一人雨の中佇んでいる彼女の瞳が睨む
その矛先はどこに向くのか分からずに
ただ雷音(らいおん)が通り過ぎるのを待つばかり
大事にそっと手にしていたはずの恋を失くしてしまって
その気持ちが突然いなくなってしまったことを否定して
胸に空虚な穴を空けることになった現況を嘆いている最中
こんな結末認めないわ、と孤空に叫んでみたのに意味はなし
未だに信じられない出来事を頭の中で繰り返しているのに焦燥
世界に拒絶されたような気がしては心臓が痛みを繰り返す刹那
何度も繰り返されるのはあの人が別れを告げる瞬間のシーンで
慟哭の彼女が光を帯びていって痺れる脳、身体を揺り動かしてる
雨が彼女の髪も服も心さえも濡らしていく
頬を濡らす水滴が彼女の涙なのか分からず
ただ雷音がその身を宥めるのを知るばかり
全てを憎んでしまえば簡単なのにそれすらも許されず
全てを恨んでしまおうかと思ったのにそれすら出来ず
これ以上辛いのは嫌だと泣いてみたのにまた思い出す
「だって愛していたのよ」と彼女は呟いてまた涙する
そんなに好きなら何故手放したのと言われなくても分かってる
それでもあの人が望むならと想ってしまったのだから仕方ない
最初で最後で最期の恋だと思っていたのにそれは叶わないなんて
恐怖すらも覚えたこの愛は誰にも知らずに散っていくのですか
咆哮しましょうか。好きだったのだと意味を込めて
叫喚しましょうか。愛していたのだと哀を込めて
ねえ、涙雨。どうかこの雨を止まないでおくれ
せめてこの涙が止まるまでは降り続けておくれ
一人雨の中佇んでいる彼女の瞳が世界を睨むけど
矛先が彼女自身だと知っていたのに、それでも
ただ雷音が通り過ぎるのを待つばかりの鎮雨歌(レクイエム)
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