『飛んだ鳩サブレ』


鳩サブレは見上げてた　頭上には遥かなる空
食べるために作られて　売り場並んでいるが
鳩に生まれたからには　いつの日か遥かなる空
食べられてしまう前に　一度でいい　羽ばたきたい


　サブレ　鳩の形をしたサブレ　青くて限りない
　空へ　もがいても描かれた　羽が思うように広がらない


鳩サブレは考えた　空は意外に遠いから
もっと高いところから　助走をつけて飛べば
うまく風に乗れたなら　きっと羽も広がるはず
近所で一番高い　煙突の上　踏み出した


　サブレ　まっさかさま下に落ちて　止まらない飛べない
　まるで　こぼれ落ちる涙だ　羽は閉じたままで広がらない


空をただ　飛ぶことが　そんなにダメですか
偽りの　羽ならば　飛んではダメですか
食べ物と　いうだけで　夢を見ることなく
食べられて　しまわなきゃ　ダメですか


堕ちていく


　サブレ　鳩の形をしたサブレ　青くて限りない
　空へ　叶わない夢を見た　だけど夢を追って悔いは無い
　サブレ　まっさかさま下に落ちて　止まらない飛べない　　　
　そして　そのまま砕け散った　羽はやっとその時広がった