第一校:
        『キレイな幸せ』

脚本     うあじゃ

登場人物   マァ:男。谷口政章。27歳。喫茶店の店長。両親はすでになく、
          マンションに1人暮らし。
      マユミ:女。栗原真弓。27歳。谷口の元同僚。精神的に病み、
           仕事を辞め、今は両親と同居している。 
    マユミの母:


シーン1
  
       マンションの風呂場。ドアは開いており、男がパンツ一丁で洗面器の
       中で何かを洗っている。

カメラ    風呂場入り口付近から全体のカット。手元のアップ。泡まみれで何を
       洗っているか判らない。洗面器側から男の顔アップ。男、無表情に洗       い続けている。

マユミ    「マァ。。。マァ。。。」

       男、声の方向に首を向ける。

マァ     「あぁ?」

カメラ    風呂場入り口から全景。左手から真弓の声。

マユミ    「とれた?」

       男、洗面器から洗っていたものを取り出し、顔を近づけて念入りに
       見て、

マァ     「うん。。。うん。キレイになったよ。」

       男、蛇口をひねり、泡をすすぎ出す。

カメラ    男の肩越しから手元へ寄ってく。男、やさしく手で包むように絞り、
       洗っていたものを広げる。白い女物のパンツが現れる。パタパタと
       水気を落とし、ぴんとパンツを広げる。その白い部分にタイトル
       『キレイな幸せ』
       F.O

シーン2

カメラ    喫茶店店内。客にコーヒーを運ぶマユミ。カウンター内で洗い物を
       しているマァ。カウンターに戻るなり手を洗うマユミ。   

マァモノ   (初めて彼女にあったのは、前に勤めていた喫茶店だった。やけに
       キレイ好きな女の子だなあというくらいの印象しかない。その時は
       ボクもマユミも、それぞれに付き合ってた人がいたし、特に気が
       合ったとか、仲が良かったわけでもなくて。。。。。)

       F.O

シーン3

カメラ    喫茶店の入り口から、マァがゴミを持って出てくる。大きなゴミ箱の
       横にうずくまっているマユミ。かなり酔っぱらっているらしい
       マユミを、無理やり立たせて店内へ入っていく二人。

マァモノ   (それから4年くらいたった冬。。ボクは店先に酔いつぶれて
       うずくまってたマユミに再会した。)
       (最初は彼女のことを思い出せなかったけど、、、彼女を店に運んだ
       後、、最初の一言で、ボクは彼女を思い出した。)

カメラ    マユミのアップ。手を突き出すようにしたまま。

マユミ    「あの。。」
マァ     「ん?」
マユミ    「。。。手。。洗いたい。」

マァモノ  (差し出した彼女の手は、白くカサついていたけど、、、
       キレイだった。。。)
       F.O

シーン4   マァのマンション。ベッドで眠っているマユミ。まくらには、
       サランラップが巻かれている。布団から覗いている手には、薄い
       手袋。それぞれを緩くパンしながら移していく。

マァモノ   (いつの間にか、マユミはボクの部屋に居着いてしまった。
       なんでか、親が挨拶に来たりして、細々した身の回りのものを
       運んできたり。。。。)

カメラ    マユミの化粧箱やボストンバック、服がはみ出しているスーツ
       ケース。病院の名前が入ったくすり袋を数カット。
       (回想シーン)その荷物を車から下ろすマユミの母親。ぺこぺこ
       おじぎをして、車に戻っていく。走り去る車。

マァモノ   (運んできたお母さんは、何度も何度も頭を下げて、やがて車に
       乗り込んでいった。その背中は、とても疲れているようだった。
       でも。。。。同じくらい、ほっとしたようにも感じた。。。)

カメラ    玄関側からベッドをゆるくパン。マァが玄関から出ていこうとする。
       靴を履くマァの足元のアップ。

マユミ    「マァ?」
マァ     「あ、起こしちゃったか?」

カメラ    玄関からベッドを中距離。ベッドが窓辺に有り、上半身をおこした
       マユミが逆光シルエットになっている。表情は見えない。

マァ     「朝飯買いに行ってくるよ。なんかほしいもんある?」

カメラ    マユミの頭が横に揺れる。シルエットに少しズーム。肩が震えて
       いる。

マァ     「どした? また変な夢でも見た?」

マユミ    「うん。。。。」

カメラ    マァが履き掛けの靴を脱いでいくアップからベッド方向の中距離に
       カット。マァが手前からカットインし、ベッドのマユミに近づいて
       いく。ふたりのアップ。

マァ     「今日はどんなん?」

マユミ    「髪がね、、、首にまとわりついてほどけなくなるの。。。。
       でね。。。もがいてたら、体中から汗が一杯出てくるの。」

マァ     「そっかぁ。。。そらたまらんなあ。。。お風呂入っとくか? 
       その間にご飯の用意しとくわ。。。。1人でいけるか?」

マユミ    「うん。。。。がんばる。。。」

マァ     「ほな。行ってくるわ。無理せんとな。」

       マユミ、こくんとうなずく。

シーン5

カメラ    買い物に向かうマァの足元。町並み、コンビニでの買い物風景。

マァモノ   (マユミは俗に言う潔癖症とはちょっと違っていて、汚いものが
       ダメとか、汚れが気になるとか、そんなそぶりはあまりみせない。)

カメラ    土手沿いの道。マァが座り込んでタバコを吸い出す。川に浮かぶ
       ゴミ、空。吐き出す煙が流れていく。

マァモノ   (ただ、異様に自分が汚く感じるらしい。。。。自分の持ったもの、
       着ていた服や触った場所、食べたもの、髪も汗もすべてが恐怖の
       対象だ。)

マァ     「もうおわったかな。。。。」

カメラ    タバコを消し、もう一本に火をつけて土手から去っていくマァの
       後ろ姿。

シーン6

カメラ    玄関から部屋全景。ベッドにマユミの姿は無い。シャワーの音が
       風呂場から聞こえている。風呂場に近づいていくマァ。

マァ     「おーい。まだ入ってるんかいな。のぼせるでー。」

カメラ    風呂場のドア。動く影もなく、シンとしている。

マァ     「・・・・・おーい・・・・・あけるぞー!」

カメラ    ドアを開けると、湯船でぐったりしているマユミ。ゆっくり顔を
       上げてニッコリ笑うマユミのアップ。

マユミ    「マァ・・・・・」

マァ     「またかいな。。。ほんまに。。。。」

マユミ    聞こえないくらい小さな声「だって。。。。」

カメラ    湯船の外を、キレイに洗い出すマァ。

マァ   「ほら。キレイになったやろ? はよ出てきぃな。」

カメラ   タオルを持ってきてうずくまったマユミの体をふいてやり、風呂場から
      マユミをかかえていくマァ。

マァナレ   (マユミを風呂に入れるといつもこんな感じだ。先に体を洗った後
      湯船に浸かってしまうと、今まで体を洗っていた場所が気持ち悪くて
      湯船から出られなくなってしまうわけで。。。)

マユミ    「マァ」

マァ     「なんや? 水飲むか?」

マユミ    マァの耳元で「えっち」

マァ     「・・・・・落とすぞ・・・」

カメラ    クスクス笑いながらベッドへ向かっていく二人のアップから
       後ろ姿へディゾルブ。

マァ     「昼飯になっちゃなあ。」

       F.O

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

『キレイな幸せ』前半

『キレイな幸せ』前半

いつか映像化したいとおもってた作品です。

閲覧数:97

投稿日:2013/02/13 02:17:36

文字数:3,548文字

カテゴリ:その他

クリップボードにコピーしました