旅立つ君を殺したいわ
どうせ居なくなるのなら
心の旅支度は済んだ？
それが君の死に化粧



二つ返事の「愛してる」で
また命拾いしたわね
笑顔の下で握ってる
ナイフを背中に隠した

だけど今日が命日なの
帰らないと気付いてた
古びたコートの内側
裏切り身籠るなんて

想い出からはぐれた
ブーツを履く君の後ろ
無防備なその背中へと
ナイフを振り翳した

旅立つ君を殺したいわ
どうせ居なくなるのなら
さよなら愛の残像達
死に顔も私のもの



宛先の無い「ありがとう」を
君が仄かに呟いた
少し驚いただけなの
落としたナイフも涙も


自分が抱いてる嘘に気付いたわ
見て欲しかっただけ
走馬灯が吹き込む中
ゆっくりドアが閉まる

旅立つ君さえ愛おしい
どうせ居なくなるくせに
君にとって最後の私は
知らずに見送った人


君を呼び止めたら
罪の血が飛び散って
純情が錆び付く気がして
誰も知らないこの殺人
幕引きは君に任せるの

どうして　どうして
此処にはいられないの
殺して　殺して
どうせ居なくなるなら



(読み)
たびだつきみを　ころしたいわ
どうせいなくなるのなら
こころのたびじたくはすんだ
それがきみのしにげしょう


ふたつへんじの　あいしてるで
またいのちびろいしたわね
えがおのしたでにぎってる
ナイフをせなかにかくした

だけどきょうが　めいにちなの
かえらないときづいてた
ふるびたコートのうちがわ
うらぎりみごもるなんて

おもいでから　はぐれた
ブーツをはくきみのうしろ
むぼうびなそのせなかへと
ナイフをふりかざした

たびだつきみを　ころしたいわ
どうせいなくなるのなら
さよなら　あいのざんぞうたち
しにがおも　わたしのもの


あてさきのない　ありがとうを
きみがほのかに　つぶやいた
すこしおどろいただけなの
おとしたナイフもなみだも


じぶんがだいてる　うそにきづいたわ
みてほしかっただけ
そうまとうが　ふきこむなか
ゆっくりドアがしまる

たびだつきみさえ　いとおしい
どうせいなくなるくせに
きみにとって　さいごのわたしは
しらずにみおくったひと


きみをよびとめたら
つみのちが　とびちって
じゅんじょうが　さびつくきがして
だれもしらない　このさつじん
まくひきは　きみにまかせるの

どうして　どうして
ここには　いられないの
ころして　ころして
どうせいなくなるなら