!!!Attention!!!
この度、ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、コラボ(二人)で書くことになりました。
自分が書く「青犬編」とつんばるさんの書く「紅猫編」に分かれております。
原作者様には全く関係なく、そして勝手な解釈もいいところで、捏造だろうと思われる部分もあると思います。
そういった解釈が苦手な方はブラウザバック推奨。
なお、カイメイ要素を含みますので、その点にもご注意ください。

大丈夫だよ!寧ろバッチ来い!の方はスクロールで本編へどうぞ。








【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#20】





 めいこと別れてからの二週間は、驚くほど呆気なく過ぎていった。それは、今まで過ごしたどの二週間よりも明らかに短い。それだけ充実していたということと、それだけ時間に追われて切羽詰っていたということが重なって・・・そう思ってしまうのだろう。
「準備はできたようですわね」
 やわらかい声がして振り返ると、るかさんが優しく微笑みながら歩いてきたところだった。るかさんに与えられたこの部屋は、とても広く、俺なんかが泊まっていいような場所にはとても思えなかったのだが、ここしかないと言われてしまうとここに泊まる以外になかった。そうじゃなくともるかさんに言われると断れる気はしないのだが。
 今までどこに行っていたのやら・・・しぐれがるかさんの後ろからさも当然と言わんばかりの足取りで俺の方へ駆け寄ってくる。そうして、俺の足元で一声元気よく鳴いた。
「しぐれも急かしていますのね」
「ええ・・・俺よりもしぐれの方が楽しみみたいで」
 な、と声をかけるとしぐれはその言葉を理解した様子で、るかさんに向かって嬉しそうに鳴く。俺とるかさんはそれを見た後で、顔を見合わせて笑うしかなかった。本当に、可愛いやつだ。
 例の女中さんは・・・今頃、めいこの元で式の準備を手伝っている頃だろうか。
「・・・お迎えの方が見えていますわ」
「はい」
 その声に、足元にお座りしたしぐれに目を向ければ、彼女は俺を見上げて目を細めた。明かりが眩しかったのかと思ったが、部屋の明かりがついていなかったことを思い出す。だとすれば、俺へ何かを伝えようとしていたのかもしれない・・・全くわからなかったが。
 しぐれに微笑みかけ、るかさんを真っ直ぐに見つめる。彼女はとても真っ直ぐな瞳の中に俺を映していた。
「ここでお別れになりますが・・・どうぞ、悔いのないように」
 まるで願うようなその言葉に、彼女の優しさを感じながら小さく頭を下げる。
 玄関へ並んで歩くのもこれで最後。今まで、本当にお世話になった。るかさんは俺を客人のように扱ってくれたから、仕事と言っても掃除をするだけで・・・向こうにいた時よりも随分楽をさせてもらった。それではいけないと思っていたが、ついつい甘えて過ごしてしまったように思う。
 よくしてくれた彼女の優しさに応えるためにも、俺は・・・。
 履物を履いて、玄関の扉を開けてくれたるかさんの横を通り過ぎ、一度だけ振り返る。るかさんは優しく微笑んでいた。まるで、俺を落ち着けるかのように。
「今まで、本当にお世話になりました・・・頑張ってきます」
 最後になるかもしれませんから、という言葉は飲み込み、気持ちを込めて頭を上げた。お世話になった二人の先輩(男性と女性)がるかさんに向かって頭を下げて、俺は背を向けて歩き出す。それ以降、もう振り返らなかった。俺の目には確かに、めいこと俺が二人で歩む道が映っていたから。
 決意して歩き出した俺の後姿は、るかさんの目にどう映っただろう。少しでも・・・逞しく映っていればいいのにと、俺は先輩から小道具を受け取りながらそんなことを思った。

 軽やかに流れるのは、外国の音楽。外国の楽器を演奏しながら歩く仲間たちの前を歩きながら、俺は少し挙動不審気味に辺りを見回していた。そういう役回りでもあるのだが、緊張しすぎて失敗してしまいそうだ。
「しっかりしぃ、アンタにかかっとんのやで」
 小声で玉乗りをしている先輩に言われ、小さく頷く。俺の役目は、できるだけ馬鹿みたいに緊張した様子で歩き回り、周りの笑いを誘うことだ。本当に緊張していては冷静に判断できなくなるから駄目だ。そう自分に言い聞かせて息をつき、気合を入れなおした。
 俄かに、人々が何事だと寄ってくる。
「ま、肩の力抜いたら大丈夫だよ」
 そう言って俺に声をかけるのは、小さな球を自在に操っている先輩だ。もう見物人が近付いてきているせいで返事はできなかったが、俺は見事な技を披露する二人の周りをぐるぐる動き回って子どもたちに手を振りまわる。まずは客寄せだ。
「おかあさん、みてみて!」
「まぁ、すごいわね」
 小さな子どもが母親の手を引いてやってくる。それほど人通りは多くなかったのだが、この変わった装いの大道芸というのは、この辺りでもさすがに珍しいらしい。音楽につられてか、色とりどりの外見につられてか、あっという間に俺たちを囲むように、人々が左右を埋め尽くした。俺たちの進行方向である場所だけは不自然なほど開けられているが。
 俺は先輩たちの周りをちょこまかと動きながら、子どもたちに向かって手を振る。それだけで歓声が上がるのは、とても嬉しかった。
 不意に前方から、見慣れた女性が歩いてくる。思わず、ごくりと唾を飲んだ。
 一際目を引く紅の女性。あの時るかさんが選んだ髪飾りを付けた彼女は、どこか上の空といった様子で歩いている。
 ――めいこ、だ。
 走り出す心音を落ち着けるために数回深呼吸をする。先輩に視線を送ると、目が合い、その色が変わって前方から来るめいこたちを捉えた。それを合図としたように、先輩が玉乗りをやめ、軽く跳躍してくるくると回転しながら見事着地する。拍手で迎えられた先輩は、お決まりの礼をしてその顔を上げた。
「さぁさ、皆様お立会い!」
 張りのある声が響くと、ざわめきが嘘のように静かになる。ゆったり近付いていためいこたちも何事かと足を止めた・・・と言うよりは、俺たちが道を塞いでいるせいで通れない、というのが正しいが。
 周りの人々も今から始まる芸をできるだけ前で見ようと半円を描くように移動していく。めいこたちもその半円に呑まれた形だ。
 これで・・・準備は整った。
「私どもは海の向こうから来た道化師、クラウン」
 そう彼女が言った時、隣で球を全て手におさめた先輩が彼女のわき腹辺りを指先でつつき、その耳元にこそこそと何か言った・・・いや、実際は言っていないのだが、そういう素振りをした。
 彼女は先輩がさも何かを言っているようにこくこくと数回頷いた後で、「はぁ? ウチの丁寧な喋り方が気持ち悪い? いつも通りやれ?」と、いかにも不満そうに先輩の顔を見る。彼女は辺りを見回した後で、「・・・ほな、悪いけどいつも通り喋らせてもらいます」と鈴の鳴るような声でからっと笑った。
「ウチはキャス、こいつはジャック。そっちの・・・さっきからお客さんの前や言うのにこけまくっとんのが新入りや。こいつはホンマ駄目駄目で、」と言う先輩の声を聞きながら、俺はタイミングを見計らって何もないところで滑って転んでみせる。
「って言っとる傍から何やっとんのや新入りぃぃ!」
 その言葉に、俺は一瞬にして立ち上がってびしっと敬礼した。すると、どっと周囲から笑いが漏れる・・・掴みは上々といったところだ。
「もうアンタはえぇからあっちの演奏隊んとこで休んどきぃ、邪魔するんやないで!」
 怒鳴られた俺は、もう一度敬礼をし直して演奏する時を待っている彼らの元へと走りながら、二度ほど派手に転んで見せた。それだけで笑い声が上がるのはとても気持ちが良い。特に、めいこの笑い声が俺の耳に心地よく届くことが。
 俺が演奏隊の間から一番後ろに回る頃には、先輩が「さてさて、邪魔もんもおらんようになったとこで、手品をお見せします」と声高らかに宣言する。その後に「ジャックが」と段取り通り先輩を見ると、またもや笑いが漏れた。「そんなこと言うてもウチはマジックなんかでけへんもーん」と笑いながら、「ほな、ここからはジャックに任せましょ」と先輩は後ろに下がる。
 俺は先輩二人にお客さんをそうして引き寄せてもらっている間に、お客さんの輪の最後尾をゆっくり気付かれないように移動していく。目指すはめいこのところだ。
「何々? 司会進行はウチの仕事やって? しゃあないなー・・・ま、本来クラウンは喋らんもんやからな・・・え? お前もクラウンだろ、って? うっさいわ! ウチは喋らな死んでしまうんや!!」
 どっと笑いが辺りを包むのを感じながら、そろそろと足を進めていく。わん、と一声犬の鳴く声が聞こえて先輩たちの様子を覗くと、毛色を染められて黒くなったしぐれが赤い球を一つ鼻に乗せて出てきたところだった。それだけで歓声が上がる。
「どうでもえぇ話は置いといて・・・最初にお見せするんは、ジャックの物体消失マジック。さぁ、とくとご覧あれ」
 すっと礼をした先輩の隣で、じゃっく先輩は両手をお客さんの方へと向け、表と裏を確認してもらった。そうしてから突然ぎゅっと握り締めた右手から布を取り出すと、その布を球の上からかける。何もなかったはずの手の中から布を取り出すだけで沸いているお客さんを見れば、俺が普通に歩いていてももしかしたら気付かれないのかもしれないとさえ思う。
 めいこの背後までようやく辿りついた俺は、周りの人間が俺に気付いてないのを確認しながらタイミングを計る。
 じゃっく先輩が3本の指を立てた。
「3」
 先輩の声がそれと同時に発されるのを聴きながら、俺も心の中で秒読みする。
 心臓がこのまま壊れてしまうかもしれないと思うほどに速い。
(・・・2)
 先輩の指が一本折れる。布がもったいぶるように揺らされていたのが、めいこの体と隣にいる誰かの隙間からぎりぎり見えた。
「1・・・!」
 期待を膨らませるように先輩の声が大きくなる。
 そして、じゃっく先輩の手が布を両手で掴んでばっと引き上げた。

(今だ・・・!!)

 俺は球が見事に消えたことへの拍手と歓声が上がる中、めいこの口を塞いで抱きかかえ、そそくさと逃げ出す。
 思ったよりもめいこの抵抗は少なかったが、その両の目が丸く見開かれているのはわかった。放心状態なのか、ほとんど成されるがままのめいこに心の中で感謝しつつ、足を速めていく。
 後ろから聞こえる拍手喝さいとしぐれの鳴き声は、まるで成功を祝福してくれているようだった。

 ――走る、走る、走る。
 細い路地を抜けようかというところで、口を塞いでいた手がものすごい勢いで弾かれ、思わず体勢を崩しかけたが、何とか持ちこたえた。
「っ・・・人攫いなんてやめた方が身のためよっ」
 気丈な声が漏れて、俺はそれでも彼女をしっかりと抱いたまま足を進める。声を出さないのが気に食わないのか、めいこは激昂した様子で暴れ始めた。
「ちょっとッ・・・聞いてんの! いい加減離しなさいってば、このバカ! っていうか、へんなとこ触ってんじゃないわよ、変態!」
 その時、バチンと音がして仮面が弾かれ、勢いで紐が切れる。そのまま体勢が崩れてめいこを巻き込むわけにはいかないと手を離した後、体勢を整えることもできずに転んでしまった。
 体をゆっくり起こしながら、カランカランと仮面が地面でぐるぐる回るのを一瞥し、そして一息つく。めいこはすっかり疑って逃げるつもりのようだ。
「・・・人攫いで悪かったね」
 苦笑しながら零すと、めいこは放心したように口を小さく開いたまま目を見開く。

「なん・・・で・・・?」

 めいこの驚いた声が、体に響き渡った。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#20】

めーちゃん誕生日おめでとー!微妙に時間オーバーしてるな(笑

かいとくんが頑張るターンです。
ほんっとうに、自分何もしてねぇな・・・!(まだ言ってる
そんなわけで、またもやつんばるさんが元ネタです。
でもエセ関西弁女と無口ピエロは勝手に付け足した人たち・・・で、その辺のやり取りも自分が担当でした。
そういえば・・・あれだ、この#20は自分とつんばるさんの2パターン書いてて、最終的にどっちにする?って話になった・・・はず・・・。
しかーし、やはりどちらも元ネタはつんばるさんなのでした。
つんばるさんの方のかいとの台詞を自分の方のかいとにどうしても言わせたかったのに全く言わないでやんの!
言うことちょっとぐらい聞いてくれよ!
かいとくんの好き勝手な行動に困らされてるのはどうやら自分だけのようです・・・。
問題児かいとくん・・・困ったちゃん・・・。

紅猫編では何だか状況を飲み込めない様子のめーちゃんが・・・ってこっち見ればわかるな・・・とりあえず、そんな紅猫編もご覧ください!
っていうか、二回目だけどめーちゃんおめでとうっ!
めでたいのに、すごく嬉しいのに、何も用意してなくてごめんなさい!orz

+++

「紅猫編」を書いているコラボ主犯
つんばるさんのページはこちら → http://piapro.jp/thmbal

閲覧数:347

投稿日:2009/11/05 00:07:17

文字数:4,843文字

カテゴリ:小説

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