A1
さあ
にっこり別嬪
ばッさり口裂け
お転婆少女の
白い足の首
金の鈴

そう
ちりりちりり
鳴りて響いて
手を取り手を引き
駆ける其の先は
妖しの祭り

たったの一人
さ迷いこんだ
人の子余所の子
食べてしまおうか
其の前に
鬼灯の灯に
星が落ちたら
蠢き始める
狂気に満ちた道
浮かれて進め

B1
しゃくりしゃくり
林檎飴に
牙を立てる竜の子
涙塗れ　亡霊小町の
恨み節も囃子音頭さ
賭け金跳ね上げて
囃しゃんせ

S1
人の居ぬ間に洗濯をと
我等集い往かん
如何なる画よりも艶やかに
此の姿を晒せ
鬼火と花火の鬼花火
喰い散らかせ　果て迄も
共倒れるなら脚を引き
尚愉快に
倒れて見せようと
月を仰ぐ


A2
そろそろ喰って
呑んで良いだろ
怯えて駆け出す
初心な少年を
追いかけて
否(や)
まだだまだだ
耐えろ忍べと
獣と天狗が
眼と眼睨み合い
我先に往く

ふわふわ尾っぽを
揺らし甘える
子狸女狐
すぐに嵌められて
噛まされて
棄てられ靴も
穴の帽子も
無闇に命が宿り
拙くも
心を探す

B2
寄越せ寄越せ
杏飴を
取り合うも又遊戯
此の杯
空にはするまいと
回し飲んで
注(つ)げや足せやと
囃すは風来の大鴉

S2
一夜(ひとよ)また一夜経る内に
増える募る影は
巻き込み呑み込み一絡げ
美しく歪めや
惚れたと腫れたの品定め
理(ことわり)では計れぬと
凍てついた笑みを唇に
乗せた女
空より舞い落ちる
雪の姫


C1
さあ　朝焼けに
此の身を悟られ
捕まる其の前に

もう一つ　暴れようか
老若男女と区別は問わず
楡の樹の幹の裏に
隠れた人の子
丸見えよ

B3
曼珠沙華　咲かせ散らせ
空しき夢の如く
回り灯籠　風も無く揺らめき
示す刹那　只向かうのみ
愉しき混沌は
深くなる

S3
人の居ぬ間に洗濯をと
我等集い往かん
如何なる画よりも艶やかに
此の姿を晒せ
鬼火と花火の鬼花火
逃れようと走る子よ
共に歩こうぞ　此の手取り
窮屈な体など脱ぎ捨てて
参らぬか



【譜割り・()は一音分】

A1
(さあ)
(にっ)こり(べっ)ぴん
(ばっ)さりくちさけ
おてんば(しょ)う(じょ)の
しろいあしのくび
きんのすず

(そう)
ちりりちりり
なりてひびいて
てをとりてをひき
かけるそのさきは
あやしのまつり

た
ったのひとり
さまよいこんだ
ひとのこよそのこ
たべてしまおうか
そのまえに
ほ
おずきのひに
ほしがおちたら
うごめきはじめる
(きょ)うきに
みちたみち
うかれて
すすめ

B1
(しゃ)くり(しゃ)くり
りんごあめに
きばをたてる
(りゅ)うのこ
なみだまみれ
ぼうれいこまちの
うらみぶしも
はやしおんどさ
かけがね
はねあげて
はや(しゃ)んせ

S1
ひとのいぬまに
せんたくをと
われらつどいゆかん
いかなるえよりも
あでやかに
このすがたをさらせ
おにびとはなびの
おにはなび
くいちらかせ
はてまでも
ともだおれるなら
あしをひき
なおゆかいに
たおれてみせようと
つきをあぐ


A2
そ
ろそろくって
のんでいいだろ
おびえてかけだす
うぶな(しょ)うねんを
おいかけて
や
まだだまだだ
たえろしのべと
けものとてんぐが
めとめにらみあい
われさきにゆく

ふ
わふわ(おっ)ぽを
ゆらしあまえる
こだぬきめぎつね
すぐにはめられて
かまされて
す
てられぐつも
あなのぼうしも
むやみにいのちが
やどり
つたなくも
こころをさがす

B2
よこせよこせ
あんずあめを
とりあうもまた
ゆうぎ
このさかずき
からにはするまいと
まわしのんで
つげやたせやと
はやすはふうらいの
おおがらす

S2
ひとよまたひとよ
へるうちに
ふえるつのるかげは
まきこみのみこみ
ひとからげ
うつくしくゆがめや
ほれたとはれたの
しなさだめ
ことわりでは
はかれぬと
いてついたえみを
くちびるに
のせたおんな
そらよりまいおちる
ゆきのひめ


C1
(さあ)
あさやけに
このみをさとられ
つかまるそのまえに

もうひとつ
あばれようか
ろう(にゃ)くなん(にょ)と
くべつはとわず
にれのきの
みきのうらに
かくれたひとのこ
まるみえよ

B3
まん(じゅ)(しゃ)げ
さかせちらせ
むなしきゆめのごとく
まわりどう(ろう)
かぜもなくゆらめき
しめすせつな
ただむかうのみ
たのしきこんとんは
ふかくなる

S3
ひとのいぬまに
せんたくをと
われらつどいゆかん
いかなるえよりも
あでやかに
このすがたをさらせ
おにびとはなびの
おにはなび
のがれようと
はしるこよ
ともにあるこうぞ
このてとり
(きゅ)うくつなか
らだなどぬぎすてて
まいらぬか
.