-Moon drop-
<プロローグ>
病室を後にした少年はふらつきながら公園へと足を運び
2人で夜遅くまで語り合ったベンチに腰掛け、ただ茫然としていた。
降り出した雨にぬれ、我に返るとあたりはもうすっかり暗くなっていた。
見上げた空には月が見えている。単なる通り雨だろう・・・
そう思い立ち上がった瞬間、少年は彼女の言葉を思い出す

◆回想 シーン1
「私を助けてくれた時のこと、覚えてる?正直な話、あの時私のことどう思った?」
「どうって・・・」
踏切越しに電車の光に照らされた少女の儚げな顔が少年の脳裏に浮かぶ
「かぐや姫・・・みたい、かな?」
「なにソレ、うけるんだけど~」
「わ、わらうんじゃねーよ!」
それは冗談ではなく少年の本心だった。平凡な日常の中、とつじょ自分の前に現れた美少女。光に照らされ神々しさすら感じられた少女は彼にとってまさにかぐや姫のような存在であった。
おどけてみせた少女は夜空を見上げ目を細める。
「ねえ、知ってる?月夜に降る天気雨は月に帰ったかぐや姫の涙なんだって。なんだかロマンチックじゃない?」
「はぁ・・・」
「もう!そこは“そうだね~”とか、気のきいた台詞言ってよね!」

◆回想 シーン2
土砂降りの雨の中、少年が駆けつけるとそこには
傘もささず1人公園に立ち尽くす少女がいた
「かぐや姫・・・」
少年に気づいた少女はうつむいたままつぶやく
「え?」
「あの時・・・あなたは私のこと、かぐや姫みたいって言ってくれたよね。でもね・・・」
顔を上げた少女の瞳は涙で溢れ返っている
「例えどんなに好きな人が、離れたくない人がいても・・・」
「・・・」

「かぐや姫は・・・絶対に月に帰らなくちゃいけないんだよ・・・」


こらえていたはずの涙が少年の頬を伝う
そして少年はそのままその場に崩れ落ち少女の名を呼んだ・・・

◆◆そして物語は1年前にさかのぼる◆◆

夜、バイト帰りの少年は踏切越しに虚ろな表情でたたずむ少女に気がつく。
電車のライトに照らされたその容姿に見惚れた少年はすぐ我に返る。
彼女が踏切の内側へと侵入していたからだ。
慌てて救出した時には既に少女は気を失っており、気が動転したはそのまま彼女をすぐ近くの自宅へと連れていき、看病する。

翌朝、目を覚ました少女は何も聞かずに自分をここに泊めてほしいと頼む。それから数日間、少年が学校へ通っている間、少女は辺りを散策したり、手料理を作って帰りを待っていたり。
怪しいとは思いつつも突然の美少女との二人暮らしを少年は悪くないと感じ始めていた。

少年の変化を不思議に思った友人が問い詰めると、少年は事情を話し、照れくさそうに少女と撮ったプリクラを見せる。
芸能情報に疎い少年と違い、友人はすぐにそれが人気上昇中のモデルであることに気づく。
既に少女に失踪疑惑が浮上していることを調べ上げた友人は彼女にそのことを伝え、自分の住む世界に戻るようにと諭す。

数日後、日常に戻った少年はこれまでのように、仲のいい友人達とキャンパスの中庭で昼食をとっていた。
すると教員がやってきて少年に急遽転入してくることになった学生の世話役をしてほしいと言う。
少年が教員の後ろから歩いてくるその転入生に目をやると、そこには数日前まで一緒に暮らしていた彼女の姿があるのであった…。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Moon drop<プロローグ>

私が現在制作中の楽曲
Moon drop(仮タイトル)
http://piapro.jp/t/UFTq
のベースとなる物語で、少年の回想という形で
二人の少年少女の出会いから別れまでを描いたものです。

ある夜、列車にひかれそうになった少女を助けた少年は
気を失った彼女を自宅で看病する。(←テンパってつれて帰ってしまった)
朝、自分のしてしまったことの重大さに気付いた少年は警察を呼ばれるんじゃないかと恐怖するが
「私をしばらくここに泊めてください!」
目覚めた少女が発した言葉は意外なものだった。

その頃、都会では人気急上昇中のモデルが失踪したとの噂がとびかっていたが
芸能情報に疎い少年が、彼女こそそのモデルであることに気づくはずもなかった…

こんな感じでしばし二人の奇妙な共同生活が始まります。
シーン2は彼女が芸能人であることや、失踪の理由(余命1年ということ)を少年が知った直後という設定です

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投稿日:2011/09/19 19:40:52

文字数:1,389文字

カテゴリ:その他

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