※警告
 当小説は悪ノPの「悪ノ娘」、連作「悪ノ召使」からインスピレーションを受け書き起こした勝手な小説です。原作者様である悪ノPには全く関係ありません。
 また、脳内レンリン萌で出来ている作者の勝手な都合により、一部歌詞と解釈が捻じ曲がっているであろう部分があります。っていうかレンリンにするために捻じ曲げた感が否めません・・・。orz
 それでも許せると言う方のみ御読みください。尚、原作者様から苦情を受けた場合、この小説は速やかに撤退いたします。
 素敵な原曲
 【悪ノ娘】http://piapro.jp/a/content/?id=sjgxgstfm2fg2is4
 【悪ノ召使】http://piapro.jp/a/content/?id=ktapoh00jbyf60v3


 
 
 
 
 
 
 「いやぁ!そんなの絶対だめ!」
 
 王女の仮面がはがれたリンはひたすらに泣きじゃくる。もうそこには健気にこの大国を治める齢14歳の幼き王女の面影は欠片もなかった。普段は左右にずらりと人が立ち並ぶ御膳の間には、俺とリン以外誰もない。皆居なくなった。ある者は死に、あるものは寝返り、あるものは逃亡し。
 幼き頃から共に成長し、共に生きてきた今となってはたった一人の身内。大切な姉弟。先に生まれたがために、重荷を背負わなければならなかった細い方が震えていた。あぁ、なんて可愛そうな。

 「大臣とも話をして決めました。これは決定です。さぁ、王女様服をお脱ぎください。もう時間がありません」
 「いや!そんなのいや!レンが身代わりになるって言うの!?そんなの許さない!大臣を呼びなさい!早く!」
 「なりません。大臣達は今王女様を逃がすための準備に翻弄されています。さぁ、お早く」
 「いやったらいやぁ!」
 
 ぱんっと乾いた音がしたあと、少しだけ時をまって頬がひりひりと痛みを伴った。昔、父上や母上がまだ生きていた時にはよくケンカをしてこんな怪我もよくした。彼女が王女になってからは久しく忘れていた痛みだ。
 叩いた本人はそのキレイな瞳を丸くして自分の右手をわなわなと震わせていた。
 レンはゆるりと叩かれた頬をなでてリンを見つめる。視線があうと、両手で顔を覆いながらリンはその場に泣き崩れるようにしゃがみこんだ。いや、泣き崩れたのだろう。
 母の死。父の死。大臣達の裏切り。戦争。そして挙句の果ての革命。
 今まで泣かずにいられたのが不思議なくらいだ。これほどうらやんだ事もない。何故彼女が「姉」で、俺は「弟」だったのか。何故、その辛さを分け与えてくれなかったのか。
 
 「さ・・・王女様」
 「やだぁ・・ひっく・レンが死んっじゃうなんてっ・・・やなのぉ・・・」
 「王女様が起した戦争で私の命よりももっと尊い、多くの命がなくなりました」 
 「それでもいやぁっ・・・うっうっ、やなのぉ」
 
 うらまない事などあっただろうか。彼女のせいで己の身分は召使へと降格され、我侭を通しそれを許す大臣達によってボロボロになっていく我が国を一人見つめる日々。
 声をかけることさえもままならない距離に歯軋りをし、ようやく見つけ出した憩いの人は戦火にのまれ行方知らず。運命を狂わされた哀れな弟よ。大臣達の陰口の相手はいつだって俺だった。
 それももう直ぐ終わる。城下から聞こえる地震のような怒声、うめき声。革命を叫ぶ市民。父上、申し訳ありません。私は国を守れそうにありません。国よりも、大切なものをまもりたいのです。
 
 「ねぇ・・・リン、覚えてる?」
 「レン・・・?」
 
 こうやって、話しかけるなんて何年ぶりだろうか。普段は決して許されない、親しげな呼び方で俺はリンを呼ぶ。知っているんだ。本当は。こんなに憎くて、愛しい、愛しい俺の姉弟。
 
 「昔約束したよね、俺は男の子だから将来リンを守ってあげるって」
 「っやぁ!そんな約束リンしらないもん。知らない知らない!」
 「リン、口調が元に戻ってるよ」
 
 膝を折って目線を合わせるように屈み込めば、泣きじゃくってひどい顔のリンと目があった。王女様だなんて信じられない。これがこの一国を支配する主の顔だなんて、誰が信じるだろう。たった14歳の、まだ恋もしらない少女の顔。
 
 「俺、知ってるんだ」
 
 「リンが「緑の娘の国」を滅ぼした理由」
 「俺があの娘の事好きだ、って言ったからだろう」
 「本当はあの青い男の事が好きだから、なんて理由じゃないんだろう」
 「お前の我侭は聞いたんだ。だから、リン」
 「今度は、俺の番。ね、お願い。生きて」
 
 そういえば絶対いやだとリンはブルブルと頭を横に振る。恐怖に震える手で薄汚れた召使の服をぎゅっと握る。あぁ、本当に愚かで。
 
 「リン、好きだ。好きだ。好きだ。だから生きて。お願い」
 
 これは罪だ。人を殺し、人を殺され、愛するものを奪われ、愛するものを奪い。そして朽ちていく事を知りながら、何もしなかった己への。
 
 「もういいんだよ、『王女様』にならなくていい。『リン』に戻っていいんだ。いこう、リン。皆がまってる」
 「レン、ごめんなさ、ごめん、ごめっ・・・ごめんなさ」
 「いいんだ、リン。いいんだ」
 
 今まで本当にありがとう。今まで、王女として俺を守ってくれてありがとう。今まで、姉として傍に居てくれてありがとう。俺は単なる召使としてでしか、役に立つ事は出来なかったから。だから、これが最初で最後の、俺に出来る最大の恩返し。
 
 「さぁ、レン。立ち上がりなさい。そして、行きなさい」
 
 今、俺は「王女」となり、君は「俺」になる。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

小説「悪ノ恋」

 私は「王女」である。
 この国の全ては私によって統括されるのである。私の意志以外で動く事など許されないのである。
 それはたった一人の「召使」とて同じなのである。
 
 
 
 なーんてね。

閲覧数:6,238

投稿日:2008/04/29 23:39:52

文字数:2,341文字

カテゴリ:その他

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  • ミミイ♪

    ミミイ♪

    ご意見・ご感想

    うう、、、そんな感動秘話が、、、あったわけじゃないみたいですがきっとそうですよッ

    青い人のことであんあことをしたのでなくてレンのことだっただなんて、、ッ

    なける!!あなたセンスありありですようッ!!

    2009/04/23 20:02:35

  • 修羅雪

    修羅雪

    ご意見・ご感想

    す、素敵過ぎます…。
    貴方は私の涙腺を壊すつもりですか!!?(逆ギレ

    これからも頑張ってください!!応援してます!!

    2008/05/15 18:33:48

  • ヒロ吉

    ヒロ吉

    ご意見・ご感想


    泣ける……。
    リンが緑の国を滅ぼした理由が、また特に……。
    二人とも健気すぎる…反則だ!!

    支援するしかない!!
    という訳で
    支援支援!!

    2008/04/30 00:16:14

  • 七瀬 瑞樹

    七瀬 瑞樹

    ご意見・ご感想

    涙が・・・止まらない・・・・。

    レン・・・が身代わりにッ!!

    うぅぅぅぅぅぅ・・・・、切ないです。

    支援支援!!

    これからも応援してます

    2008/04/29 16:57:03

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