ゴーストルール 6・7 ※2次創作

投稿日:2017/01/08 22:22:00 | 文字数:5,857文字 | 閲覧数:40 | カテゴリ:小説

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第六、七話

第五話の引きから、実はこういうことでした、という回です。

こういうどんでん返し的な流れって、書いてみると改めて「難しいな……」と思い知らされます。
五話までのなんでもなさそうな会話の中に、実はこれが伏線になってたんだ! というのをうまくいれたかったんですが、あまりうまくいっているような気がしませんね。
読んで下さった方が「なるほどね~」くらいに思ってくれればいいのですが……。

たぶんハートフルものというか、感動もの系でこういうネタってあるんでしょうけれど、全然知りません。むしろ、参考にしたのは映画「シックス・センス」とかゲーム「コールオブデューティ ブラックオプス」です。
我ながら「どうしてそこから持ってきやがった」と思ってしまうラインナップ(笑)

うまいどんでん返しのあるミステリ・サスペンスは結構好きなんですが、どうも耐性ができてしまったのか、小説を読んでいても「なんじゃそりゃ! そーゆーことだったのか!」とはならず、「は―なるほどねぇ。そんなめんどくさいことよく考えたなー」となってしまいます。

他者の想定を横からぶち抜いていく、そんな発想ができるようになりたいものです。

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TEXT
 

6
「はーい。あ……あなたが。お待ちしてました。……どうぞ」
「……失礼します」
 チャイムを鳴らしてしばらく待っていると、疲れきった様子の、けれどきっちりと化粧をした女性が出てきて、そう俺を中へと招き入れた。
 知らない家に入るのは、やっぱ緊張する。友だちん家って……言えるかどうかさえ微妙だし。
 その人に連れられ、廊下の向こうにある居間へとやってくる。
 壁際には小さな台が置いてあり、そこには小さな仏壇があった。
「……っ!」
 覚悟していたはずだった。
 だけど、それを視界にとらえただけで、金縛りにでもあったみたいに動けなくなってしまった。
 仏壇の手前には、写真がたくさん飾られている。
 ライブハウスで歌っている写真。
 カラオケかどこかで、四人で集まっている写真。
 楽屋でメイク中の写真。
 どれもが楽しそうに明るい笑顔を振りまいていて、その表情は俺の記憶とは似ても似つかない。
 けれど確かに、そこに写っていたのはみくだった。
 彼女は、彼女は――。
 俺と出会う数日前に、すでに命を落としていたのだ。

 俺が話していたのは、いったい誰だったんだろう。いや……なんだったんだろう。
 ゴースト?
 亡霊?
 マボロシ?
 ……なんだっていい。俺は確かに、みくに会った。
 ……会った、はずなんだ。
 みくは恐らく、自分がすでに死んでいることに気づいていた。
 だからこその“ゴーストルール”だった。
 ――ルール1、他人がいるところでは、僕をいないものとして振る舞うこと。僕に話しかけたりすることも、当然禁止とする――。
 ――ルール2、他人には、いかなる理由があっても僕の話題を持ち出さないこと。これは僕がその場にいる、いないを問わない。僕との会話もまた、他者に話してはならない――。
 ――ルール3、僕に触れようとするのも禁止。絶対ダメ――。
 恐らく、その場でとっさに考えたルールだったんだろう。
 じゃなきゃ、他にもルールがあったはずだ。視線についてや、みく自身の言葉を無視することについてなんかも。
 ――これは、僕のためのルールじゃないんだし――。
 ――そのうちわかるから――。
 あのルールは、みくのためのものじゃなかった。
 唯一みくのことが見えている、俺のためのルールだった。
 俺が、みくの見えていない周囲の人々に奇異に見られないためのルールだったのだ。
 そう考えてみれば、ルールについて話したくなかったのもうなずける。
 ゴーストルールについて話すということはつまり、みくは自分がすでに死んでいるのだと説明しなければならない。
 そんなの、できるわけない。
「あなたは……みくのバンド仲間だったのかしら?」
「まぁ……そんな、感じです」
 俺とみくの関係なんて、俺自身うまくわかっていやしない。彼女の母親の言葉に、曖昧な返答をするしかなかった。
「そうなんですね。バンドをやってる方々は……なんというか、独特な方が多いんでしょうか」
「? それは……」
「なんというか……。お葬式でもすごい服装で、ああいうのって、パンクとかいうんでしょうかね? それで、式の最中もくすくす笑ったり……。すみません。あなたのことをどうこうというわけではないんですが……」
「……いえ」
 こぶしを握りしめる。
 なんだそれ。
 みくのバンド仲間って、そんなやつらだったのかよ。
 その話を聞いて怒鳴り散らしたくもなったが、母親にそんなことをしても仕方がない。母親は被害者の方だ。
「すみません。……俺、彼女の最近の仲間は知らなくて。亡くなったのも、ついこの前知ったばかりで」
 母親はあわてて手を振る。
「いいのいいの! バンドに一生懸命だったんだけど、あの人たちを見てたら、みくは幸せだったのかなって思っちゃって。ごめんなさいね、こんな話……」
「あまりうまくいってなかった、とは聞きました。でも、そこまでするようなやつらだったなんて、俺も知らなくて」
「……そう。やっぱり、そうなのかしらね」
 みくがバンド仲間とうまくいってなかったこと、母親はなんとなくでも気づいていたみたいだ。
「どんな……最期、だったんですか?」
 おそるおそる、俺はそれを切り出す。
「なにがあったかも、よく……知らなかったんです」
 一番知りたいこと。
 だけど、知ってしまうのが恐ろしいこと。
 母親は息を飲むと俺をまっすぐに見て、それからやがて視線を落とした。
 この人にとっても、あまり触れられたい話題ではないのかもしれない。
「あ……思い出したくないなら、別に」
「いいのよ、大丈夫。あなたみたいな人には、ちゃんと話しておきたいから。……みくのためにも」
 そう言うものの、気が重そうにため息をつく。
「みくは……車に轢かれたの。運転手は、スマホでゲームをしてて、それに気をとられてみくに気づかなかった。ブレーキの跡は、みくを轢いて十五メートルも走ってからだったのよ……」
 母親は涙の浮かんだ目元をぬぐい、感情を抑えてみくの写真を眺める。
「あの子の部屋もまだ残してあるのよ。……よかったら、見ていって」
「それは……でも」
「……お願いよ。そのために残してあるんだもの」
「はぁ……」
 みくに悪い気がして、遠慮しようと思ったのだが、そこまで言われてしまっては断るに断れなかった。

 ――その部屋は、なんというか違和感が付きまとっていた。
 入ってすぐは「こんな部屋にいたんだな」と思った。けれど、なんていうか、みくについてほとんど知らないはずの俺にさえ感じる、みくの部屋とは思えないなにか。
 その理由は、すぐにわかってしまったけれど。



7
 その部屋には、色んなバンドのポスターが貼られていた。
 けっこう大きな棚は、CDや楽譜なんかで埋まっている。だが、そのラインナップはなんというかこう……バンドの系統に節操がない感じに見える。
「それじゃ、ゆっくりしていってね。私はリビングにいるから」
「あ……はい」
 みくの母親はそう言って出ていってしまう。
「……」
 俺はどうしたもんか、と椅子に座って天井を見上げた。
『……バレちゃったね』
「うおっ!」
 急に声が聞こえた。
 その声でわかる。みくだ。
 振り返ると、いつの間にかベッドに寝ころがったみくがそこにいる。
 ついさっきまで、誰もいなかったはずのそこに。
「お前……黙ってたんだな」
『そりゃ、言っても信じてくれないだろうし。僕だって……信じられないのに。死んだはずの僕が、こうやって存在してるなんてさ』
 みくは意外なほど簡単そうに言う。
 自分が、もう死んでる……なんて。
『なんかね。あの日からあんまり自分がわからなくなってきてるんだよね。なんか、自分を保てないって言うか、希薄になってるって言うか……油断してるとみーくんにもすぐ見えなくなるんじゃないかって感じ』
「それって――」
 みくははかなげに笑う。
『――うん。みーくんと話せるのも、できてあと一回くらいじゃないかな。なんとなく、なくなっちゃうのがわかる』
「……」
『もー。そんな顔しないでよ。悪かったってば。変なルール押しつけたりしてさ』
 ……いや、そうじゃなくて。
「なんで、そんななんだよ」
 みくは平然としている。
 そりゃ、はかない雰囲気をまとってはいるけれど。でも、自分が死んでるって自覚してるわりには、落ち着きすぎている気がする。
『そんな……って?』
「ショックじゃ……ねーのか?」
『うーん。ショックかどうかって言われたら、確かにまあショックではあるんだけど』
 みくは肩をすくめる。
『自分の行動の結果だから、しょうがないよね』
「え?」
 それは、どういうことだ?
 ……え?
「ちょっと……待てよ。ドライバーがスマホいじってたから、車に轢かれたんだろ? みくの行動の結果なんかじゃ……」
 みくは首を振る。横に。
『それは、順序が逆だよ』
「逆?」
『そう。逆。ドライバーがながら運転してたから僕が轢かれたんじゃない。ながら運転をしてるドライバーを見つけたから、僕は飛び出したんだ』
「それって、つまり――」
『――そう。僕は自殺したの』

 言葉が出なかった。
 それくらいの衝撃だったっていうのに、当の本人は相変わらずあっけらかんとしていて、それが余計に俺を困惑させる。
 どうして、なんてことないみたいな顔でそんなことが言えるんだ?
『これでもびっくりしたんだよ? あわてて、泣き叫んでさ……。でも、そんな僕に誰も見向きもしなくて、肩を叩こうとしてもすり抜けちゃう。誰にも気づかれないゴーストになったなんて……冗談、みたいな話だってさ』
「じゃあ、なんで俺には見えてんだよ」
『僕にもわかんないよ。霊感強いとか?』
「いや……知らねーけど」
『誰にも気づかれないって思ってたから、あのときも周りのことなんて気にせずに歌ってたんだ。みーくんが僕のこと見えてるってわかったときの衝撃! みーくんにはわかんないだろーなー』
「後悔とか……ねーのかよ」
 俺の声は、みくと比べたらかなりテンションが低かっただろう。
『んー。ないっていったら、そりゃ嘘になるよ』
「じゃ――」
『――でも、たとえやり直すチャンスがあっても、やり直したいとは思わないな。特に……母親の姿を見てたらね』
「え?」
『この部屋、おかしいって思わなかった?』
「それは……なんとなくだけど」
『でしょ。昔ギターかじってたならわかると思った』
 みくはにやっと笑って見せる。
「なんか、バンドやってたわりには、バンドならどこのCDでもポスターでもいーのかよって。この部屋、このバンドが好きだったんだなーっていうのが伝わってこねー感じ」
『おっ、いーとこに気づくね。でもそれじゃ半分』
「半分?」
『そ、半分。この部屋、綺麗すぎるでしょ』
 そう言われて、改めて部屋を見回す。
「掃除くらいは、母親がするだろ。別に変じゃない」
 確かに、綺麗に片付けられてる。でも、本人のいなくなった部屋を保つために、それくらいのことをするのが変なこととは思えない。
『……違う違う。綺麗すぎるのは、ポスターのことだよ』
「……ポスター?」
 確かに、バンドのポスターは綺麗に貼られている。だけど、それがそんなに変なこと――。
「あれ? 色あせてもないのか?」
 ようやく気づいた事実に、みくはうなずく。
 ポスターが色あせてないってことは、昔から長いこと貼ってあるポスターがないってことだ。
 気に入ったポスターなんて、そうそう貼り変えるわけがないのに。
『よく見てよ。貼ってあるポスター、最近のばっかりでしょ』
「え? ……それって、まさか――」
 好みのバンドさえわからないCDのラインナップ。
 最近のものだけをかき集めたみたいな、真新しいポスター類。
 それから導き出される解答は、恐ろしいものだった。
「……嘘だろ?」
『僕が生きてたとき、この家には……僕の部屋なんてなかったよ』
 みくはうつむいて、首を横に振る。
 みくの言葉が、俺の想像は嘘なんかじゃなくて、事実なんだと肯定していく。
『ひどいよね。僕が死んでから、あの人はやっと母親のふりをしだしたんだ。理不尽に娘を奪われた、悲劇のヒロイン気どって。みんなに同情してもらうために、わざわざこんな部屋までつくったんだから、たいしたもんだよ。……僕には、親らしいことなんて、なにもしてくれなかったのにね』
「……」
『ドライバーを訴えるらしいし、ニュースで取り上げられて一躍有名人。損害賠償でお金も手に入る。僕が死んで、あの人は内心喜んでるよ。いなくなってくれた上に、大金をせしめるチャンスまで手にいれたんだからね。……こんなことなら、他の方法にすればよかったな。スマホのながら運転は確かに悪いことかもしれないけど、数千万円もぼったくられなきゃいけないほどとは思わないし』
 どこか遠くを見ながら、みくはそう言う。
 そんなことまで考えてるやつが、なんでこんなことになってんだよ。
「なんで……なんで、んなことになるんだよ」
『……そう言ってくれるのは嬉しいけどさ。初めに言ったじゃん。僕の……自業自得なんだってさ』
「そんなの――」
 ――このクソみたいな親のせいだろ。
 俺の親も大概だと思ってたが、それより何倍もひどい。
『ね。スマホ持ってる?』
「は?」
 みくの話が急に飛ぶ。
『いいから。持ってたら出して。早く』
「なんだよ……」
 しょーがねーな、なんて思いながらしぶしぶスマホを取り出したと同時に、背後の扉が不意に開いた。
「……ッ!」
「あら。話し声がすると思ったら、電話してたのね」
『――ダメだよ。僕のことが見えてるのはみーくんだけだし、なに言ってもあの人には通じない。みーくんの話の証人は僕だけ。もう、死んだ人しかいないんだから』
 だけど、それじゃあ。
 ……そんなことを言おうとしたことも、みくはお見通しだったらしい。
『ゴーストルール、忘れちゃダメだよ』
 そう言うと、俺が視線をそらした一瞬のうちに、みくの姿は消えてしまう。
「……? どうかしたの?」
「……いえ、妙な電話だったので、混乱しただけで――」
 わざわざスマホを出させてまで作ってくれた、せっかくの言い訳だ。使わせてもらおう。
「すみません。ちょっと行かなきゃいけない用事ができたので、失礼します」
「え? お菓子の用意ができたんだけど……」
 一応、精いっぱい申し訳なさそうな顔を作っておく。
「すみません」
 あんたと一緒になにか食べるなんて、吐き気がする。
「急ぎの用事ならしょうがないわね。それじゃあ、また来てね。あの子も……喜ぶだろうから」
「……わかりました」
 二度と来ねぇよ。
 ここに来てもみくは喜ばない。俺は、誰よりもそれを知ってる。
 彼女自身の意志があればこそ、俺はあんたにゃ言わないけどな。

 そして、俺はさっさとみくの家から出た。
 みくの母親とは、これ以上一秒だって一緒にいたくなかった。
 出てすぐ、その辺の塀を思いきり殴り付けた。鈍い痛みに、拳がすりむけて血が出ていたけど、そんなのなんてことなかった。
 なにかしてやりたい。
 なのに、なんでこんなに無力なんだろう?

絵を描くことも
曲を作ることも
ずいぶん昔に諦めてしまった
だから、
絵を描ける人と
曲を作れる人が
すごくうらやましい

そう思いながら、
小説を書いたり
詩を書いたりしてあがいている

・・・・・・人に見せられるほどのものではないのが難点




○2次創作リスト

「ロミオとシンデレラ」全43話 原曲:doriko様 ジャンル:純愛もの 分量:約160ページ

※「on stage」全1話 原曲:なし ジャンル:初コンサートの初音ミク 分量:約20ページ弱

「ACUTE」全11話 原曲:黒うさ様 ジャンル:愛憎劇 分量:約50ページ

「Japanese Ninja No.1」全26話 原曲:デッドボールP様 ジャンル:変態どもが暴れ回るコメディ 分量:約250ページ

「ReAct」全14話 原曲:黒うさ様 ジャンル:愛憎劇(「ACUTE」の続編) 分量:約120ページ強

「神様なんていない僕らの」全3話 原曲:Polyphonic Branch様 ジャンル:青春を懐かしむ話(?) 分量:約30ページ

「茜コントラスト」全14話 原曲:doriko様 ジャンル:純愛もの 分量:約50ページ強

※「39」全1話 原曲:sasakure.UK×DECO*27様 ジャンル:「on stage」の焼き直し 分量:約20ページ弱

「焔姫」全48話 原曲:仕事してP様 ジャンル:都市国家のお姫様と吟遊詩人の物語 分量:約310ページ強

「Alone」全7話 原曲:doriko様 ジャンル:悲劇 分量:約40ページ強

※「焔姫2 プロット」全1話 原曲:仕事してP様? ジャンル:都市国家のその後(プロットのみ) 分量:約50ページ弱

「メモリエラ」全10話 原曲:yuukiss様 ジャンル:悲劇 分量:約100ページ

「Sol-2413」全6話(全3回) 原曲:ゆうゆ様 ジャンル:SF 分量:約30ページ

「ゴーストルール」全9話(全5回) 原曲:DECO*27様 ジャンル:不思議な女の子と出会うやさぐれ少年(?) 分量:約60ページ

「私とジュリエット」全13話 原曲:doriko様 ジャンル:「ロミオとシンデレラ」の続編 分量:90ページ弱

「水箱」全8話 原曲:Polyphonic Branch様 ジャンル:とある女性の過酷な日常 分量:約70ページ

「イチオシ独立戦争」全10話 原曲:ゆうゆ様 ジャンル:戦争もの(子ども兵) 分量:約60ページ

「アイマイ独立宣言」全19話 原曲:ゆうゆ様 ジャンル:「イチオシ独立戦争」の続編 分量:約160ページ強

「針降る都市のモノクロ少女」全17話(全20回) 原曲:TaKU.k様 ジャンル:復讐譚 分量:約170ページ


※「※」は番外になります。
※分量はそれぞれおまけを除いた上での文庫本換算です。作品によってかなり文章密度やおまけの分量にばらつきがあるため、ページ数のわりに長い・短い等があります。





ご用のある方は下記のアドレスまで。
普段PCメールは使ってないので、返事は遅くなるかもしれません。

around_thunder@hotmail.co.jp

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