってることは分かってるつもりだよ。あんたも多分、あたしの思ってること、分かってるよね?」

 ずっと一緒だった。繋いだ手を離す日が来るとは思わずにいた。

「なのになんで……なんで、同じ未来を望んでくれないの……?」

 彼女は今、泣いているのだろうか。俺に背を向けて、たった一人で。でも、俺が抱きしめたところで、どうなるのだろう。

「リンが望んでいる未来は、俺がいる未来?」

「決まってるでしょ」

「その未来に、リンはいる?」

 リンは、黙り込んだ。長い沈黙の後に、振り返って、小さく答える。

「分かんない」

「だったら、分かるだろ。俺がその未来を望まない理由くらい」

「でも!」

 リンは叫んだ。涙が散った。噴水の水しぶきの中に溶け込んでも、どれが彼女の涙なのか分かる気がした。
 何故彼女が泣いているのか。誰が彼女を泣かせたのか。彼女の温かな思いが、冷たく突き刺さって、息が苦しくなる。

「でもあんただって同じでしょう! あんたの描いてる未来にだって、あんたはいないんでしょう!」

 今、なんでここにいるのか。もう、来られなくなるから。それは、どうしてなのか。……もう、生きることを諦めているから。

 でも、俺だって、もう少し、生きていたい。本当は、ずっと生きていたい。

「それじゃ意味ないよ……」

 そんな未来、あたしにとって、何の意味もないんだよ。

「でも、俺にとっては意味があるんだよ……」

 俺の呟きに、リンは激昂し、しかし振り上げた手を振り下ろすことはなく、走って消えていった。

「俺だって、本当は、リンが他の誰かと生きるところ想像するくらいなら、一緒に消えてしまいたいと思うよ……」

 でも、それが出来るくらい器用じゃないんだ。

-----

「嘘でしょ……」

 あたしは、現実を受け入れることすらできなかった。涙も出なかった。綺麗な、白い顔。眠っているだけにしか見えない。

「なんで、」

 なんでメイコ姉が。権力争いとは、一番関係なかったのに。ルカ姉ともあたしたちとも母親が違うのに。中立の立場だって、皆がそう思ってたのに。
 なんで。

 呆然とするあたし。
 どこかからすすり泣きが聞こえてきた。
 泣いているミク姉と、そんなミク姉を抱きしめているカイト。
 カイトもルカ姉も、痛々しげに目をそらして、メイコ姉のことは見ようとしていない。

 ついさっきまで、一緒に部屋にいたはずで。庭から戻ってきたら。こんなの。

「なぁ、ルカ姉」

 隣から、静かな声がした。ぞっとするほど、抑揚のない声だった。いつから、弟はそんな声を出すようになったのだろう。

 レンは、まっすぐにルカ姉を見て、恐いほどの顔で、訊ねた。

「これ、誰のだ?」

 レンが指差したのは、メイコ姉の卓の上においてある、食べかけの皿。

「レン」

 ミク姉が止めようとしたけれど、レンはそれを気にも留めずに、言い放つ。

「――俺のだろ」

 あたしは息を呑む。レンの視線の先、ルカ姉は何も言わなかった。
 無言の肯定。
 ミク姉が、泣きはらした目をそむける。

 レンは、メイコ姉の方を見もせずに、そのまま部屋を出ていった。

「こんなことって……」

 あたしは、メイコ姉の髪を撫で、まだ温かい身体を抱きしめて、泣きすがった。

 温かい記憶。
 それはすべて過去になった。
 レンがいないのなら、この場所すら消えてしまえばいいと思った。ルカ姉もミク姉も、カイトも……メイコ姉も、消えてしまえばいいと思った。レンの代わりに、全部全部いなくなってしまえばいいと思った。

 レンは、そんなこと望んでいなかったのに。
 あたしが、あたしだけが。

 あたしの泣き声だけが、許しを請う声だけが、その部屋に響いた。

とりあえずいろんなことに手を出しまくってる鏡音廃です。巡音も買ったようです。

マイリス→http://www.nicovideo.jp/mylist/18736642

オリジナル曲の二次創作・派生作品等は、ボカロやPIAPROの規約の範囲内でご自由にどうぞー。

小説の更新が滞ってますが、プロットはちゃんと出来てますよ><

http://hozue.blog-fps.com/

http://sns.cv02.net/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=2229
http://v-nyappon.net/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=12234

-----

2010/2/17 追記
HNを秋穂(あきほ)から穂末(ほずえ)に変更しました!

2010/7/18 追記
ニコ公開三曲目となる「水鏡プリテンス」で、P名を頂いてしまいました(ありがとうございますっ)。

-----

一応、お仕事やコラボのことに関して書いておきますね。以下の文章は、状況によってコロコロ変わります。

現在、曲・絵の新規依頼は受け付けておりません。交流のある方(複数回のメッセージ交換が目安)からの依頼ならば検討しますのでご一報お願いします。
作詞ならば依頼を受け付けられますが、依頼理由はきちんとお書きください。

一つの作品を仕上げるまで根気強く手伝ってくださる(ここ重要)絵師さん、動画師さんは常に募集しています。
また、作品ごとにイラスト募集を(突発的・〆切あり)することがあります。

コラボはお互いに本気じゃないと自然消滅するだけですので、やるなら本気でやりましょう。一報したうえでの延期・降板は受け付けますので。

もっと見る

作品へのコメント0

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン

オススメ作品10/26

もっと見る

▲TOP