suitcase/スーツケース

朝のホーム
ひとりきり
まだ、心が揺れてる

旅立ちとかさ
大げさだけど
情けないよね
足がすくんでる

置いてきぼりみたいなこの街
…おかしいね、
全部恋しいんだ

それでも行くんだ
もう決めたから

わざと小さめにした
スーツケースに
入りきらないほど
思い出詰め込んで
「あたし、少しは強くなれるかな」
退屈で愛しいまちにさよならを

知らない人たちが話す知らない話題
倍速で流れてく
日々に置いてかれないように

あの日々
懐かしむ暇もなくて
がむしゃらに、生き抜くんだ

あんなに必死で詰め込んだ
思い出も
次から次へ
上書きされてくよ
「あたし、変わってしまったかな」
だけど
立ち止まって振り向いたりはしないよ

あれから時は
瞬く間に過ぎて
桜の季節がまたやってくる

そっちはもう咲いていますか
みんな元気にしてますか

「会いに行くよ。」

来るときに持ってきた
スーツケースは
部屋の隅で
埃を被っていた
「私、少しは強くなれたかな」
退屈で愛しいまちにただいまを

私のふるさとにただいまを