泉の精霊たちは、薄れた記憶の中で、
自分たちが切り捨てられた者であることを忘れていない。
多数の為に犠牲になった一人。

ゆえに彼らは人を嫌う。
人の侵入を嫌う。
泉の森へ入ることを許されるのはただ一人。

自分たちと同じく、犠牲として選ばれた者。

そうして彼らは新たな犠牲者が命を落とし、
自分たちと同化した時にだけ、思い出すのだ。

守りたかったもの。
犠牲になることを承知したのは何故だったのか。

そうして彼らは涙を流す。
不幸な自分のためではなく、遠い昔に守りたかった誰かの為に。
その涙が泉から溢れ、周囲の土地を潤すのだ。

民はただ一人に全てを背負わせた罪を恐れ、
『生贄』の名は口にしない。
そうして口にも記録にものぼらぬ存在は、やがて忘れ去られていく。

みなの為に命を投げ出したのに。
その存在すら抹消される惨い仕打ちに、
彼らは涙の理由を忘れ、憎悪ばかりを強くする。


人を嫌う彼らが人のために泣くことはなく。
涙は泉にだけ漂う。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

忘れられた者の輪廻-裏話

この曲を作る用に組み立てたプロットです。
ついでなのでおまけで公開ww

閲覧数:402

投稿日:2008/11/28 18:45:47

文字数:428文字

カテゴリ:その他

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