大福さん

小説を時々書いているルカ好きです。よろしくお願いします。

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イチオシ作品

ugly grace

1人の男性が、今日も仕事を終えて家路につく。 その帰りの電車、つり革につかまりながら、丸い月が白く輝く真っ暗な外を、彼はボーっと眺めている。座っていたら眠ってしまいそうなくらいに疲れていた。 「あっ……」 そんなさなか、電車がある駅で止まると、ドアの向こうに女性が電車を待っていた。彼女は、白い肌に腰が隠れるほどのピンク色の長い髪、暗い赤のドレス姿に、首にはネックレスをしている。ドアが開き、車内に入ると、彼女は彼のそばを通り過ぎて少し離れたところで同じようにつり革につかまった。 彼は疲れも忘れて、彼女に釘付けになっていた。仕事の後、この電車で彼女を見ることが、彼にとって毎日の楽しみなのである。 (相変わらずお綺麗だなぁ……) と思いながらも、痴漢と間違われない程度に眺めるに留めた。 「!!」 一方の彼女は、しかし普段とはなぜか少し様子が違っていた。窓から見える外の景色を見た途端、呼吸が少しずつ荒れ始める。そのことに、彼はまだ気づかない。 揺れる電車の中、男性はすぐそこに憧れの女性がいることで、いつもながら少し緊張していた。 チラッと、彼女のほうを見る。……胸を抑えてうつむいている。彼は少し不思議に思った。心なしか、苦しそうに見える。思い切って声をかけてみようか?そう考えるか考えないかのうちに、彼女はその場にしゃがみこんでしまった。 「あのっ、大丈夫ですか?」 驚いた彼には、もはや先ほどまでの迷いはなく、近づいてそう声をかけていた。周りの人々も彼女を見始める。 「……っ」 「駅員さんを呼んできま──」 「ダメ!」 突然彼女が声を荒げた。辺りがざわつく。 「ご……ごめんなさい。大丈夫よ、大丈夫だから……関わらないで」 「!」 その言葉に傷ついた彼は、何も言わずに彼女のそばを離れた。彼女はゆっくりと立ち上がり、またつり革につかまる。まだわずかに息を切らしている。 やがて、電車は男性の降りる駅に着いた。 彼が電車から降りると、なんと女性も降りてきたではないか。彼女は早足で男性のそばを通り過ぎ、改札を出た。普段、彼女はここでは降りないのだが……やはり、様子が気になる。 急いで改札を出て、気づかれないように彼女を追う。職場のある中心部に比べ、この辺りは人も少なく静かだ。 彼女の履いている靴の音がコツコツと響くおかげで、彼は見失わずに彼女を追いかけられた。しかし、突然彼女が背後を気にするので、彼はとっさに物陰に隠れた。ヒヤヒヤしつつも、なんとか感づかれないまま、ある場所にたどり着いた。そこは……彼女のドレス姿には似合わない、土手であった。それまでとは違い、女性はゆっくりと歩く。靴の音は土に消された。 「見たことない所。焦って駅を間違えちゃったみたいだけど……ここならきっと、人目につかない……っ」 隠れる場所の少ない広い土手、男性は、やっと見つけたトイレの裏に隠れた。女性は……なんと背の高い草むらに入っていってしまった。男性はそれを見て、隠れることも忘れて草むらに近づく。 「やはりね。さっきから誰かが付いてきてると思ったのよ……」 「!!」 草むらからそう聞こえて、彼はひどく驚いた。 「あ、うっ……あの、」 「見た?」 「え……」 「見たかって聞いてるの」 男性には、彼女の言っている意味が理解できなかった。 「え、えと……どういう──」 「ふふ……なるほど。まだ見てないなら、いいの。早くここから消えて……さあ」 「……さっき、体調悪そうだったけど、」 「ああ。そうね……今日は、とびっきり悪い日よ。こんなにひどいこと、そうそうないわ」 「なら、こんな所にいないで、帰ったほうがいいですよ……?」 「あなたもしかして、さっき電車の……」 「あっ、はい!」 「そう……」 かみ合わないながらも、憧れの女性と話すことができた。彼は少し嬉しい反面、まだ状況が理解できずにいた。 「あの……」 「もういいでしょう?早く私から逃げて」 「あなたは、一体ここで何を?」 彼女は、夜空を見上げた。 「……きれいな月ね」 「は、はいっ」 「本っ当に……憎たらしいくらい、きれいだわ。こっちがどれだけ迷惑してるかも知らな──入ってこないで!」 「ひ……!」 彼が草むらに足を入れようとしたのに気づき、彼女はそう吠えた。 「早く消えて」 「……」 三度そう言われた彼は、ついに折れた。その場を去る。 男性のいなくなった、土手の伸び放題の草むらの中。彼女は……1人になった。 「そう、それでいい。怖がらせては申し訳ないからね。貴方は優しいから……」 ポツリつぶやいた女性は、やっと草むらから出た。しかし、その姿は異形のものとなっていた。 ピンク色の長い髪と赤い服は先ほどのまま、全身は爬虫類のような黒い鱗に覆われ、目は金色に、かろうじて瞳孔が縦に細く開いている。口からは牙がはみ出し、両手の爪は鋭く伸び、服のスカートから見える足は、蛇のそれにすっかり変わっていた。 女性は、持っていた手鏡で自分の顔を見る。 「いつもなら、顔まで生えないのに……おかしいわね。まあ、醜いことは同じだけど」 彼女は、ここで野宿するつもりのようだ。夜が明けるまで、元に戻れないのである。 「ここでは草が肌に刺さるし、他にゆっくりできる所はないかしら……」 そう思いながら移動を始め、少し明るい場所に出た時だった。 「あっ……」 女性はすぐに声がする方を見た。 「……!!」 同時に、目を見開いた。 「っ!」 「貴方……ま、まだいたの!?」 土手の高い場所に、先ほどの男性の姿があった。彼は女性の豹変ぶりに言葉を失う。 彼女はとっさにそばにあった橋の陰に隠れた。 「見てはいけないと、あれほど……!」 「いや、僕はその……」 彼は、彼女のいる橋の陰に近づく── 「来ないで!!貴方さっきから一体何?どういうつもり?からかってるの!?」 「す、すいません……」 そう言いながらも、女性のいる所へ近づくことをやめない男性。 「近付くなって言──」 「これ、渡しにきたんですっ!」 そう言って、隠れたままの女性の手の届くところに、緊張に震える手で小さな紙袋を置いた。彼はこれを買って、彼女に渡しにわざわざ戻ってきたのだった。 「……」 「薬。さっきつらそうだったから。効けばいいんですが……」 効く訳ないでしょう、こんな姿にならずに済む薬があるなら、とっくに飲んでいるわよ。……心ではそう思っても、口が動かない。男性の想像を超える優しさに、女性はあ然としていた。 「僕はこれで……」 「待って」 呼び止められてドキッとする男性。 「どうして……赤の他人にそこまでできるの?」 「いつも電車で見ていたんで。そ、その……楽しみ、というか」 と言っている男性自身の顔がほころんだ。 「……さぞや幻滅したでしょうね」 「え?」 「貴方、今見たでしょう?私は……蛇の化け物なのよ。月が明るい夜は発作が出る。一体どれほどの人が、この姿を見て……恐れ逃げたか」 「そ、そうですか。でも、噛みついたり……しないですよね?」 「する訳ないじゃない。見た目だけ、暴れたりしないわよ。……そう疑われてもきたわ、もう何度も」 男性は、女性のいる橋の陰を覗いた。彼女は小さく縮こまっていた。その姿を見ると、彼は思わぬ言葉を口走る。 「……お綺麗ですね」 「嘘よ、こんな体!一体何度自分を憎んだと思う?」 「そんなことないです」 女性が顔を上げて男性を見た。彼は顔が火照るのを感じた。 「……本当に優しいのね、貴方」 女性が男性に少しずつ近づいていく。男性は……棒のように立っていることしかできなかった。恐ろしい姿の彼女に、それでも魅せられていた。 そんな彼にさらに近づき、彼女は鱗で覆われた冷たい両手を、するりと彼の後ろに回す。 「!あっ、あ、あのっ……」 「少しだけ、こうしていたいの……」 男性は心臓が高鳴るのを感じた。 「ドキドキしている。……本当に、怖くない?」 「い、いや、その……きっ、緊張、と、いうか」 彼は、もはやまともな口が利けなくなっていた。 やがて、女性は男性から離れた。 「もういいわ。さあ、早くお帰り」 「あなたは、これから……ど、どうするのですか?」 彼は、まだ今起きたことが信じられずにいた。 「私?私は……夜明けまでは動けないわ。人目につくとまずいから」 「そ、そうですか」 女性はうつむいて男性に背を向けた。 「あ、あの……」 「なぁに?まだ何か?」 彼女は力のない低いトーンで言った。 「僕も、その……一緒にいて、いいですか?」 彼のその言葉に、女性は背を向けたまま顔を上げた。 「な……何言っているか、自分でわかってるの?」 「はいっ」 「ふふ……面白い方」 「じょ、冗談なんかじゃないですよ!どうせ、帰っても1人だし……」 「…………」 まだ男性に背を向けたままの女性は、下を向き、かすかに肩を震わせている。男性は首を傾げた。 「私なんかに……そこまでしなくていいわよ」 すっかり泣き声に変わっている。 「もっと、お話したいな、なんて……その、迷惑ですか?」 わずかに沈黙。 「……ありがとう」 女性が、今度は振り返ってすぐに男性に抱きついた。 「!」 「初めて……こんなに、抵抗なく接してくれる人は」 鱗に覆われた顔が、涙に濡れる。 「は、はい……っ」 嬉しいやら、恥ずかしいやら、男性は頭の中がごちゃごちゃになってしまった。 その後、男性と女性は、橋の下で語り合いながら、一夜を明かした。 「見て。やっと元に戻ってきた」 彼女の腕の鱗が少しずつ消えてきた。空が紫色に明け始めた頃のことである。 「よかったですね」 「……私、ずっと求めていたのよ。貴方のような、どんな私も受け入れてくれる方を。だけど、そんな人に会えるのなんて、夢のまた夢だと思っていたのに……ふふ、まだ実感が湧かないわ」 女性は、長い髪をいじりながらそう言った。 さすがに徹夜だったため、男性は仕事の疲労もあって、外ではあるが眠ってしまいそうになっていた。座ったまま、一瞬いびきをかいて、すぐにハッと目を覚ます。 「大丈夫?今からでも、お家に帰ったら?」 「い、いいえ!……大丈夫……で……」 まで言ったところで、男性はとうとう完全に眠ってしまった……。 「…………」 女性は、男性の寝顔を覗き込む。 「お仕事で疲れているのに、私なんかに付き合ってくれたのだものね。どうもありがとう。……愛してるわ」 いつの間にか人間の姿にすっかり戻った彼女は、そうささやくと、うつむいている男性の唇に、自分の唇をそっと合わせた── それから数分後。 「……あっ!すいません、今寝てました?」 「ええ、ぐっすり。私はもう大丈夫よ、元に戻れたから、帰ります」 男性はまだ眠いのか、黙り込んでしまった。女性はその場を離れようとした。 「あっ……あの」 「ん?」 「す……好き、です」 「私もよ。うふふ」 男性は夜中ずっと言えなかったこの言葉をやっと絞り出したというのに、女性の方は見事な即答ぶりである。男性はあっけにとられた。 「僕……まだ、夢見てるのかな?」 「さあね、どうかしら?」 昇りきった太陽が、土手に2人の影を作っている。

DIVAfモジュール、アムールからインスピレーションを得て書いてみました。念のため、キャラクターのイメージ崩壊注意です。
投稿日時 : 2013/09/27 17:41

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