どうしてこんな状況になっているんだろう?俺はすぐカラオケに戻ろうと思ったのに…。
「あ、俺肉餃子皮多目で。」
「ちゃんと中身も残さず食べなさい!いっつも皮ばっかり欲しがるんだから!」
「良いだろ、別に。」
「お兄さん、好きな物頼んで良いよ、ウチの鈴々が悪かったね~。」
「いや、あの、戻らないと…。」
「ほらほら、若い子が遠慮しないで。」
一先ず誤解は解けたが、岡持女鈴々は『お詫びをする』と強引に自宅である中華料理屋に引っ張り込んだ。ラリアットかました男はどうやらこの店の常連らしい。直ぐに戻ると言ったのに商魂なのか押しが強いのか気が付けばテーブルに座らされ料理の山が盛られていた。適当に食ったら戻るか…。
「あ…結構旨い。」
「でしょ?ウチのオススメの海老シュウマイ!それからこっちは~。」
「鈴々!まーた岡持凹ましただろ!ったく!」
「わひゃ?!」
随分賑やかな一家だな。レイはテンション高い方じゃないからこう言う雰囲気には正直慣れてないけど。多分店としては賑やかな方が良いんだろう。
「すみませ~ん、ミズチ生花です~配達のお花届けに来ました~。」
「お、聖螺ちゃんご苦労さん。」
「折角ですから私生けましょうか?最近練習してるんです。」
「良いのかい?じゃあ頼むよ。」
勧められるまま結構な量を食った気がする。流石にレイが心配だと思い、何度か連絡をしたが返事が無かった。怒らせたのかも知れない…後で謝らないとな…。
「出来ました~どうでしょう店長?」
「良いねぇ。」
「階段の所でしたよね?置いて来ます。」
「重いから気を付けてね。」
「平気です…よっと…と…。」
目の前をよたよたと花瓶が歩いた。正確には花瓶を持った花屋がだが、何とも危なっかしい。よく『明らかに転ぶだろ』と思われる奴が派手に転ぶ衝撃映像なんかがあるが、正にそれを髣髴とさせる光景だ。
「と…とと…ひゃっ?!」
「お…と、危ないよ。置くのここで良い?」
「お、お兄さん紳士だね~。」
「クロアの方が近いでしょ!手伝いなさいよ!」
「俺食ってる最中は席立たない主義なの。」
と言うかこの位置で転ばれたら確実に俺に水が掛かると思ったのが正直な所だった。痛い思いの上に水まで被ったら厄払いにでも行きたい気分に…。
「王子様…。」
「…は?」
耳を疑う聞き慣れない単語が聞こえた様な?
「素敵…。」
「…あ…あの~?」
「お名前教えて下さい!王子様!」
誰が王子様だよ?!何これドッキリ?!もういっそ走って逃げて良いですか?!
「あ?お兄さん王子様だったの?」
「違うと思うよ…。」
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