A
暗く眠る壌(つち) 光は差さぬ
銘(めい)無き墓へ 絡む蔦(つた)と葉

B
花は枯れ落ち、散り
水も涸れ 罅(ひび)入る(いる)
悼(いた)む調べは無く
誰も来ない 来ない来ない来ない

C
唄う柔(やわ)き声に 
 包む絹の母巣(ぼそう)
丸む手あし 委(ゆだ)ねた日 
 母の手はいづこ

吼えよ虎のごとく 
 奈落(ならく)に落ちようと
撓う身に
  映す荊縞(しじま)
 誰の手も要らぬから

(間奏)

A
捕らうるは羽根 
この背に在らず
禽(とり)より千切る 
雑(ま)じる 鈍(にび)色

B
森に晴れない霧 
乳の色して呼ぶ
捧ぐ祈りも無く
母は消えた 消えた消えた消えた

C
撓(しな)る黒き鞭の
 音は高く響く     
痩せ背(そびら)を
 行(ゆ)く先は冥府(めいふ)

跳ねよ馬のごとく 
 蹄(ひづめ)剥げ落ちても
音骨(おとぼね)を
  砕き轢(ひ)いた 
 あの重み知るがいい

D
焔(ほむら)は純潔(じゅんけつ)の 乙女のすがた
舞いては狂おしく 獣かき抱(いだ)いた

躍るは 魍魎(もうりょう)の 儚き影か
十字の 紐解(ひもと)いて あの火と くべるか?

扉は開かれて 何をも待たぬ
艶(つや)めく切っ先が 刻(とき)と喉 さした

悲鳴が漏れ出(い)でた 喉笛(のどぶえ)からは
悦(よろこ)び祝うよな 甘き血が 滴(したた)る

越えがたき 壁で
見(まみ)えぬ 温(ぬく)み

C
耽(ふけ)る淡き肌に
 沁みた赤みは退(ひ)き
うらぶれの実 
  刈(か)り取られ 
 青白く浮かぶ

走れ豹のごとく 
 牙は折れ散れども
死肉をも  咥え喰(は)んだ 
 この渇き 知るがいい

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【企画参加テキスト】墓守の一夜

sgflさん作曲作品への応募用テキストです。改訂版です。

解説:母を馬車に轢き殺された乳飲み子の亡霊(私生児で乳飲み子なので餓死した)
 墓守の姿を借りて母が眠る墓よりも深く、暗い冥府へと轢き殺した者(もしかしたら父?)を引きずりこもうとする。
 母の仇を打つためなら、仇もろとも自ら地獄へ堕ちても構わない、という感情。
 昔の感覚だと赤子でも死んでしまえば大人と同じ感情を持つそうです。

 PVをつけるとしたらこの傾向、といいたいですが動画サイトは悉く削除にあっていて、「さわり」のみ↓で見られます。(タイトルの参考にした、自分が4年ほど前に一度だけDVDかVHSで観た初期アニメーションです。アレクサンドル・アレクセイエフ「禿山の一夜」)
http://www.geneon-ent.co.jp/anime/NAA/contents/hp0012/index00120000.html

 書き終わってから捜してみたのですが、書いた内容は多分これに近いです↓
(一瞬だけ見るとやわらかいけれど、よくみたら背景が怖い絵です。
 赤子の顔をした天子が頭から羽根を生やしているあたりがすごく怖いと・・・)
エル・グレコ「聖母子と聖マルティーナ、聖アグネス」
http://www.salvastyle.org/menu_mannierism/view.cgi?file=elgreco_ines00&picture=%90%B9%95%EA%8Eq%82%C6%90%B9%83%7D%83%8B%83e%83B%81%5B%83i%81A%90%B9%83A%83O%83l%83X&person=%83G%83%8B%81E%83O%83%8C%83R&back=elgreco_ines

閲覧数:251

投稿日:2010/01/09 12:58:19

文字数:720文字

カテゴリ:その他

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