uzohの父の終戦
①
ちょっと予定を変更して
私の父はあまり戦争当時の話をしなかったのですが、それでもいくつか話してくれた事があるので思い出したときに貼り付けることにします。
はっきり覚えていないけれど、父の所属は(少年)逓信隊だったそうです。
今で言う通信部隊ですかね。
実は、この逓信隊はかなりの死亡率だったようです。 任務が任務と言う事もありますが、
父の話だと
その日、上官(部隊長クラスなのかな?)が全員に手榴弾を配って「いよいよとなったら、これで潔く自害するように」とお達しがあったようです。 ところが父の直接の上官は「お前らはまだ若いんだからわざわざ死に急ぐことはない。 下手に手榴弾を持っていると米兵に見つかったときに敵意があるとみなされて、撃たれるかも知れないからそれはここで捨てていけ」と父の直属の上官が投降を勧めてくれたそうです。 結局、他の分隊(もしかしたら班かな?)はかなりの死者が出ましたが、父の所属したグループは運よく生還できた人が多かったようです。
おかげで私もこうして日記が書けるわけですね。
その上官の方に感謝です。
---
ちなみに、このときに、みんなの銃や弾薬などを木箱に入れて埋めたらしいのですが
さすがに腐って中身はさびているでしょうね。
本人は「敗走しながら埋めたのでどこに埋めたのかなんて覚えちゃ居ない」そうです。
②
話としては終戦よりも少し前
戦うというよりは、ジャングルに隠れて、出会ったら戦闘みたいなころの話だと思います。
すでに補給もなく、食料の無くなっていた父の隊は、機械油の缶をあけその辺の葉っぱを油で揚げて食べていたそうです。
話からすると冷えているときは固まっていたらしいのですが、みんな食べていた所からすると鯨油とか植物油から加工したものかな? 石油製品ではなさそうです。
葉っぱも、みんなそんなに知識が有るわけではありませんから、知っている葉っぱは良いとして、知らない葉っぱしかないときは「ちぎってみて白い汁が出たらダメ、そうでなければOK」って言う基準で食べていたらしく、時々激しい下痢に襲われていたそうです。(^_^;)
生きていただけOK!
③
まあ、結局、父も投降する事にして捕虜収容所に行ったらしいです。
すると、ありがちな話ですが、父の直属でない上官が捕まっていたようで、
この人、常日頃から「敵に生きて捕まるくらいなら潔く自害しろ」といっていた人だったらしいです。
父はそれ以上のことは何も言いませんでしたが、口調からすると「仕方ないよね」という意識だったろうと思います。
で、捕虜収容所では、(戦争中ではないので)それなりに米軍関係者ともつながりが出来ます。
学校が再開されると父も復学する訳ですが、物資不足の中にありながら、コネのおかげで常にタバコを欠かさない父に、タバコを注意するフリをしながらねだる教師が後を絶たなかったとか....(^_^;)
④
今回のお話は、少し重いかもしれません。
日本軍が敗走を始めたころ、沖縄の人達も一緒に逃げる事になります。
父の部隊も住民と共に逃げる事になるわけですが、
ある時、森の中から道を横断して反対側の森に抜ける必要がありました。
当然道を横断するという事は米軍に発見されやすい事ですが、そこを横断しなければ逃げ続けることはできません。 そこで、危険の多い先頭としんがりを軍人がする事になり、父たちが斥候をしました。 案の定、反対側の森には侵入者発見用のトラップ(鳴子の様なもの)があり、その配置を確認した後に住民にどう動けば良いのかを説明しながら慎重にそのトラップを超えさせていました。
ところが、声を出して伝える事が出来ないため、後方の住民は、前の住民が安全にわたった事で安心したのか、駆け出してしまったのです。 「はやく渡らなければ発見されてしまう」と言う恐怖に追い立てられていたのは想像に難くありません。
そのため、トラップが反応し、米軍の機銃掃射がはじまったそうです。
父たちと一緒に先にわたったグループは逃げるのに必死で、後続の人達がどれだけ逃げる事が出来たかは解らなかったそうです。
今回で父の終戦前後のお話は一応終わりです。
何か思い出したら書くかもしれませんが取り敢えず一区切り。
⑤ おまけ
季節外れの怪談2 (あんまり怖くない)
父が生前見せてくれた写真のお話。
それは父が小学生の頃の集合写真です。 雰囲気からして4年生から6年生くらいかな?
後ろにはそそり立つ絶壁、といっても写真の上の方には木が生えているのが写っています。
戦前の写真らしく、全員が軍服の様な学生服と学生帽です。
父がどこに居たのかは忘れてしまいましたが、右はじの子がサングラスをして映画のマドロスのように椅子に片足をかけてポーズを決めているのが「おマセだなあ」とは思いましたが妙にサマになっているのがほほえましいというかなんというか。
で、この写真、崖の中腹よりもやや上の方に、手にブラウスの様な上掛けをかかえた上品そうな女性が写っているのです。丁度子供たちのお母さんくらいの年齢に見えるのですが....
見た瞬間に気づくほど鮮やかに、はっきりと、でも、腰のあたりから下が無い....
ビビって指さす私に対して父は「いや、これは多分光の関係でこう見えるだけで幽霊だとは思っていないよ」と気にしていない様子。でも私にはそうは見えない。
「それよりもこいつを見てみろよ」と指さしたのは先ほどのサングラスの少年でした。
「この写真を撮った時にはこいつはもう亡くなってしまって居なかったんだ」とぽつりと言ったのでした。
コメント1
関連動画0
ご意見・ご感想
だが断る。
ご意見・ご感想
拙いイラストのフォローをしていただき、ありがとうございます。
貴重な体験談を色々と想像しながら読ませてもらいました。
創作活動の再開に期待してます。
2012/06/11 04:04:20