「僕と居たら、君も駄目な人になっちゃうから」
「大丈夫、私はずっと駄目な人だったから」

「優しい人になりたいな」何の為に？
汚れた目に美しさを与える為に？
とどのつまり自分の為に？

そうだ僕は僕の為に優しい人になりたいんだ
掠れてもう出ない声に 応えたいんだ

涙枯れて眠った後 次の朝にまた涙を流して
また疲れて 叫んだ
「その声」に

辿り着いたのは君が眩しく輝く部屋の中
その部屋は宇宙と同じ色をしてた
僕は何も言えなくなる その大きさにただ呑まれていく
「優しい人になりたい」のは僕だけじゃなかった

君が見ている世界は綺麗ですか？
それとも汚れ過ぎていて嫌いですか？
君には声は届かないようだ
君には何も見えてないようだ
「ねぇ、もしかして君は…」

見たくも聴きたくもない世界で感覚を閉じ込めた君
心に鍵をかける前に 痛みを感じたくないからと
僕は何も出来なくなる 君のカタチがわからなくなる
言葉と音も僕の姿も　届かない所に君はいた

何も出来ない無力感と何かしたいという願望が
今焦燥となって僕を刺す
ねぇ 聞こえないの　届いてよ
僕は一つの光に気づいた でも動き出すのが怖かった
優しい人でありたかった 傷つけることが怖かった
でも今逃げたなら僕はきっと 少しずつ壊れてゆくのだろう
見えなくても聞こえなくてもと僕は君の手を握った

君は「ありがとう」と涙を零す その涙が部屋の宇宙に波をたてはじめてゆく
その形はとても綺麗で それだけで僕は救われた
君から僕への「ありがとう」が響く様に僕から「ありがとう」
泣きながら二人で笑いあった
初めてみた君の笑顔は とても素敵だった

「僕と居たら 君も駄目な人になっちゃうから」と手を取ることを怖がった僕に
「大丈夫 私はずっと駄目な人だったから」と言ってくれた
気づけば僕も君に救われていた