箱入り猫さん

箱入り猫さん

zzzzzzzz1234

(プロフィールはありません)

ピアプロバッジ

フォロー(1)

  • konpasu

フォロワー(3)

  • 柚葉
  • 中野
  • Yasu(keidaiP)

作品に付けられたタグ

イチオシ作品

The world of the chain 1-5

 慌ただしく黒い車に乗せられ、彼女が連れてこられたのは、貸し切りの札が下がったバーだった。  扉が開くたびに静かに来訪者を迎えるベル、ゆっくりと店の中の空気をかき回すファン、客らしい男が一人だけぽつんと座っているだけでマスターがいないカウンターに、その後ろにところ狭しと並べられた酒の瓶。そして、店の最奥にある、他の床よりもちょっとだけ高く作られたステージ。  初めてみるものばかりで、何処へ目を向ければよいのか分からず、彼女はきょろきょろとあたりを見回し続ける。だが、全てをその目に焼き付けることはかなわない。  彼女のマスターは彼女を引っ張ってカウンターに近づくと、そこに座っている男になにかを見せ、言った。 「例の会に来た。話はついている」 と言った。  すると、相手は彼を一瞥し、眉をひそめる。 「おいあんた、俺がこのちんけな店の主にでも見えるのかい?」 「いや、カボチャ頭の飲んだくれにしか見えねえ」 「じゃあとっとと帰んな、ここはガキの来るところじゃねえぜ」 「そうもいかねえ、今日はカナリアの品評会の日だからな」  カウンターの男は、また胡散臭そうな目で彼女のマスターを見た。そして、ぼそっと、 「ずいぶん場違いな奴が来たもんだ」 と呟いて、立ちあがり、店の隅まで歩いて行き、おもむろに床を蹴った。  ゴッ、と、妙に籠ったような音が響く。すると、下の方からガッガッ、と叩く音がした。しばらく打撃音のやり取りが交わされる。 やがてアンドロイドの耳は、床下で響いた、錠前の外れるような重々しい金属音を聞きとった。同時に古びた床が突然持ち上がった。中から出てきた腕が、床板を持ち上げたのである。 「入れ」  どすの利いた男の声だった。  怒り狂ったマスターの声よりも恐ろしいその声は、彼女を無意味に緊張させる。だが、彼女は自分の隣にいるマスターも、自分と同じように全身をこわばらせていることに気付いた。 ――マスターにも、怖いものってあったんだ。  自分に対して怒鳴るか無関心でいるかしかなかったマスターの別の側面を知り、彼女はなんだかとても不思議な気持ちになった。  床下の通路を抜けると、さらに広い空間につながっていた。  誰も、あんな古びたバーの下にこんな場所があるとは思わないだろう。 上の店よりも室内を明るく照らすシャンデリア、部屋全体に敷かれた足が沈みそうな絨毯、きらびやかな装飾が施された調度品の数々、それらの豪華な品々を何の躊躇も無く使う身なりの良い人々、何より目を引く、豪華な舞台。  ちょっとしたコンサートだって開けそうなその場所には、彼女が液晶画面の中でしか見たことのなかった黒いグランドピアノと、彼女がマスターの家で使っていたものがおもちゃに見えそうなほど立派なマイクが置いてあった。 「すごい人だな……」  うんざりしたようにマスターが呟く。どうやら、人混みが好きではないらしい。客の大半は年齢層の幅広い美人の女性ばかりだというのに。  と、彼女はある事に気がついた。 「あの、マスター?」 「なんだ」 「あの、もしかしてここにいるのって、私と同じ――」 「同じじゃねえ」  彼女が言い終わるより早く、マスターが言う。 「確かに、ここにいる奴の半分はアンドロイドだ。けどな、お前と同じ奴なんて一体だってあるものか」  一応周りに他人がいることを考えているのだろう。若干声量をおさえた怒りの声。 「お前より上なんてない、俺が作った者と同等の物なんてない。分かったか!?」 「……」  一瞬、返事をするか迷う。  しかし、彼女がそれを決める前に、部屋の照明がふっと落ちた。

彼女、お店入り
投稿日時 : 2011/06/27 01:39

最近の投稿作品 (12)

まだ誰からも使われていません

何もありません

何もありません

▲TOP