「トリノソラハネ」

あとどれくらい泣けばいいのだろう
飛びたつための翼はなくて
雨にぬれたままそこにいるだけ
ツギハギに色づいた雨道

まぶたの奥の物語を
ただ愛しては裏切られて
噛り付ついた毒入り果実
それでも逝けぬあなたの側

繰り返す度溺れる群青に
「ごめんね」すら云えないまま
雨とともに弾かれた冷たい手を
掴めなかった

あとどれくらい待てばいいのだろう
あなたがいなくなった世界で
放つ言葉はすべて錆びついた
モノクロで色のないこの部屋

記憶の中の笑い顔を
まだ愛してて消せなくて
間違った恋だったのかなと
空っぽの隣に呟いた

繰り返し泣きなくなる群青に
あなたの瞬きを重ねて
優しさも悲しみも毒入り果実も
はんぶんこしよう

繰り返し見上げたこの群青は
二人占めしていた空を
抱き締めて感情を混ぜあい乍ら
彼方へ駆けた

＊＊＊＊

あとどれくらいなけばいいのだろう
とびたつためのつばさはなくて
あめにぬれたままそこにいるだけ
つぎはぎにいろづくあまみち

まぶたのおくのものがたりを
ただあいしてはうらぎられて
かじりついたどくいりかじつ
それでもいけぬあなたのそば

くりかえすたびおぼれるあおに
「ごめんね」すらいえないまま
あめとともにはじかれたつめたいてを
つかめなかった

あとどれくらいまてばいいのだろう
あなたがいなくなったせかいで
はなつことばはすべてさびついた
ものくろでいろのないこのへや

きおくのなかのわらいがおを
まだあいしててけせなくて
まちがったこいだったのかなと
からっぽのとなりにつぶやいた

くりかえしなきたくなるあおに
あなたのまたたきをかさねて
やさしさもかなしみもどくいりかじつも
はんぶんこしよう

くりかえしみあげたこのあおは
ふたりじめしていたそらを
だきしめてかんじょうをまぜあいながら
かなたへかけた