壊れたピアノが　音色を軋ませる
モノクロフィルムに　ふいに色が戻る

仕方なくてさよならしたのね
今も時を止めたままなのね
笑っている　いつもの私は
私じゃない

月のように追いかけてくるの
影のように離れられないの
全部　全部　捨てたはずなのに
忘れてたのに

言えなかった言葉が
蟲のようにざわめくの
伝わると思ってた
淋しさに震える水の色

指切りできない約束　重ねてた
水彩みたいに　滲んでまざりあう

優しいから壊しきれなくて
絡まる糸　余計に痛くて
ずるいふたり　終わりを探して
押し込めた

星のように隠れていたのね
花のようにいつかまた咲くの？
全部　全部　捨てたはずなのに
あきらめたのに

言わなかった言葉が
今になって光りだす
知ってると思ってた
いとしさを映した淡い空

言えなかったすべてに
耳をすまし　立ち止まる
こぼしても大丈夫
ささやいた静かな水の色



※参考までに、ひらがなバージョンも書いておきます。

こわれたピアノが　ねいろをきしませる
モノクロフィルムに　ふいにいろがもどる

しかたなくて　さよならしたのね
いまもときを　とめたままなのね
わらっている　いつものわたしは
わたしじゃない

つきのように　おいかけてくるの
かげのように　はなれられないの
ぜんぶ　ぜんぶ　すてたはずなのに
わすれてたのに

いえなかったことが
むしのようにざわめくの
つたわるとおもってた
さみしさにふるえるみずのいろ

ゆびきりできないやくそく　かさねてた
すいさいみたいに　にじんでまざりあう

やさしいからこわしきれなくて
からまるいと　よけいにいたくて
ずるいふたり　おわりをさがして
おしこめた

ほしのようにかくれていたのね
はなのようにいつかまたさくの？
ぜんぶ　ぜんぶ　すてたはずなのに
あきらめたのに

いわなかったことばが
いまになってひかりだす
しってるとおもってた
いとしさをうつしたあわいそら

いえなかったすべてに
みみをすまし　たちどまる
こぼしてもだいじょうぶ
ささやいたしずかなみずのいろ