タグ「オリジナル」のついた投稿作品一覧(9)
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ああ、これは夢だな、となんとなく分かった。
根拠はないが、不思議とそれは間違いないと思えた。妙に現実味がある夢だ、と冷静な頭で考える。
柔らかな芝を踏みしめる感触も、初夏の夜の暖かい空気も、周囲から聞こえる虫の合唱も、さわさわと風に揺れる草の音も、何もかも現実と変わらない。
手を顔の前に持っ...月に跳ねる
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【Aメロ】
海の上 空に浮かぶ島には 翼生えた人が暮らす
陸の人 海の人を見下ろし 風を捉え宙を泳ぐ
【Bメロ】
片翼の少年は 風を切る その感覚を知らない
ひとり地面を歩き 目を伏せて 寂しく肩を撫でた
【サビ】
心ない言葉は冷たく 彼を傷付けた
見下す瞳の先には 役立たずの翼
「そうさ 出来損な...比翼の鳥【歌詞】
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少女は門を見上げていました。
町の入り口の、大きくて重そうな鉄の門です。開かれた扉を、様々な格好の人たちが通りすぎていきます。
「本当に、ここまででいいのか?」
少女の隣りで、女性騎士が尋ねます。
「うん。送ってくれて、ありがとう」
少女は頷き、お礼を言って、町の入り口へ足を向...棺桶少女 エピローグ 終(つい)の街/丘の上の家へ
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あるとき、少女はゆらゆら揺れる焚き火を眺めていました。
街道を少し外れた森の中。棺桶は相変わらず、膝を抱えて座る少女の隣にあります。
少女は一人ではありませんでした。少女の向かいには、木に繋がれた鹿毛の馬と愛馬を撫でる女性騎士がいます。彼女は盗賊を追い払った騎士団の一人でした。
「あま...棺桶少女6 森の中で/女性騎士
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あるとき、少女は街道の真ん中にいました。
「やぁやぁ、お嬢さん。一人でどこへ行くのかな?」
「知ってるかい? ここいらは今とっても物騒なんだぜ。恐ろしい盗賊が出るからね」
「おお、怖ぇ。だけどお嬢さんは運がいい。なにせ百戦錬磨の傭兵が目の前にいるんだから」
「どうだい? 護衛に俺たちを雇...棺桶少女5 街道の真ん中で/傭兵と盗賊
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あるとき、少女は木工屋の工房の中にいました。
棺桶に付いていた木の車輪が、荒れ道のせいで壊れてしまったのです。
雑多な工房の隅っこで、手作りの椅子にちょこんと座り、少女は木工屋の仕事を眺めていました。椅子の隣には、車輪を外された普通の棺桶がありました。
「棺桶用の車輪だァ?」
少女...棺桶少女4 工房の中で/木工屋の男
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あるとき、少女はサーカスの一団とともにいました。
団員用テントの隅っこで、椅子代わりの丸太に腰掛け、少女はジャガイモの皮を剥いています。
少女の前には、山盛りの皮付きジャガイモ、綺麗に皮の剥かれたジャガイモ、重なったジャガイモの皮、そして棺桶が置いてありました。
小さな手のひらで小振りのナイ...棺桶少女3 テントの中で/ナイフ投げの娘
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あるとき、少女は乗合馬車の中にいました。
心優しい老夫婦が、一人きりで道を歩く少女を見かねて、声をかけてくれたのでした。
馬車の幌の中、膝を抱えて座る少女の横には、当然のように棺桶が置かれています。
「ねぇあなた? お母さんとお父さんは一緒じゃないの?」
老婦人は少女に優しく尋ねま...棺桶少女2 馬車の中で/老夫婦
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がらがらと車輪を転がし、少女は歩きます。
小さな体の倍はありそうな棺桶を後ろに連れて、木の車輪をがたがたと鳴らしながら、少女は歩きます。
くりっとした大きな銀色の瞳を真っ直ぐ前に向け、歩きにくそうなドレスの裾を引きずって、少女は歩きます。
毛先の跳ねた長い金色の髪を揺らし、手にはしっか...棺桶少女 プロローグ 旅の途で/露店の店主から