ひとつ、渡し船
暮れ方の中 するりと抜ける

何を思うのか
今宵乗せゆく 咎人と影二つ

夜に浮かぶ月を 仰ぎ見上げる ああ
晴れやかな瞳に 映るは何か

ゆらり、ゆらり、 頼りなく漂って
揺らいだ曳舟のように
掠れ声も 静寂(しじま)に溶けてしまう
波風立たぬまま



笑みは咎人の眼に
静まり返る夜の中

問うて 答えるには
「乙子(おとご)を殺め 唯一人 舟に乗った」

苦しみに満ちた 病の果てに ああ
死することを望む
哀れな同胞(はらから)

どうか、どうか 死なせてくれと願う
その命に終(つい)を告げる
まるでそれは 八苦を割くが如く
幸(さいわい)告げるような

 
夜が 夜が 次第に更けてゆけば
疑いさえも重くなり
「されど されど 咎は咎なればとて
 それこそ真なり」


何が 何が 正しいかも分からず
尋ねるものもない闇夜
舟は、舟は、おぼろ夜に滑りゆく
答えなどないまま

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

高瀬舟(歌詞)

森鴎外の同名小説が元となっています。
なるべく雰囲気を残そうとしてはみたものの……。

閲覧数:349

投稿日:2016/05/07 03:11:35

文字数:401文字

カテゴリ:歌詞

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